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夜更けの思索宮

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時には哲学を、古代ギリシャを、あるいは皮肉やのイタリアの彼氏のような、ちょっといつもの場所をはなれて遊ぶ
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#イタリア

『時』に生きるイタリア・デザイン-2: 「相違の中の統一性」を追求するイタリアデザイン

 前回読んだところで、1923年のミラノビエンナーレから1930年にトリエンナーレとなった後、1968年以降の開催が不定期になります。その後、2016年の第21回トリエンナーレから3年ごとに開かれています。この不定期になった部分が気になって、「4. イタリアのインダストリアル・デザイン、5. イタリアのインテリア・デザイン、6. デザイン空白時代」を読み進めました。 イタリア人にとってのデザインの意味 イタリアの建築家などが使うプロジェクトという言葉は、設計する・企画すると

『時』に生きるイタリア・デザイン-1: 歴史が紡いだ文化と現在を繋ぎ、とことん遊ぶイタリアデザイン

 今回は佐藤和子氏「『時』に生きるイタリア・デザイン」の読書会初回で、「序、1. 1990年代。モダンクラシックの風、2. 1930年代のイタリア・デザイン、3. 敗戦からデザイン黄金時代へ」まで読みます。イタリアは20世紀を通じて、モダニズム、ファシズム期のデザイン、戦後の復興、1960年代のデザイン革命、ポストモダンデザイン、そして21世紀の現代デザインへと移り変わってきました。英国、北欧、アメリカと比較すると、イタリアのデザインはその時代ごとの文化的、社会的、経済的背景

領土と思考の2つのシンクレティシズムによるローマ化

 今回は、ポール・キンステッド著『チーズと文明』、第5章 ローマ帝国とキリスト教〜体系化されるチーズだ。このタイトルにあるシンクレティシズムとは、元は宗教、最近は広く文化などを混ぜ合わせること。融合、混合、複合、土着。日本の仏教と神道の折衷も、このシンクレティシズムだ。 牧畜システムの発明と民族移動 紀元前1000年ごろ、チーズ製造と豚の飼育を組み合わせた牧畜システムが完成した。それを促したのは、チーズ作りの確立と共に、近東の新石器時代の豚の家畜化である。豚は雑食なのでなん

イタリア人の家族主義と根源的「不信の文化」

 今回は、『イタリア的:「南」の魅力』ファビオ・ランベッリ第4章 「イタリア政治の不思議な世界-カーニバルとユートピアのあいだ」です。 イタリアの右翼と左翼  通常、右翼保守的、左翼革新的というふうに使われるが、イタリアでは異なっており、右翼は、ファシスト、自由主義、キリスト教系の政党で、左翼は社会主義や共産主義とされる。90年代初頭の政界の大再編が起こり、フファシスト的な要素が弱まり。キリスト教派と共に「国民連盟」となる。ベルルスコーニが新党を結成に、1993年に「がん

父と子と聖霊とに、栄えあらんことを

 今回は、『イタリア的:「南」の魅力』ファビオ・ランベッリ第2章イタリア人の宗教観ー「常識」としてのカトリックです。東京から転校して入った幼稚園がカトリックで、初日から「てんにましますわれらのちちよ」と呪文を唱えていました。それと生まれた時から亡くなるまで寄り添うイタリアの話です。 キリスト教の神は三位一体  呪文の中では、短めで食事を摂る時も唱えていた詠唱、「願わくは父と子と聖霊とに、栄えあらんことを。初めにありしごとく、今もいつも世世に至るまで。アーメン」に、この神の

『地中海世界』フェルナン・ブローデル - 陸地

先日、FBで安西さんが読書会をすると話していて、それも題材は欧州の文化に関する本フェルナン・ブローデルの『地中海世界』だと知り、合流することにしました。その最初の一章を1000文字制限でお送りします。 ~~~~~~~~~~~~~~ 「節制」を運命付けられた土地 地中海というと何を思う浮かべるだろうか?アマルフィのアッズーリ色に染まる空、海はブル・カプリ。イタリアには青緑色を語り色に地名が多く使われている。それらに彩られた豊穣の光景を浮かべるのではないか。  しかし、ブ