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PeopleX、シードラウンド16.1億円の資金調達の裏側

この度、PeopleX社はシードラウンドにて16.1億円の資金調達を完了致しました。

創業間もなく、当然ながら売上0円段階である当社に対し、これから創る未来を信頼して頂いた事に心からの感謝と、重責を社会価値に転換していきたいと思います。

資金調達の裏側

創業以前から、前職時代にお世話になったベンチャーキャピタル様にご挨拶も兼ねて、御食事の機会やお話の機会を頂きました。

自分自身、事業経験は長くとも、自ら起業してのファイナンス経験はないため、先輩方に素直に現状をお伝えし、まずどのような考え方で創業・シードラウンドを迎えるべきかの考え方を固めることにしました。

ご相談当時、何故かこんな髪色でした笑。

パブリックでの資金調達ではなくプライベートでの資金調達の特徴は、個別合意の世界なので、どちらが立場が上というわけではなく、投資する側、投資される側双方が意思決定できることが特徴なのだと理解しました。

投資いただく立場ですので基本的には謙虚に選ばれる立場であるとの意思表明を継続して持っていますが、プライベートでの調達は、こちらも一定選定する立場でもあります。

先輩起業家にも対話した結果、今回の本ラウンドの趣旨は、この創業間もないスタートアップ企業に投資いただいた投資家様とは今後多くの苦楽を共にし、上場までの道をご一緒することになる(此の表現は御失礼かもしれませんが)「経営メンバーを選定する」に等しいものだと考え方を決めました。

実際に、正しい考え方だと思います。

自社で経営メンバーを選定するのだとすれば、決まっています。
経営メンバーの選定で最も重要なことは「信頼関係」です。

多くのCTOに会いましたが、共同創業者も一番信頼できるエンジニアの「実弟」と創業した。

結果、投資家様のほとんどは5年以上お付き合いのある方と、この度ご一緒することとなりました。

そしてこの先、自分自身が、この方々と苦楽を共にして成長していきたいと思える方だけに投資いただくことができました。

中でもリード投資家様のWiL様は、私が福岡に用事があったのですが、その期間中にディールをまとめたいと、元々キャピタリスト様が行く機会がなかった福岡まで飛行機で会いに来てくださり、福岡にいる間中にディールをまとめてくださりました。何もない自分に投資してくださったこと、改めて御礼申し上げます。

本資金調達の特徴

信頼関係の他に、自分自身がこだわったのは、コンパウンドスタートアップを本当の意味で実装できる資金額でした。

変化の激しいHR業界において最も顧客価値のある製品を社会実装するためには、コンパウンドスタートアップとして開発、価値提供する方針を当初より描いていました。

最近日本ではコンパウンドスタートアップの基準が3-4個のアプリケーション展開することを便利な言葉で呼ぶケースもありますが、本家Ripplingの基準がコンパウンドスタートアップであるならば、最低でも20個以上のSaaSプリケーションを短期間でローンチすることを意味します。

Rippling製品サイトより引用。HR Cloudだけでこのアプリケーション数


その数のアプリケーション数を出すことができ、最短で実装、社会提供するための資金を今回調達したいという希望を出していました。

1つのSaaSを提供するだけでもJカーブで赤字を掘らなければいけない中でコンパウンドはそれを10-20個ものJカーブを同時に歩むことになります。日本で本当の意味でのコンパウンドスタートアップを実現するための勝負できる資金を頂きたいことを僭越ながら希望していました。

それでもこれからラウンドを重ねる必要があるためダイリューションは一定に抑えなければスケーラビリティのある会社にはならない。但し、売上は0円のフェーズである。という難しい問題を解くのが今回のラウンドでした。

そういった意味で、リード投資家であるWiL様に本ラウンドの趣旨をご理解いただいての投資条件をご提案いただいた事に感謝の限りです。

WiL様がなぜ当社に投資したかの裏側は以下の記事で触れられています。

山梨県市川三郷町の奇跡

たまに「シリアルだから」と一言で評価される時もありますが、今回ご投資いただいた理由は以下と記事では触れられています。

「今回のPeopleXの挑戦は、産業転換のビッグウェーブに対してベットした起業だと考えている。"SaaSだから"、"連続起業家だから"ではなく、市場規模が巨大でマクロ的にも大変化が起きるタイミング、そして、難易度も高いからこそ、それを支える資金を投じた。」

