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イノック・アーデン【ネタバレ少々有り】

 物語詩。
 私たちは、生きている、その時代を越えることができない。
 この物語は、航海の時代を前提にする。
 詩的装置になっているのは、航海である。
 イノックの最期は、読んでもらいたい。
 「行方知れず」のあたりで涙が浮かぶ。
 19世紀でも、語りつぐ物語詩がある。

 この物語詩は、「聖書にかけて誓う」や
 妻のアニイが、フィリップと再婚するには、
 元夫が「死んでいる」ことが条件のように語られる。
 これは、英国国教会の信仰の下にあるといえるだろう。
 物語中の「棕櫚」は「棕櫚の主日」と関係するだろう。
 テニスンは、「棕櫚」を集中的に用いている。
 「棕櫚」を頭の物語の片隅に縛り付ける。
 だから、後々、それが響き合う。
 つまり、アニイは、レントの時に、その聖書箇所に
 めぐりあったのだろう。
 でなければ、神の御旨だと解釈しない。
 復活祭は、常に「死」が先行する独特な祝祭だ。
 イノックが、死んだから再婚できる。
 しかし、イノックは、死なずに生きていた。
 アニイやフィリップからしたらイノックは
 「復活した」のである。
 ラザロのようである。
 この物語詩は、信仰をもって読むとさらに奥深い。

 個人的には、この理想的なプロットで
 数十行の長い現代長歌が書きたい。
 物語詩、この悲劇的な詩に多くを学ぶ。
 英語が読めれば、もっと感動できたんだろうが、
 日本語で同じような物語詩書けるように頑張る。

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