2023.12.9vs長崎 相手の強みを潰す修正

 こちらは、昨日の川辺HCのコメントです。ただバスケットLIVEで放送されたインタビューでは、もう少し具体的に長崎の攻撃の形に言及しており、挙がったキーワードは「トランジション」と「スラッシュ」です。これをどのように修正したのか、考察していきます。


トランジションとは

 トランジションとは「攻守の切り替え」を意味します。

 このシーン(1:52~)では、名古屋DDの齋藤が恐らく得点を上げた直後、長崎が素早く攻撃に転じ、戻りの遅れたDDの面々を尻目にイージーレイアップを決めています。

 こちら(0:38~)は佐土原の得点シーンですが、リングを通ったボールを下に落とさずにボンズがすぐにパスを入れて、長崎がすぐにボールを運んでいることが分かります。他のFEの得点シーンでも、長崎の素早いトランジションを警戒し、急いで自陣に戻っている様子が伺えます。

 このように、平均得点数リーグ2位(12.10時点)である長崎の高い攻撃力を支えている1つが、この素早いトランジションなのでしょう。昨日の試合でも、特に2Qでは随分と速い攻撃が多くみられ、FEもそれに呼応して展開が速くなっていたように感じます。
 FEとしては「堅い守備から素早い攻撃」を1つのねらいとしていますが、このような走り合いは望んではいなかったのではないでしょうか。

FEの修正① ハリーバック

 書いてみれば当たり前のことですが、素早いトランジションに対応するには、ハリーバック=素早く戻る、が必須です。昨日のGMさんによるナイスプレーでも取り上げられていますが(0:57~)、このシーンでは最終的にシュートに関わっていない自陣に近い位置にいる笹山が、相手の速攻を予測して急いで戻って(=セーフティ)います
 また、3Q4:18には馬場のドリブルを相馬がファウルで止めるシーンがありますが、直前に佐土原が3ptを打った時には相馬は既に自陣に戻り始めており、その甲斐あって馬場のドリブルの突き初めにはうまく対応できています。

 このように、オフェンスリバウンドに絡まない選手は急いで自陣に戻ることを、ハーフタイムに確認したのではないでしょうか。

FEの修正② 2-2-1プレス

 今シーズンもFEの武器の1つとなっている2-2-1ゾーンプレス、前半はおそらく殆ど使っていなかったと思いますが、後半には多用しています。(※こちらは11/12三河戦;0:50~)
 ゾーンプレスにも前からガンガン取りに行く攻撃的なものと、相手に時間を使わせるのが主目的であるものとありますが、FEのゾーンプレスは後者のものです。①のように素早い相手の攻撃に備えるために早く戻る、という選択肢もありますが、その場合相手がフロントコートまで運ぶのにノープレッシャーになるため、相手にスピードに乗らせてしまい、そのままシュートまで行かれてしまうことも多いです。
 それに対しゾーンプレスは、コートに等間隔にディフェンスを配置するため、スピードに乗ったドリブルをすると次のディフェンスに当たり挟まれてしまいます(=ダブルチーム)。なので、ゾーンプレスを攻略するにはパスが主体となりますが、ただ焦ってパスをしてもスティールを狙われてしまうので、オフェンスはディフェンスの出方を見ながら攻め込む形となり、自然攻撃のスピードは失われてしまうのです。

 なおゾーンプレスは、基本的にはライン外からのスタート時しか敷けないので、シュートをミスした時は①ハリーバック、シュートが入るかファウルやバイオレーションなどでプレーが切れたときは②ゾーンプレス、という使い分けになります。4Qは長崎のファウルが溜まり、フリースローを多く打っていたので、ゾーンプレスを敷きやすい状況ではあったと思います。

スラッシュとは

 スラッシュは、「リングに向かって鋭く切れ込むカット(走りこむ)のこと」を言います。(参考:https://sufu.lifull.net/glossary/1106

 このシーンでは、杉本とボンズのミスマッチを警戒したオマラがペイント内に残り、オマラがついていたパーキンズを笹山がケアした瞬間に、本来笹山がついていた松本がスラッシュしてイージーバスケットを沈めています。

  エンドラインから見た景色なので分かりにくいですが、このシーンではPnRによってミスマッチになったパーキンズにヘンリーが対応したため、フリーになったボンズに飛び込まれています(=タグダイブ)。

FEの修正③ 収縮と拡大

 このスラッシュに対してFEが施したのは、ボールに関わっていないディフェンスがインサイドに寄る収縮と、その後ボールが外に出たときにすぐに広がる拡大を繰り返すことです。
 4Q6:25、最終的にはJJが松本をブロックして終わるこのシーンでは、この収縮と拡大が顕著に行われています。
 ブラントリーのドリブルに相馬が押し込まれそうなのを見た笹山がケア、笹山が本来ついていた狩俣が中に近寄って来るのを見て佐土原も中に寄ります。またオマラやJJもそれぞれインサイドを気に掛け中に寄り、結局は5人が全員ペイントゾーン付近に寄っています。
 ここで大事なのが、JJやオマラが常に脚を動かし、外へのパス(=キックアウト)へも対応しようとしていることです。長崎としてはこの収縮は3ptを打つチャンスでもあるので、外でパーキンズや松本が待ち構えていますが、それをさせまいと意識しているわけです。

 また、4Q4:49からの馬場のドライブの時は、笹山はほぼ全くポジションを替えることなくパスをカットしています。これは、敢えて馬場を中に誘い込み、オマラと佐土原がインサイドのスペースを潰しつつパスコースを限定することで、ウィング辺りにパスが来ると笹山が読んだからでしょう。狩俣がトップに移動していても全く釣られる素振りを見せていません。
 この、相手のスクリーンにスイッチをせず敢えて中に誘い込む守備は、前節の渋谷戦でも見せていました(試合中に石崎さんが解説しています。解説うますぎ。)

 ヴェルカの前田HCの「明日は一つひとつのプレーや1試合通して我々のスタイルを表現し、それを止めに来る対戦相手を上回り、相手が対応してきたものに対して、また上回っていきたいです」というコメントを読むに、今日の試合は改めてスピーディーに走り回り、また果敢に中に飛び込むスタイルを徹底するのではないでしょうか。FEとしても、それを上回る #FEintensity を見せて勝利を収めてもらいたいですね。Go!Eagles!

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