WiL ジェネラルパートナー兼共同創業者 松本 真尚 氏

当然ながら前職での経験が評価の一端に繋がっていることは自覚していますが、社内でも、事業は魔法のようなことは起きず、一心不乱に取り組んでもスタートアップの成功確率は低い事が前提である旨を強調しています。

国民的製品であった「判子」という産業転換

今回私が事業経験が活きるとすれば、「山梨県市川三郷町の奇跡」を目撃したことにあります。

六郷印章業連合組合の印章資料館にて撮影許可を得て撮影したもの。

前職クラウドサインの事業の性質上、我が国で2,000年続いた判子文化がいかにして日本の信用インフラとなったのかの歴史研究をし続けてきました。

判子文化は現代忌避されるものとされていますが、長きに渡り、これ程までに我が国の風習、慣習、ルールにまでなり、国民や企業全てが保持するまでに至ったその奇跡のような大事業/偉業が何によって為されたのか。クラウドサイン責任者の自分が誰より研究しなければいけないと考えておりました。

私は毎年ハンコの里がある、山梨県市川三郷町に訪問する事としました。

記事の本題ではないので、簡潔に歴史に触れると、判子の転換点は150年前、明治維新後に欧米列強の時代にサイン文化を輸入するか、誰でも簡単に押印できる判子にするか当時西郷隆盛らがいた国会にて真剣に議論がなされました。

当時識字率が高くなく、漢字の識別性の難易度から、利便性高いツールであった判子が選択されました。余りの利便性に偽造が簡単なのではないかと批判を集めましたが、結局はその利便性を法律が力を与え、最高裁による判例が積み重なり、我が国の国民的ツールまでに昇華しました。

人類の叡智の1つ、我が国で最も普及した製品の1つだと考えています。

それを支えたのが山梨県でした。判子の原材料である水晶の名産地であった山梨県は職人たちの力により水晶が加工され、「判子」に加工し、卸売業による物流網を築き、判子の小売店の数は最大で全国に10,000店舗、業界売上高は3,000億円にまで成長しました。

まさに市場が大転換が為され、マクロ経済が動くタイミングで山梨県の先人達が成し遂げた大偉業だと考えています。原材料が水晶でなくなった現代でも、日本全国の判子の50%以上が山梨県で生産されています。

「HR」の産業転換

今回私が選択したHR業界もまた、新卒一括採用から中途採用比率が40%を超えるトレンド変化、政府がリスキリング支援に1兆円を投じる政権の最優先領域、人的資本経営による株主からの要請など、これから大転換が始まります。

どんなに難しくても挑戦しようと思えたのは、山梨県が成し遂げた奇跡、その歴史を継承したクラウドサインの責任者だった私自身の罪と罰があったからです。

自分の経験が活きる点があるとすれば、上記の経験に他なりません。
どんな困難も乗り越えられる。彼らの大偉業と比べたら困難には感じない。

資金調達当日の様子

社内では資金調達プレスリリースの前日には、以下のようなSlack発信を行っていました。

資金調達リリース当日の当社は、特に全くお祝いムードもなく、粛々と仕事をしていました。自分自身も社内で戦略議論を進め、1日で一度も資金調達の会話はありませんでした。

決して浮かれず、より責任感を持って粛々と仕事をして社会に実装していく。もしかしたらスタートアップ業界では最も地味な資金調達当日の社内だったのかもしれませんが、それがPeopleXらしいのかもしれません。

陽の当たる道を、歩んでいこう

社内では、3年で売上100億円規模を目指せないかとの戦略を議論し続けています。

昨日もまた6月のキックオフで社内で議論し続けながら、夜もまた外部の方で国内で売上100億円を超えるHRコンサルティング企業の経験者と議論していました。今日も生成AI企業と協業の可能性などを議論していきます。

PeopleXらしく、大きなる目標を掲げ、本気で挑戦していく。失敗するかもしれないですし、達成できない時に後ろ指を刺されるかもしれませんが、その責任は自分が全責任を背負っていきます。

PeopleXは、日本の労働生産性を向上させるために、従業員エンゲージメント指数129カ国中128位である現状を打破しようと考えています。其の為のあらゆる困難も、道中も、仲間と共に楽しみながら挑んでいきます。

陽の当たる道を、真ん中で、歩んでいこうと思っています。


お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