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エガオが笑う時

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#ファンタジー小説部門

エガオが笑う時 第10話

エガオが笑う時 第10話

 騎士と黒ずくめを警察と救急に突き出してから私達は、キッチン馬車に戻るとマダムが薬箱を持ってこちらに走ってくる。
「エガオちゃん!大丈夫?」
 マダムは、必死な顔で私に言う。
 ああっ本当に心配してくれてるんだ。
「私は、大丈夫です。ありがとうございます」
 私は、深々と頭を下げる。
 しかし、彼女は私のお辞儀を見ていない。
 見ているのは鎧から剥き出しになっている私の顔と手だ。
「エガオちゃん座

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エガオが笑う時 第9話

エガオが笑う時 第9話

 公園の中の空気が変わっている。
 先程までフレンチトーストのように気持ちよく柔らかかかったのに触れたら裂けるように痛くなる。
 これは・・・戦場の空気だ!
 私は、自分の目が鋭く、身体の奥の筋肉に激しく血が流れ出すのを感じる。
「いやああああ!」
 悲鳴を上げているのは制服を着た眼鏡を掛けた女の子だった。
 彼女だけではない。
 その友人達も、老夫婦も、母子も恐怖に震え、悲鳴を上げている。
 そ

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エガオが笑う時 第8話

エガオが笑う時 第8話

「じゃあねエガオちゃん!」
「また、来るからいてね!」
「今度、またお話ししましょうにゃ」
「遊ぼうね!」
 大きく手を振りながら彼女達は帰っていく。
 私は、会釈して彼女達を送る。
 何だったんだ一体?
 戦場で四方囲まれて絶対絶命の方がまだマシだった気がする。
「鎧のお姉ちゃんバイバイ」
 女の子が小さな手を大きく振っている。その隣で母親が小さく会釈する。
 私も会釈を返す。
「鎧ちゃんまた来

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エガオが笑う時 第7話

エガオが笑う時 第7話

「きぁぁぁぁっ!可愛いわよ!エガオちゃん!」
 マダムの黄色い声が公園中に響き渡る。
 いつ間にか晴れた空の下、私は顔を真っ赤にして俯いていた。
 あの後、私はマダムに引っ張られるように公衆浴場に連れて行かれた。奇しくもそこで人生初めてのお金を払い、お湯を浴びて、身体を洗った。
 メドレーの浴場とは雲泥の差の広くて綺麗な浴場に身体が溶けてしまうかと思った。
 マダムにはゆっくり入ってねと言われたが

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エガオが笑う時  第6話

エガオが笑う時 第6話

「カゲロウくーん!」
 明るい声が聞こえる。
 私は、食べ終えたさらにフォークとナイフを並べ、少し温くなった紅茶を飲みながら声の方を見る。
 黄色のレインコートを来た黒色の大きな犬を連れた薄黄色のシャツに青いズボンを履いた五十代前半くらいの女性が手に傘を差してこちらにこちらに近寄ってくる。
 肩まであるカールした金と白の混じり合った髪がとても綺麗だし、清楚で気品のある顔立ちだ。
「いらっしゃいマダ

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エガオが笑う時 第5話

エガオが笑う時 第5話

 彼に連れられて私は公園の奥に行く。が、そこには店なんてなかった。
 あるのは雨に濡れた背の高い植林された木々、黒く染まった整頓された石畳、中央に備えられた雨を投げ飛ばすかのように抱き合った男女の間から大量の水を溢れさせる大きな噴水、そしてその隣に並ぶ長方形の箱のような大きな白い馬車であった。
 馬車は、雨に揺れながらもその美しい白色を汚すことなく、優雅にその場面に収まっていた。
 彼は、私に傘を

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エガオが笑う時 第4話

エガオが笑う時 第4話

 黒い雲が空を覆う。
 タオルを絞るように雨が降り注ぎ、汚れた私の肌と髪を濡らす。
 メドレーの宿舎を出てから一週間が過ぎようとしていた。
 私は、当然行く当てもなく、気がついたら王都の路地裏に入り込んで黴臭い壁に背中を寄せて地面に座り込んでいた。
 路地裏を選んだのは特に意味はない。
 強いて言うなら昼夜問わず暗闇に包まれているのが私の好きだった夜の戦場の空気に似ているからだ。
 汚れた私を隠す

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エガオが笑う時 第3話

エガオが笑う時 第3話

 メドレーは、正統な騎士団ではないとは言え、仮にも王国直属の戦闘部隊だ。しかし、その扱いは傭兵のゴロツキ達と変わらず、その宿舎も公的な扱いなはずなのに壊れた木箱のような黒色に変色した板張りの建物だ。それでも食堂には絶えず食べ物が供給され、男女共用とは言え浴場が付いているだけでも有難い話なのかもしれない。部屋も4人一部屋で二段ベッドに身を縮こませて寝ている。
 女子は、私一人だから流石に1人部屋だし

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エガオが笑う時 第2話

エガオが笑う時 第2話

 浴場の大きなお風呂に入り、香油の混じった石鹸で何度も身体を洗ったらようやく血の匂いが消えてきた。
 幼い頃からお湯を浴びるよりも血を浴びて生きてきたはずなのにどうしても慣れない。白い肌が擦り切れるまで身体を洗い、熱されて溶けてしまうのではないかと思うくらいに湯船に頭まで浸かってしまう。
 何度も匂いを確認しながら浴場を出ると白と黒の水玉模様のショートヘアをした少女がバスタオルを持って待機していた

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エガオが笑う時 第1話 

エガオが笑う時 第1話 

あらすじ

彼女は、"笑顔のないエガオ"と呼ばれていた。
身の丈を超える大鉈を振り回し、荒くれ者の集団メドレーの隊長として、最強の戦士として王国の平和の為にその身を犠牲にした。しかし、そんな彼女は王国と帝国の停戦条約を邪魔した罪でメドレーから除隊の名目で追い出されてしまう。
 戦うことしか知らないエガオは王都の路地裏で何もすることなく雨の中佇む。
「自分は何の為に戦っていたのだろう?」
そんなこと

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