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No.2 劇映画とドキュメンタリー


すべての映像ジャンルの中で撮影が一番難しいのは?と聞かれたら、迷うことなく「ドキュメンタリーだ」と私は答えます。「事実か架空か」という違いもありますが、技術的には圧倒的にドキュメンタリーが難しいです。

劇映画の場合、セットなり背景があり、カメラが据えられたところで役者が演技をする。役者のNGはあるかもしれませんが、カメラは準備が完璧ならば、失敗は少なくてすみます。

しかしドキュメンタリーの場合、撮る対象は役者ではありません。ましてカメラのために動くということ(テレビクルーはけっこう要求するが、私はあまりやらない)はないので、カメラマンが動かなければならない。これには瞬時の状況判断が必要なので、とても難しい。だから私は講座を開いているんですね。

ワンオペで撮影するということはカメラマンとディレクターの二役を一人で担うことなので、さらに難しいのですが、これからの時代、これはスタンダードになっていくと考えます。これはもう不可逆の流れだと思います。

なぜなら、状況判断ができる情報やタイミングを掴めば、身体を動かして撮ればよいのであって、指示するとか相談するなどという暇を必要としないからです。相手を理解しているからこそ、意味のある絵や音を撮れる。これは、劇映画のカメラマンはもちろんテレビクルーでは難しいです。

ワンオペで行うビデオジャーナリズムには、そうした優位性があり、私が手法として選んでいるのも、まさにそういう理由なのです。
感覚的には「文字で文章を書く」のと同じように「ショット群で場面を作る」を体得すると、次第に身体に馴化されます。例えて言えば、ピアノを弾く人が、エレクトーンを学び、主旋律と同時に伴奏ができるようになるのと同じなのではないかと思います。そうなるにはどうしたらいいでしょうか。はい、楽器と同じです。繰り返し練習するのが急がば回れ、です。(2023年7月10日)

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