「旧」最新作

 私たち歌人は、最新作が一番愛おしい。
 毎分毎時間、その歌の推敲(思いを致す)をしている。
 それが、どうだろう。
 あの時、あんなに愛おしく接していた
 「旧」最新作は、みすぼらしい姿に見える。
 否、主張が強すぎる。
 私たちの価値観は常に成長している。
 しかし、それが、新人賞と関りがあるかといえば
 分からない。
 意味を詰め込めば、難解になり
 洗練を追求すれば、軽すぎるとなる。

 ただ、「旧」最新作も歌集にする時には、供養ができる。
 私が成長した証として、「旧」最新作がある。

 歌人は、自分に過剰で自分に非情だと思う。
 あんなに愛した「旧」最新作より
 「最新作」の方が、愛おしくて仕方がない。
 それを歌人としての成長というのか
 人間としての価値観の変化というのか
 あるいは、時がそそのかしているのか
 私たちは、どれが正解か分からない。

 それでは、「旧」最新作をどうぞ。

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