DTM・MIX|ミックスのセンスがない人が「音の密度と艶のあるボーカル」にするためにやるべきこと
ミックスに時間を費やし、試行錯誤を繰り返すこと約20年強。ミックスの教室にも通ったけどいまいち結論は見出せなかった。プロの方と会話しても「答えのない世界(だからこそ自分らしさも出る)」ということでなんとも腑に落ちない。
そんな中、初めて自分なりの結論が持てたのでここにまとめたいと思う。結論、艶のあるボーカルのサウンドメイキングは以下の通りで順にご説明します。自分の耳のセンスに疑いを持っている私のような人に読んでいただければ幸いです。
①ヘッドフォンではなくスピーカーを使う
理由はシンプルで、「ヘッドフォンで良い音と思ったとしても、スピーカーで良い音とは限らない」が、「スピーカーで良い音はヘッドフォンでも良い音」だからです。スピーカーは極力大きな音で聴くといいらしいです。
スピーカーが難しい人はCLA Nx(ヘッドフォンにスピーカー環境をモデリングするソフト)が役に立ちます。本当にスピーカーから音が出ているように感じます。
SoundID Reference(キャリブレーションソフト)はできれば入れたほうがいいと思います。暗闇で作業してたけど、部屋が明るくなってめちゃ作業しやすくなった!という感動が得られると思います。
②良いマイク・マイクプリを使う
これは音の密度・艶を出すための必須条件。ここが悪いと後工程でどれだけ頑張っても理想の音は出せない。なのでもっといい機材試してみたいなと思うのもここです。
お金がないという方でも中途半端なものは買わずお金を貯めて、良いマイクを購入することがおすすめです。なぜなら妥協したものを使うことで音質の疑念が残るのであれば自分の作業工程のどこが悪いかの分析・特定が困難になります。また、結局後で良いものを購入したら余計に費用が掛かりますし、インフレも激しく未来は現在価格よりはるかに高くなると思われます。
Neumann U87aiは間違いないマイクです。ただ同じ価格帯でもっと他に良いマイクはあるのだろうと思いますが探究し切れていません。
オーディオIFやマイクプリは優先順位は下げてよいと思いますが、Universal Audioのapolloはマイクプリのシミュレーション・掛け録りができるのでおすすめです。
マイクプリのAurora Audio - GTQ2 はこれまでずっと在庫がなかったのですが
ようやく買えるようになったみたいですね。これはいつか試してみたいです。
③マイクの振動板に声を当てる & 部屋鳴りを防ぐ
声のルートの先にマイクの振動板(ダイヤフラムともいう)が来るようにする(音声は声帯が震え、喉・口を経由してマイクに伝わる)
マイクの位置が高くなれば高音が強調、低くなれば低音が強調される
口とマイクの距離は10cm~30cm話す(近ければ暖かく、遠ければ空気感あるサウンドに)
音量はVUメーターの「-18」を基本とする
リフレクションパネルは、マイクの背後と自分の背後に配置する(毛布や家具なども一定の効果がある。できれば天井など他のところにも)
④DAWはPro Tools / Studio One を使う
昔はDAWはCubaseをずっと使ってました。10年くらい。新しく機材一式刷新しようと思って、WinからMacに変えて、DAWはLogic Pro Xにしました。10年以上使ってました。先日、Pro Toolsの無料版を使ってみたときがあって、あまりの音の違いに驚愕しました。Logicで時間を無駄にしたと思いました。Wavesを使ってきたけど、Universal Audioに乗り換えたときの衝撃に近いです(Universal Audioはおすすめです)。EQやCompの掛かり方も違うし、なによりもReverbやDelayの掛かり方は素晴らしいです。Logicユーザーの方はぜひPro Tools使用してみてください。ただUIは最悪です。
Cubaseの試用版を使ってみたのですが、Cubaseも音質はLogicに近い(悪い)と感じました。なぜPro Toolsが音がこんなに違うのかは良くわかりません。Studio Oneも音質が良い上にPro ToolsよりもUIが良いです。誰かにDAWをどれにするか相談を受けたらStudio Oneと言うと思います。
AI曰く、音質が異なるのは、オーディオエンジンが異なり音声信号の処理がそれぞれ異なるからでは、とのこと。
⑤ボリューム調整する(録音した波形データの)
なるべくコンプに頼らないが個人的な結論です。ただしオートメーション描くとか絶対やりたくないのでおすすめは以下のプラグインを活用することです。VUメーターはやはり「-18」のヘッドルームで0に触れるように調整。
⑥繊細なEQ調整
これはお好みなのですが、重要なことは、
1)各周波数帯で1~3dBの増減に留める
2)スピーカーでキチンとボーカル単体とオケ全体と聞きながら調整する
3)あんまり差がでないと思ったら調整しない
4)10Hz-50Hzはローカットする。
以下のようなチートシートを参照しながらいじるといいと思います。
⑦繊細なコンプ
子音(20-30msecまで)はあまり潰さず、母音(20-30msecから)を狙うが基本で、粒立ちが少しクリアになるくらいにだけCompを使うといいと思っています。(音に色付けするためのCompは上記がきちんとできた上であくまでライトに施していくのがよいです)
1)attack time:10~15msec
2)release time:なるべく早め、autoがあればauto
3)ratio:「1:1.5」「1:2」
4)threshold/Gain reduction:2~3dB減るくらい
Compはさまざま種類があるので以下の一覧をご参考ください。
またCompやEQや音量はAメロ、Bメロ、サビなど歌の箇所に応じてオケに負けたり、別の調整のが必要になる場合があり、その場合は基本プラグインのかかり具合を調整する(別トラックにして対応するよりも)。その調整はフィジコンがあると便利。
⑧サチュレーション
倍音が付加されて、オケに負けない存在感のあるボーカルにする。サチュレーションは歪みのため艶とは真逆なイメージですが、艶があっても音が細かったり、存在感・太さがないと、しょぼいボーカルになるので、サチュレーションは必須。
掛ける程度は隠し味程度から音がクリップする直前までで一番合うものを選ぶ。自信がなければ音が変わったかな?くらいのところで止める。コーラスやリバーブもサチュレーションで個性を付けることで素敵な存在感を醸成できる。ボーカルに限らず、ドラム・ベース・ギター・シンセなど、他も掛けると音が全体的に良くなる。
⑨ディレイ(&リバーブ)
艶という観点で一番チートなのはディレイだと思っています。ディレイはモノラルで掛ける、ピンポンで掛ける、テンポに合わせてDelay timeを調整などありますが、難しいことはよくわからないのでシンプルに色々やってみて気持ちいい音を探すが良いと思います。
(ご参考)BPMをmsに変換できるサイト
リバーブは、UAD EMT 250が好きです。リバーブはSendで使い、リバーブの後にVocalをサイドチェーン掛けたCompを-3~-5dBくらいで掛けるとVocalが埋もれない。iZotopeのNeoverbは標準でUnmask機能があり楽(ただ後段にCompはだいたい掛ける)
最後に
ここで申し上げたかったのは劣悪な環境で過剰なEQ、コンプ、
過剰なプラグインの挿入では、素人には艶は出せない。
素材の音を正しく録音して素材の良さを生かしてミックスすることが
一番美しいミックスだと感じた、ということでした。
上記で十分艶は出ると思いますし、
ここからさらなる自分好みの音作りに励んでいただければ
音が悪い時に原因も辿りやすくなる、
より自分らしい音作りを追求できる、と思っています。
以上、ご参考になれば幸いです。
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