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Walesでもらった、いちばん大切なもの

WooferとしてのPenpontでの滞在は、4月から5月末までの2ヶ月と決まっており、それが終わったら、8月に帰国までの残りの約2ヶ月間をどう過ごそうかと悩んでいました。再度、今回の渡英の目的を振り返ってみると、それは”トレイルランニング”。

でもただ自分が走るだけではなくて、”何か新しいことに出会えることをしたい”という気持ちから、イングランド北部に拠点を置くトレイルランニングメーカーに、インターンとして働けないか思い切ってオファーしてみることにしました。

英語力はビジネスレベルには程遠いけれど、日本でのアウトドアメーカーで働いた経験と熱意があれば、なんとかなるのではないかと。CVを作成して、仲良くしてくれていたガーデナーに英語を添削してもらい、思い切ってメールを送りました。

1週間ほど時が経ち、返信がきたその結果は「不採用」。
理由は「インターンとしての滞在期間が君が帰国するまでの4ヶ月だけでは足りない」(おそらく英語力も足りない)ということでした。

うーん、それはごもっとも。仕方がない。
じゃあヨーロッパ旅をしつつ、WalesでまたWooferを募集しているところを探して移ろう。そう決めつつも時があっという間に過ぎ、とりあえずフランスを旅してくるとPenpontを後にしました。

31歳にして、なんとも地に足がついていないフワフワとした生活になったものだと思いつつ、もうこんな経験はできないだろうと、実はワクワクもしていました。そして数日フランスのリオンに滞在していた時のこと。PenpontのホストのGavinから突然メッセージが来ました。

「あなたの次の職場が見つかったから、帰ってきなさい!」と。

よくよく聞いてみると、なんとGavinは近くの町にあるアウトドアショップへ行き、こんな日本人がいるからここで働かせてあげてほしいとオーナーに直談判しに行ってくれたのです。そしてそのオーナーも、インターンでよかったら来てもいいと承諾してくれたのです。

私は信じられませんでした。年間を通して世界中から数多く来るWooferの中のただの1人である私のために、そんなことまでしてくれたことが。

驚きと嬉しさの気持ちを抱えつつすぐにWalesに帰り、Gavinにお礼を伝え、ショップの近くで住めるところを探すから、その間少しだけ滞在させてもらえないかお願いをしました。

すると、

「いや、君はこのままここで暮らしていいんだよ。部屋だけは息子の使っていた部屋へ移動して欲しいけど、それ以外は今のままの暮らしでいいんだ。うちで暮らして、朝ごはんを食べてからバスに乗ってアウトドアショップへ行き、帰ってきたらこれまで通り一緒に晩御飯を食べて、お風呂に入って寝なさい。」

と、娘を諭すような優しい口調で答えてくれました。
それは申し訳なさすぎるので、せめて家賃や食費を払いたいと申し出ましたが、決して受け取ろうとはしてくれませんでした。そんな彼らの厚意に甘え、私は引き続きPenpontに居候しながらアウトドアショップでインターンをするという、全く予想もしていなかった生活がスタートすることになりました。

後に、Gavinと奥さんであるVinaになぜそこまでしてくれたのかと尋ねると、「好きなことに一生懸命になっている人がいたら、応援したくなるものでしょう?」とあっさり。

2人は、私が毎日Walesのフィールドを駆け回ったり、レースに出たり、そしてさらに(ほぼ無謀と思えるような)トレイルランニングメーカーへのインターンに挑戦したりしている姿をしっかりと見ていてくれたのでした。

なんだか「あぁ、このままで、ありのままの自分でいいのか」と思いました。好きなことに真っ直ぐに向かっていれば、自然と人は見ていてくれるものなのだと。そして、いつか今度は私が誰かを全力で応援してあげられる側の人間になりたい、とも強く思ったのです。

誰かに優しくされたら、今度は自分が他の誰かに優しくしようと思える。そんな循環を、体感できた瞬間でもありました。この出来事は私の大切な体験として一生残っていくものだと思います。

そして、この彼らの素敵な計らいが新たな出会いや経験へと私を繋いでくれたのでした。


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