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『明日の世界が君に優しくありますように』

汐見夏衛、スターツ出版の処女作から一気にスターダムを駆け上がった作家で、次女の強い勧めで読んだ3作目だっただろうか。
先に読んだ2作は、まあ恋愛小説にしては、戦争とか、死とかを扱っているので、次女になかなか教えにくいことを、この小説からなんとなく学んでくれているだろうな、くらいにあまり自分ごととして、考えていなかった。
ところが今作は、娘の気持ちを考える親として、とても共感できることの多い、佳作だと思う。2作目に読んだ『海に願いを 風に祈りを そして君に誓いを』の続編である。前作もよかった。いろんな優しさがあるし、見えない優しさを感じて感謝したいとか、苦しいからこそ、優しくなれるのだと、僕も十代の頃によく本から教わったテーマだ。

まあ、まず自分から手に取るような小説ではない。読者のターゲットからも、自分は大きく外れているだろう。だから不覚にも、読みながら目頭が熱くなる、という経験ができて、次女に感謝したい。
次女が少し優しくなった気がしたのは、気のせいではなかった。彼女は、一歩一歩、前へと、自分の足で、歩いている。それを読書で知ることができて、無性に嬉しかった。

そして、やはり海という自然の存在感が、半端ない。潮の香り、波の音、輝く色が、いい。
五感の想像力、そして、人の思いの想像力。間違いなく、今の若者が求めている、佳作だ。
1作目が映画化されたが、次女はあまり興味がない。わかる。原作を超える映画化は、なかなかに難しい。原作好きにとっては、尚更だ。

今の社会は、科学が全盛であるが、科学に優しさはあるだろうか。

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