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缶チューハイと桜と涙

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翌日、初めての二日酔いに見舞われて、いつまでも布団から起きだせないでいた。水も飲まずに何も食べずに、お酒だけ摂るとこうなることを身をもって知った。親と妹に呆れられながら、なんとか部屋を抜け出せたのはお昼近くになってからだった。

顔を洗っているときに、昨晩の出来事が思い出された。
勢いで好きと言ってしまった。そのうえ目の前で、盛大に吐いてしまった。ガンガンと痛む頭を抱えて、何もかも後悔した。できることなら、最初からやり直したい。あまりにもひどい。終わってる。
そして続けて、間近に見たチアキくんを思い出す。表情はおぼろげなのに、口の中に混じるタバコとお酒の混ざった香りだけは鮮明に覚えていた。顔の表面が燃えるように熱くなり、少し落ち着いていた吐き気も蘇ってきた。

あの行為にはなんの意味があったんだろう。わたしは、チアキくんにとってどういう存在なんだろう。はやく会いたいようで、会いたくないようで、やっぱりどうしようもなく会いたかった。

携帯電話に、特に連絡はない。
寝ているのだろうか、それともバイト中だろうか。
夕方、体調が戻ったわたしは、シフト確認という体でコンビニへ行くことにした。あわよくばチアキくんと会えれば、と思った。

明日からのシフトを見て、落胆せざるを得なかった。
2週間分張り出されているシフト表には、チアキくんの名前がなかった。
「モリくんとかチアキくんは、忙しいんですか」
横で金銭管理の作業をしているオーナーにそれとなく話しかけた。たまに入っていた日勤がゼロになり早朝勤務のみになっているモリくんの名前も入れて、少しでも自然に聞こうと装った。
「ああ、モリちゃんは春休み中も教授のところに通うから、日勤ができないんだって。チアキくんは、専門学校の準備でしばらく入れないんだってよ」
そうですか、と返して、再びシフト表を見つめた。表の途中で、月は変わり4月になっていた。わたしは、もうすぐ3年生になる。

夜になってもチアキくんから連絡が来ることはなく、わたしは焦れていた。
いてもたってもいられず、大学の友達に電話で相談した。ふんふん、と話を聞いていた友達は、混乱しているわたしや、昨晩のことについて何も言及してこないチアキくんの様子を冷静に見てくれた。
「付き合うとか、そういう話にもなってないってことだよね」
「あんまり記憶にないけど、多分」
ふ~ん、と電話口で聞こえた。
「なんか、さゆからちゃんと聞かないと、なかったことになりそうだね。」
その言葉に頭が停止した。

チアキくんはそんな人じゃない。そんな人じゃないはず。
本当に?

その日の夜も、次の日も、春休みが終わっても、チアキくんから連絡はなかったし、バイト先でも会うことはなかった。




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