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自分の中の多様性

ハンスは優等生だ

彼の短くも濃い人生は
多くの日本人の胸を打つ

感受性豊かな思春期
平日と休日の厳格な教育

大人になっても忘れない
あの葛藤と孤独

ヘッセが29歳で描いた
もうひとりの自分

そういうことなんだ

みんな子どもの頃は
釣りが好きで詩が好きで
でも大人になると
裕福な先生か貧しい労働者

先生は平気で嘘がつける
労働者は美味しそうにビールを飲む

労働者にも親分子分
徒弟制度の縦社会

車輪という運命に翻弄され
誰もが心を病みながら
懸命に梯子を昇る

仲間を裏切り孤独に打ち勝てば
先生というガラスの勲章

ヘッセは友人たちに
もうひとりの自分を見る

ハンスはその中のひとり
誰もの中にいるひとり

みんなの中にハンスはいる
ヘッセはそれを教えてくれる

ハンスの中にみんないる

健全な精神は
健全な肉体に

ヘルマン・ヘッセ著
松永美帆訳
『車輪の下で』を読んで

2.12

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