ロシアの当局者たちはウクライナ侵攻についてどう思っているのか

彼らは用心深く、「とんでもない大失敗だ」と言った。(They are carefully enunciating the word clusterfuxk.)

Farida Rustamodaはロシアの独立系ジャーナリストで、これは3月1日にロシア政府や議会の関係者、財界人への取材を基に彼女が書いた記事(原文はロシア語、Ilya Lozovsky氏が英訳したものをさらに和訳)。内幕としては非常にビビッドで、読み応えがあったので拙いながら急ぎで訳してみる。

突然に、最高機密の特殊作戦を実施するのはウラジーミル・プーチン大統領の主なパターン。元チェキスト(秘密警察、スパイ)として、彼は皆を恐れせさせ彼は望むことをなんでもできると思わせるために、いつも皆の油断に付け入ろうとする。私たちはこれを再び、戦争の3日前の安全保障会議の緊急会合で目撃した。対外情報機関トップのセルゲイ・ナルシキン副首相のどもり、ドミトリー・コザック副首相の混乱、そしてモスクワ市長セルゲイ・ソビーニャンの心配顔が何よりの証拠だった。ロシアにおいて最も影響力のある人々がプーチンの前では、抜き打ちテストを行う教師の前の生徒のように座っている。そして会議は戦争についてでさえなかった。彼らはドネツィクとルハンスクの自称「人民共和国」の承認について議論していた。

戦争の勃発まで、ロシアの政治空間はそれが可能なように一掃された。彼らは魂の奥底では、政府当局者と立法府議員たちは彼らの指導者の決定に不同意だったかもしれない、ただし魂の奥底でのみ。彼に面と向かって大声で反対できるものはほとんどいなかった。

戦争中に政府高官が行う公式発言は統一されてプーチン大統領が宣戦布告時に述べたことのおうむ返しだった。曰く、「ロシアにほかの選択肢は残されていなかった」、「我々の軍隊はウクライナ国民をナショナリストの抑圧から解放している」などなど。

現実には権力の回廊内の戦争に対する態度はあいまいなものだった。私は様々なレベルの、複数の議員や政府関係者に話を聞いたあと、この結論に達した。彼らの多くは意気消沈し、恐れ、そして黙示録的な予測をした。国有VTB銀行トップのアンドレイ・コスチンは「喪に服して」いた。複数の議員は議席を辞することを考えている。プーチンが「特別作戦」の開始を宣言する2日前、もっとも事情に明るい友人は戦争にはならない、なぜなら戦争は誰の利益にもならないからと考えていた。私は政府関係者、議員、そして政府系メディアの職を離れたジャーナリストさえも、もはやこれにはかかわっていないと解放され、戦争に反対する声を上げたのを見ている。

私の話し相手が言っていることについての道徳的判断なしに、中立的なジャーナリストとして私は目撃したことを共有することに決めた。

「彼らは用心深く、「とんでもない大失敗だ」と言った」 これは私が話した一人が政府関係者のこの戦争への反応について説明したものだ。彼の言葉では、権力の回廊の雰囲気はまったくもって幸せなものではなかった。多くは麻痺状態にあった。

「誰一人喜んじゃいない。大勢がこれは間違いだって理解している。だけど、職責を果たす上で、折り合いをつけるために釈明を見つけている」とクレムリンに近い別の情報源は言った。何人かの当局者は起こっていることに全く我関せずで、プーチンの決定を歴史的な選択としての決定(それについて彼らは何の影響もない)ものとして見て、そしてしばらくの間誰も理解できないだろう意義を見ていた。

誰かプーチンが戦争に踏み出すと予期していただろうか? 皆、予想していなかったと私に言った。彼らは、大統領は安全の保障に関する西側との交渉における切り札を得るために、緊張を高めているのだと考えていた。そして、すべては彼らの行政区域内のドネツィクとルハンスクの「人民共和国」の承認にとどまるものであるとも。

「皆が、私たちが爆撃を開始するのかしないのか、この重要な問いに対する答えにならない情報をまき散らしていた」と政府に近い1人は言った。「大統領府にいる何人かの知り合いは、彼は既にすべての決定を下していることを確信していた。しかし、すべては一人の人物の頭の中で起こっていた」

