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使用者責任について・・・・その2

今回は使用者責任の内容をひも解いてみます ~( ^)o(^ )


|問われる責任の範囲は

会社は従業員(被用者)の行為に責任を負うのは、次の4つの要件を全て満たす場合に限られるとされています。

 1 従業員(被用者)に不法行為があったこと
 2 使用者と従業員(被用者)の間に使用関係があること
 3 従業員(被用者)の法行為が事業と関連して行われたものであること
 4 使用者としての免責事由に該当しないこと

これらの4つの要件は、会社が使用者責任を問われた場合に、必ず検討するものです。
4つの要件のうち1つでも該当しないときは、使用者責任は成立しないのです。

以下でそれぞれの要件について掘り下げて説明します。

1 被用者の不法行為
被用者とは従業員のことです。
被用者つまり従業員側に不法行為があったこと場合です。

不法行為とは、故意または過失によって、他者の権利または利益を侵害し、損害を生じさせる行為があったことです。

一例として挙げれば、
・ 過失により交通事故を起こして他人に怪我をさせてしまった
・ 部下にパワハラをして精神的な被害を与えてしまった
というような行為があった場合が、不法行為の典型例になります。

一方、他者に被害が生じた場合でも、被用者に故意や過失がなく、被用者が不法行為責任を負わない場合は、使用者も責任を負うことはありません。

例えば、
・ 従業員が社用車を運転中に信号待ちで停止中に、後続車に追突されて、同乗していた顧客がけがをした
という場合のように、信号待ちなど法令に従って停止していた場合に追突されたことは不法行為とはいえません。
したがってこのような場合には、使用者責任は発生しません。

2 使用関係がある
使用者と被用者の間に「使用関係があること」。
この「使用関係」は、会社と従業員のように直接雇用契約をしている場合が典型的な例です。

会社が使用者、従業員が被用者という関係です。
しかし、それだけでなく、直接の雇用契約がない場合、例えば出向、派遣などのように、使用者が被用者を「実質的に指揮監督する関係」にあれば使用関係にあると判断されています。

使用者と被用者の間に契約関係があるかどうかや、行われる事業が継続的なものか一時的なものか、営利か非営利かは重要ではないようです。

3 事業の執行に伴う行為
被用者の不法行為が、使用者の「事業の執行につき」行われたものであることです。
これは、被用者の不法行為が事業と関連して行われたものであることが要件であることからです。

ただし、この「事業の執行につき」は、就業中に行われた行為や事業のために行われた行為に限定されず広くとらえています。

被用者の行為が、実際に事業のために行われたものであるか、従業員(被用者)の職務の範囲内であるかどうかということよりも、世間一般からみれば事業のために行われた行為だと信じられるだけの外観があれば、その行為は
「事業の執行につき」行われたものと判断される(「外観理論」)のです。

例えば、業務時間外に会社に無断で社用車を私的利用して発生した交通事故や、会社の経理担当者が会社名義の手形を偽造した行為については、いずれも事業のための行為ではあるが、「外観理論」に基づき、「事業の執行につき」行われたものと、裁判所で判断されている例もあります。

4 免責事由の不存在
使用者に免責事由がないことです。
使用者は、「被用者の選任および監督について相当の注意を払ったとき」または「相当の注意を払ったとしても損害が発生したであろうとき」、つまり使用者に落ち度がないときは、使用者責任を免れることができるとされています(民法第715条1項但書)。

しかし、実務上は免責事由に該当するとする事例はほぼなく、免責事由が認められることはないといえます。

(使用者等の責任)
第七百十五条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

|業務委託と使用者責任

前述の通り、雇用関係ではなくても、「実質的な指揮監督関係」があれば、使用者責任が認められることがあります。
業務委託関係の場合に使用関係が肯定された裁判例として以下のようなものがあります。

➤ 委託先の従業員の注意義務違反により発生した交通事故について委託会社の使用者責任が肯定された事例(東京地方裁判所判決平成25年2月27日)

工事業者から委託をうけた警備会社が行った現場の交通誘導業務において、警備員の誘導ミスにより交通事故が発生した事例。
裁判所は工事業者と警備員の間に雇用関係はないものの、実質的な指揮監督関係があったと認定し、交通事故について工事業者の使用者責任を肯定しました。

この裁判例は、実質的な指揮監督関係があったと認定した理由として
 ・ 工事業者が警備員の配置及び配置時間帯を決定していたこと
 ・ 工事業者が警備員に業務について報告書を提出させていたこと
 ・  警備員は事故発生後に最初に工事業者の現場監督に事故を連絡して
  いること
等をあげている。

➤ 暴力団と使用者責任
雇用関係がなくても使用者責任が肯定された著名な例として、暴力団組員による不法行為による被害について、組のトップに使用者責任を認めた裁判例

最高裁は、階層的に構成されている暴力団の最上位の組長と下部組織の構成員との間について、暴力団の威力を利用しての資金獲得活動に係る事業に関する使用者責任を肯定している(最高裁判所判決平成16年11月12日)。

これを受けて、組員らによる特殊詐欺の被害や、みかじめ料の支払い要求による被害について、組トップの使用者責任を肯定した裁判例が多数存在する。

|今回のまとめ

上記のように今回は、使用者責任の範囲について記載してみました。
四つの要件を検討し、責任の有無について検討していくことが大切ですね。
また、業務委託など直接的な使用関係になくとも、実質的な指揮監督関係が存在すれば使用者責任が肯定される判例を紹介しました。
次回は使用者責任の認められない判例などを紹介します。


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