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【愛用品リスト/12】リトアニアのかご

まだコロナウイルスとやらが我々の生活にここまで甚大な影響を与えるとは夢にも思っていなかった今年のはじめ、アリ・アスターの『ミッドサマー』を劇場で観たという人も少なくないと思う。

『ミッドサマー』で描かれるのは、スウェーデンの奥地のカルト教団である。スカした大学生集団がフィールドワークを行うため、このカルト教団が行う夏至祭に参加するというのが、映画のあらすじだ。

ところでこの夏至祭、スウェーデンやフィンランドなどなどいわゆる「北欧諸国」でのみ行われるんだと思っていたら、私が3月末に旅行するはずだったバルト三国にもある習慣なんだそう。『ミッドサマー』で描かれる夏至祭は【グロ注意】であったが、「TRANSIT」に載っていたバルト三国の夏至祭は、太陽と草花に彩られたなんとも美しい祝祭だった……と、いいたいところだが、やっぱり映画のイメージに引っ張られているせいか、美しいは美しいけれどどこか不気味さもあるお祭りである。あのルーン文字みたいなやつ怖くなっちゃったじゃないか! 伝統的なお祭りにユートピア的憧れを重ねるだけの思想はもう飽き飽きなので、伝統と因習が紙一重であることを気づかせてくれたという意味で、『ミッドサマー』はやっぱりとてもいい映画だったのかもしれない。もちろん「伝統と因習が紙一重」というのは北欧の夏至祭に限った話ではなく、日本を含む世界各地にある伝統にいえることだ。

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さて、夏至祭を見る予定はもともとなかったものの(3月なので)、エストニア国立博物館やラトビアのピルツ(サウナ)やリトアニアの十字架の丘を満喫する気マンマンだった私は、旅行キャンセルによって意気消沈。「TRANSIT」のページをめくりつつため息をつく日々であったが、そんな自分の心を癒すため、「行けないなら買えばいいじゃない!」と、この地域の民芸品に目をつけ始めたのが今年の夏頃である。外苑前にリトアニアの暮らしの道具を扱うお店を見つけ、リトアニアのハーブティー、リトアニアのチョコレート、リトアニアのリネンなどなどを買い集めていく。

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なかでも特に気に入っているのは、リトアニアのかご。

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忘れたけど、たぶんヘーゼルナッツのかごだったと思う。いやちがうか、ぜんぜんヘーゼルナッツじゃないかも(なんだよ)、でもとにかくかごはかごである。かごであることだけは確かである。

お気に入りポイントとしては、このかたち。底が丸いので一見安定しないのだが、起きあがり小法師的な塩梅で、多少雑にものを入れてもよろめくかと思いきやスクっともとにもどるのだ。

リトアニアは自然の豊かな国なのだそうで、首都の中心からでも、車で30分も走ればキノコやベリーが自生する森が広がっているらしい。なんか、わからんけどヨーロッパの都市の作りってそうだよな。人がギュッと密集した「街」はあるんだけど、街と街は森で分断されているというか。東京23区と神奈川県川崎市や横浜市の間が、ちゃんと森で分かれている。それがヨーロッパの都市の作りのイメージ。まあこのへんは浅学にもほどがあるのであまり触れないでおきますが。

リトアニアの人々は、秋になると上のようなかごを持って森へ出かけて、自生するアンズ茸やポルチーニ茸を収穫するのだそうだ。キノコは呼吸しているので、ビニール袋などに入れるとすぐ悪くなってしまう。だから、丈夫なかごを収穫に使うらしい。いや、理屈はわかるが、かごに森でとれたキノコやベリーを入れてお散歩ってどんなメルヘンかと思う。そんなメルヘンかごを、雑に洗濯前のパジャマとかを入れる用として使っていてすみません……。

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(雑にパジャマを放り込んだあとの)ゆらゆら揺れるかごを見つめながら、願いはただひとつ。一刻も早くウイルスによる脅威にこの世界から去っていただいて、再び飛行機に乗って海外に行ける日々にもどってほしい。旅が私の人生においてものすごく(ある局面では、家族や恋人やパートナーなどよりもよっぽど)重要な存在であることはこんな状況になる前から知っていたが、その重みをひしひしと感じ続けるのにももう飽きたというか、まじで、「早く〜!」としか思わなくなってきた昨今である。

かごを持って森でキノコをとるなんてメルヘンで素敵だし、夏至祭も(ミッドサマーのせいでルーン文字が怖いとはいえ)美しいし、バルト三国に住めたらどんなに幸せかしらと一瞬思うけど、リトアニアの自殺率って確か日本より高いし、住んだら住んだで「こんなに夜が長くて寒くて暗くて閉鎖的な街はもう懲り懲りだ」って2年くらいしたら泣き言をいうんだろう。上には上がいるとはいえ、これでもお金と時間を大量に投資して19か国を旅した身だから、この世界に理想の土地など存在しないことはもうわかっている。「何処で生きようと、たいして代わり映えはしないよ」とは、安部公房の『方舟さくら丸』に出てくるセリフ。私はこのセリフが好きだ。

ちなみに私がしょぼしょぼと買い集めているリトアニアグッズは、各地にあるイデーショップで期間限定で取り扱っていることがあります。またなんか買おうかな〜。


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