きっと、私の情報源は述べた、一握りの最側近だけが知らされていた。国防大臣のセルゲイ・ショルギ、参謀長のヴェレリー・ゲラシモフ、そして対敵諜報機関の長官たち。たとえば、大統領府長官のアントン・ヴァイノ、彼の役割は前任者たちと違って私設秘書のようなもので、そのような決定は知らされていなかった。加えて、ヴァイノは数週間にわたってコロナの重症が長引いていた。

戦争の3日前に開催された拡大安全保障会議で、プーチンは実際にはドネツィクとルハンスクの「人民共和国」承認の決定について話していなかったと、情報筋は述べた。会合自体は即興の試みで、実際の議論のイメージを提示するものだった。

「それがみんなそわそわしていたわけさ」と情報筋は言った。「もし彼らが「はい、私は支持します」とはっきり言えと言われたら、彼らはそうした」

閑話休題。安全保障会議の構成員との会話、ほとんどは「小さな会議体」、12人程度の会議の常任委員とのもの、はロシアの民主制が縮んでいったものだ。試験では、少なくとも過去10年間、これがプーチンが理解していた民主制だ。彼は週に一度、治安機関のトップ、議会上下両院の議長、そして首相と話していた。そしてそれだけ。民主制が実行された、人々が協議した。戦争前の安全保障会議のセッションはこのプーチン流民主制の一例だった。

政府と中央銀行は制裁に備え、そしてしばらくの間金融機関は圧力に耐えるだろう。The Bell(※スタートアップメディア)は戦争の直前にそう報じた。第一副首相のアンドレイ・ベロウソフはSWIFTからの断絶やハイテク製品の禁輸といった課題に備えるためのミーティングを数回行っていた。そして首相ミハイル・ミシュスティンは安全保障会議の会合で政府はドネツィクとルハンスクの承認に対する数か月の制裁に備えているとうっかり漏らした。

しかしながら、ロシア経済は実際に発動された強烈な制裁から迅速に回復しないだろう。そして誰もこれに備えていなかった、と私の話相手は言った。加えて、米国、EUそして英国当局は部分的に中央銀行の外貨準備の部分的な制限を始めた。2021年半ばのデータによれば、中央銀行の金庫室にある金はその準備資金の21.7%でしかない。ほとんど、63.3%は外国債と外国の保証金に投じられている。EU上級代表のジョセップ・ボレロはG7国内にある中央銀行の準備金の半分は封鎖されると述べた。2月18日時点、中央銀行の準備期は6,430億ドルに達していた。

「 もしロシアが自国を帝国とみなしているなら、忠誠を強制する代わりに発展させることで隣国にとって魅力的な国となったらどうだろう? 良い道路、質の高い医療と教育を築き、そしてやがて火星を最初に植民地にする技術を見つけよう」プーチンの戦争を始めた動機についての考えを私が聞いた高官はとぎれとぎれに言った。

別の情報源、プーチンの良き友と呼ぶことにしよう、はこのように言った。ロシアの大統領は頭の中でゲームのルールはロシアによって破壊されたのではないと考えている。そしてこれがルールのない戦いであれば、それが我々が生きる新しい現実になる。

「彼は腹を立て侮辱された状態にいる。偏執が馬鹿げた域に達した」彼はこう言った。彼によれば、プーチンは誠実に信じている、少なくとも彼の統治の最初の数年間は、西側との関係改善に最善を尽くしたのだと。

「一方で、本当に不公平な事態があり、我々は何年も絶えず様々な規模で被害を受け、ウクライナよりもだいぶ前に敵と宣告された」と彼は述べた。「他方で、賢明に、公に、政策を構築し実行する能力がなかった。そして第三には、プーチンがあまりにも長く権力の座にあったことで堕落した」

「プーチンは今、真剣に、ショイグとゲラシモフが言っていることを信じている。どれだけ速くキエフを奪取できるか、ウクライナ人は自分たちを爆破している、ゼレンスキーはコカイン中毒だということについて」

