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レノボが「竹」に着目した理由とは?ThinkPadのサステナビリティなパッケージ

レノボの環境目標に向けたThinkPadの取り組みと、そこに貢献する大和研究所発祥の技術を紹介する。

レノボ・ジャパンは、11月8日、同社大和研究所において「製品開発におけるESGの取り組み」と題した説明会を開催した。横浜・みなとみらいにある大和研究所は「ThinkPad」シリーズの開発拠点となっている。説明会には、同研究所のサイトリーダーに着任した同社執行役員の塚本泰通氏が登壇した。

気候変動緩和へのグローバル目標

レノボは、2020~2021年度のESGレポートの中で、新たな気候変動緩和へのグローバル目標を掲げている。

2029〜2030年度までに、デスクトップとサーバーで50パーセント、ノートパソコンとモトローラ製品で30パーセントのエネルギー効率化を実現すること、 また、2025〜2026年度までの達成目標としては以下を上げている。

・電力の90%を再生可能資源から調達
・サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を100万トン削減
・パソコンのプラスチックパッケージにおけるリサイクル素材を90%に

説明会では、これらグローバル目標に向けた「ThinkPad」における取り組みや、そこに貢献する大和研究所発祥の技術などが紹介された。

低温ハンダ技術が4000メガトンの炭素換算量削減に

大和研究所発祥の技術である「低温ハンダ」は、2021年度は2000万台以上のノートパソコン基板に適用され、4000メガトンの炭素換算量以上の削減につながっているという。「低温でハンダ付けできるこの技術は、(環境問題が)騒がれているから今始めたというものではなく、もう5年以上前から取り組んできているもの。パソコン基板の他、指紋認証モジュールやメモリーなどパートナー企業にも使っていただけるようにしている」と塚本氏は述べる。

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業界に先駆けてThinkPadのACアダプターやアンテナ、スピーカーなどで採用してきたというPCR(ポストコンシューマーリサイクル)プラスチックは、ソニーとの協業によるものだ。「日本のモノづくりで環境負荷軽減に貢献していこうということで、再生プラスチックの開発を一緒に進めている」(同氏)

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エコフレンドリーなパッケージにもレノボの技術力

レノボが環境対応とリサイクルで進めているのが、「竹」素材を使ったパソコン用パッケージの採用と粘着剤使用ゼロの取り組みだ。同社では、竹の「しなやかで強く軽量」「成長が速く芝のように再生が可能」「国内の多くの場所で見かける」といった特性に着目し、竹繊維を使った新パッケージを2018年から導入した。さらに、梱包の際にテープを使わない「セルフロックパッケージデザイン」も併せて採用している。これによる効果として、テープ使用量1万9500km、プラスチックフィルムと粘着剤のそれぞれの使用量50トン、紙のコアの使用量11.7トンを年間で削減できたという。

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竹およびサトウキビ由来のクッションによって、
パレット密度を18%高め、 炭素効率を 6.7% 改善しているという

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梱包の際にテープを使わない「セルフロックパッケージデザイン」

また、企業向けに複数台を一度に納品する場合には、パソコンを数台ずつまとめて梱包する「バルクパッケージ」を採用している。梱包資材の削減だけではなく船や飛行機の輸送コスト削減、脱炭素にも貢献していると塚本氏は説明する。

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こうしたエコフレンドリーなパッケージは、大和研究所の「パッケージエンジニア」が研究・開発しているという。

ノートパソコン本体だけではなく、パッケージにもレノボの技術力が生かされたサステナビリティへの取り組みだが、同社では当たり前の企業努力として行ってきたためか、あまり知られていなかった。竹への着目や梱包サイズの縮小など日本ならではのユニークな発想と技術によるよき事例と言えるだろう。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

本文中画像 レノボ・ジャパン提供

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