Jリーグマネジメントカップ J2クラブ優勝のレノファ山口FCから学ぶスポーツビジネス
前回に引き続きデロイトトーマツが発表する「Jリーグマネジメントカップ2016」について解説していきます。前回はJリーグクラブのビジネスマネジメントの総論をご紹介いたしましたが、今回以降は各クラブについてご紹介いたします。
今回はJ2クラブのビジネスマネジメントで優勝した「レノファ山口FC」について着目していきたいと思います。レノファ山口のことを知らないサッカーファンも多いのも当然で、今季のJ2でのリーグ順位は現在21位で、降格争い真っ只中にあるクラブだからです。
それでは、なぜレノファ山口はスポーツビジネスで優れているのでしょうか?
レノファ山口FCのビジネス戦略
「ブレない経営の軸」とは
レノファ山口FCとは山口県の19市町をホームタウンとしており、スポーツビジネスに重要な人口基盤は約140万人です。沖縄県や鹿児島県よりも人口が少ない都市であることが大前提です。人口ボーナスはスポーツビジネスの基礎中の基礎ですので、必ずしも恵まれた環境ではない中でのビジネス戦略が構築されてきました。
レノファ山口の経営の軸は「オール山口での町作り」にあります。今季のスローガンとして「志 心ひとつに」に代表されるよう、山口県全市町の19町に全ての選手を割り当てられるようにしています。
レノファ山口は地方創生、町つくりの一環として行政と密接に関連した事業として断固たる経営の軸としてオール山口を貫いています。
スポーツビジネスの根幹に関わる戦略ですが、財政の健全化や県民のアイデンティティーを構築するかは、まさにクラブの理念そのものが問われます。海外のビッグクラブであれば、放映権料の適正確保のためにアジア、アフリカ、北米を含めた全地域からスター選手を獲得することが当然のビジネス戦略になっています。
レノファ山口のPL分析
「昇格によるトップラインの上昇率」
レノファ山口の売上高を見てみます。
トップラインの伸びの最たる理由は、クラブチームの昇格が主要因です。2014年はJFLでしたが、2015年にJ3に昇格し、2016年にはJ2として運営できています。
トップラインの成長率を見ても、広告料収入、入場料収入、物販収入全ての成長率が顕著であり、特に昇格によるJリーグ分配金の収入も増えています。特に特筆すべき点は物販収入です。
クラブチームによれば、物販の専任者を雇用することができ、販売方法の工夫や戦略的な打ち手が可能になったことが理由とされています。
入場料収入の増加は、シーズンチケット会員の増加が寄与しており、全体の入場者数の約20%ほどがシーズンチケット会員にまでなっているとのことです。レノファ山口ではファンクラブよりもシーズンチケット会員になってもらうことを重要視しており、シーズンチケットの特典として先行入場、来場者特典、イベントを多数実施しているとのことで、安定的な集客に繋がっています。
シーズンチケットの販売はこちらから。
※特設サイトも用意されています。
レノファ山口の投資戦略
- 人材投資/育成費用にどの程度投資行うべきか -
それでは、このように増加基調にある収入をどのように投資されているのでしょうか。収入をスタジアムに投資するのか、あるいは育成費用に投下するのかなど、まさにクラブの考え方が如実に現れるのが費用面です。
レノファ山口の営業費用科目は以下の通りです。
増加する収入面に合わせて全体的に費用面も増加傾向にあるが、特質すべきはコントロールされた人件費に着目されます。J3からJ2カテゴリーに昇格した際に、身の丈に合わない人材を獲得して予算が上振れ、安定的な経営ができなくなってしまうクラブもある中、レノファ山口では、必要な選手をピンポイントで獲得してオール山口から人材を輩出する基本戦略を変えずにしています。
オール山口で地域を活性化する基本方針があるゆえに、女子チームの運営をレノファ山口に一元運用することになっています。これによりなでしこリーグへの昇格を目指す体制になり、ますます山口県の発展に寄与することが期待されます。詳細は、こちら。
レノファ山口から学ぶスポーツビジネスの基本
これらのレノファ山口における健全な財務体質を生む秘訣は上記PLからも如実に現れています。では、レノファ山口はこれから具体的にどのように経営していけばよりクラブ経営が伸びていくのでしょうか。
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・レノファ山口の全PL公開
営業収入と営業費用に加えて、経常利益、純利益に至るPLを公開
他J2クラブと比較するレノファ山口の特徴点
・レノファ山口のホームタウン戦略
レノファ山口のホームスタジアムの●●問題
地域スポーツとしてスタジアムにどの程度投資すべきか
・レノファ山口のマーケティング戦略とは
SNSから見える●●の改善点
地域創生のあり方から見えるマーケティング戦略
・レノファ山口の掲げる短期・中期・長期戦略とは
今後の経営ロードマップを分析せよ
今後は●●を実施すればレノファ山口はもっとよくなる
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