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No.7 喜怒哀楽

講座に来られる皆さんは、旅行やVlogなどをうまく撮りたいとワクワクしておられます。それに応える私は本当に幸せです。今までわからなかったことが理解できて、嬉しそうな笑顔を見るのが好きなんです。大学での授業もとても楽しみながらやっていました。

ただし、私の本業は、報道系ドキュメンタリーなので、ジャンルにもよりますが、病気の方や何らかの被害を追って苦しむ方、あるいは肉親を亡くして絶望にくれている方などの取材を余儀なくされます。そういうとき、私は心の中に大きなダムを作って、涙を貯めるようにしています。私の仕事は、そこで共に泣くことではありません。受け止めた悲しみをどうやって伝えるか、ベストな選択をしなければならない立場です。

だから、私は取材現場であまり自分のネガティブな感情を見せません。ただていねいにお礼を言って、少しばかりの励ましの声をかけて去ります。そして、感情に押しつぶされないよう、その圧力を表現力に変えて、構成原稿を書き、編集ソフトに向います。オンエアないし、上映のさいに、ダムの水をうまく放流できたら。ようやく自分の仕事が終わるのです。こうした仕事は、ある一つの問題について、当事者の人と喜怒哀楽の「怒哀」を共有し、共に闘う仕事です。意義があるとは思いますが、楽しさという感情とは無縁です。

ですから、「好きなことを仕事にできて幸せね」などと言われるのが大嫌いです。使命だと思ってがんばっている、ただそれだけです。まあ、お医者さんとか、消防士と同じような立場というか。

翻って考えると、私の喜怒哀楽は「喜と楽」が教育の場にあって、「怒と哀」が本業の場にあるという感じになります。なので、本業と並行して教育をやってきたことは、私にとって救いです。

そして、いつか私と同じように、第三者の「怒と哀」に向き合える強い人に出会ったら、弟子として育てたい。そんなふうにも思ったりします。私の教育体系(D-Method)は、一般市民にもプロにも通用するシームレスな構造を持っていますので、もしプロになりたい方がいれば、ぜひお声がけくださいね。(2023年8月14日)

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