Less is more

焼けたパンを聡はしかたなく口に運んだ
早紀はその光景を絵画を見るように愛しんでいた
「脱線事故があったらしい。今日の未明に」
早紀は聡の言葉を読み解きながら彼のエスプリをくみ取った
「そうでしたか。何を急いで生きているのでしょうね」
聡と早紀の時間は確かに穏やかだった。卵が茹で上がるまでに
世界をもう一度創造してしまうほどだった――
新聞を畳んだ聡は早紀を見つめ「Less is more」と呟いた
   反歌
凍った音楽が音を立てて軋む。さよなら機械仕掛けの神よ

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