これまでのところ、当局者の誰も公的には起きていることに大っぴらに反対することはしていないし、まして辞職などしていない。ロシアの富裕なビジネスマンの間では、ミハイル・フリードマン、今や制裁で脅されているアルファグループの創始者だけが、批判的な声を上げている。彼の公開されていないロンドンにあるLetterOne社の従業員の手紙はフィナンシャルタイムズによって入手された。しかし私は彼自身が記者に共有した可能性があると考えている。ピョートル・アーヴェン、アルファ銀行の取締役会議長は、プーチンと開戦後のビジネスマンの会合に出席したが、きわめて不愉快そうだった。ヤンデックスのマネジングディレクターのティグラン・クダヴェルディアンは、会合に出席したくなかったが、ヤンデックスの経営陣が社内でさえ起きていることについての立場を表明しなかった中、結局のところ従業員に対する責任から出席した。

国有VTB銀行のアンドレイ・コスティンは厳しい制裁のためにウクライナにおける軍事行動に反対したと噂される。彼は喪に服している、と友人が言った。「彼は20年かけて銀行を築いてきたが、今は愚考のせいで無価値になった」

億万長者のオレグ・ティンコヴは4日目に戦争に反対した。「ウクライナで毎日無実の人々が死んでいる。これは考えられることではなく受け入れられない。国家は人々の治療、ガンを克服するための研究に支出すべきで、戦争に支出すべきではない。我々はこの戦争に反対だ!」と彼はインスタグラムに書き込んだ。

議員の中では、彼らの大多数が制裁対象となっているが、3名がソーシャルメディア上でプーチンを非難した。3人とも議会の第二会派で、過去8年間にドネツィクとルハンスクの「人民共和国」の承認について主張している共産党を代表している。オレグ・スモリン、議会の科学教育委員会第一副委員長で共産党議員、は、侵攻について知ったときにショックで予測は間違いだったと述べる投稿を行った。スモリンはロシアが大規模な侵攻を行わない、状況は2008年に(彼曰く)ロシアがアブハジアと南オセチアの独立を守ることを支援した時のような、より穏健なシナリオに従って展開すると信じていた。

別の共産党議員であるミハイル・マトヴィーエフ、地域政策委員会副委員長は、「戦争をただちに止めなければならない」と書いた。

「”自称”「共和国」の承認に賛成票を投じたとき、私は平和の票を投じたのであって戦争にではない」と彼はつづった。「ロシアがドンバスが爆撃されない盾となるためで、キエフが爆撃されるためではない」

当局は反対者を迫害していると批判した退役大佐のヴァチェスラフ・マルカーエフは、議員たちは誤った方向に導かれ、戦争を起こす意図は偽られたものであると主張した。「私はダブルスタンダードと同じ方法を使い始めたロシアの指導層を非難する。共和国の承認の下に、我々は隣国への全面戦争へ向かう計画を隠した」と彼は書いた。

スモリン、マトヴィーエフ、マルカーエフは資産や不動産を海外に保有している議員ではない。少なくともメディアはそう報じておらず、そして彼らの党の議員はそのようなことを承知していなかった。言い換えれば、彼らが声明で守ろうとしたのは彼らの評価である。同時に、共産党のウクライナとの戦争に対する一般的な方針は、党はプーチンの懸念を理解し軍事行動を起こす決定を理解するというものだ。

3人の勇敢な共産党議員の視点は他の、私がインタビューしたいわゆる野党議員にも共有されている。彼らは連邦上院を非難し、部隊派遣を承認したのは上院議員で、下院は共和国の承認と限られた部隊で彼らの自衛を支援することのみを望んだと述べている。共産党議員の1人は、全面戦争のようなものは本当に予期していなかったと述べている。

「誰もキエフによって正しいと受け止められると考えていない」と別の議員は言った。「最初はすべては狂った偽りだと考えただろうが、それが現実のものとなった」彼によれば、彼は権限を放棄することを考え、そうすることでロシア当局の行動との関係を無いものとしようとしている。



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