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イギリスで”アナリスト”として活動していくための進路

前回の記事と少し被る要素がありますが、今回はアナリストに特化した進路を考えていきます。マニアックなテーマとなっていますが、イギリスで勉強してアナリストになるというかなり不透明なところを掘り下げて、普段あまり触れられない部分を時系列でまとめていこうと思います。

尚、前提として僕はプレースメント(インターン)などの真っ最中でフルタイムの仕事を獲得するにはまだまだ長い道のりがあります。なので「これやっとけば絶対にフルタイムのアナリストになれる!」みたいな内容は含まれませんが、僕や先輩方の経験談、他の大学の方のLinkedinを参考にしているので、少しでも進路のイメージが湧いてくれれば幸いです。

この記事を書こうと思ったのも、ここ最近自分自身が進路について悩みに悩んでいた経緯があります。僕たち留学生は大学が終わる3年間の間に仕事を見つけなければいけません。なのでイギリスの人とは違ってフルタイムの仕事に就くために最短ルートを探す必要があると個人的には考えています。大学2年目に差し掛かってインターンの仕事を取捨選択しなければならない今、僕にとってもアツいトピックなのです。

1、「なんでもする」期

どんなに良い職に就いている人でもまずは一番下のレベル、グラスルーツから始めなければなりません。地元のクラブや学校などでコーチやアナリストとして活動してもいいですし、Twitterで分析のコンテンツなどを積極的にアウトプットしていくのも一手です。

自分はサウスウェールズ大学に入学する前、地元の高校でボランティアのアナリストとして活動したりコーチングのコの字も知らない時に少しだけ出身中学校でお手伝いをさせてもらいました。高校では教育実習のような選択科目も受け、様々な失敗を経験しましたがとにかく「当たって砕けろ」の精神でできることを探していました。

高校でアナリストをしていたときはこんなプレゼンを試合後に用意してました。

早めに経験を積めば積むほど大学に入学してから負担が少なるのはたしかです。他の人よりコーチングや分析のスキルに優れていればそれだけ教授や同級生から認められますし、後々より多くのチャンスが巡ってきます。早期から高いレベルのプレースメントを獲得できれば、その分卒業後に選択肢が広がるのは言うまでもありません。

昔エクセルやパワポでTwitter用に作ったシンプルな素材ですが、分析のクラスのプレゼンなどで有効活用できました。一見無駄に思える作業もやってみて損はありません。

しかし、どれだけコーチングや分析に優れていても積極性がなければ成り立ちません。僕の学年でも複数のプレースメントを兼任している人もいれば、いまだにどこのチームとも働いていない人もいます。前者が必ずしも優れているわけではありませんが、1年の間だけでも大きな差はついてしまいますし、経験のある人の方が重宝されます。

去年フットボールコースを首席で卒業した方とズームで対話する機会があったのですが、とにかく色んなプレースメントを経験するように強く語っていたのがすごく印象に残っています。その先輩は1年生で大学の6軍チームの撮影を自主的に行い、最終的には卒業後バーンリーのトップチームからアナリストのオファーをもらうまでに至りました。

加えて、スキマ時間などで取り組めるTwitterやLinkedinは仕事にもつながる可能性のあるツールです。今や大きなプラットフォームですが、現場で働いている人の母数と比べるとまだまだマイナーで有効活用する余地のある分野です。定期的に投稿するだけでも印象アップにつながりますし、過去に作ってきたレポートなどを提示するときに役立ちます。SNSでセットプレーコンサルを始めた現チェルシー女子トップチームアナリストなどの例があります。

(上:USW卒業生で現シティグループのコーチ兼アナリスト 下:現チェルー女子トップチームのアナリスト)

2、将来を見据えて仕事を絞る

「1、「なんでもする」期」を経て、気づけばフルタイムの仕事に就くための準備ができている人もいます。しかし、今や大多数のイギリスのチームが学位を保持した新入りを求めている中、学業とプレースメントの両立を図るにはプレースメントの取捨選択が求められます。前述したように僕自身が直面していた問題です。

嬉しい悩みと言われればその通りで、たくさんのチームからアナリストとして働いてほしいとオファーされるのは光栄なことです。街クラブ規模のアカデミーでさえアナリストを欲している今、需要は高まりつつあります。ですが、自分のキャリアを考慮して最善の選択をしなければいけません。

様々な調査をした結果、このキャリアを考える上で非常に重要な指針となるのが「直接トップチームに入団するのか、アカデミーレベルから入団するのか」です。どちらも難易度的には非常に高いですが、順を説明していきます。

直接トップチームに入団したい場合はもちろんのことながらトップチームでの経験が求められるので、インターンを介して積み上げていくのが主流です。インターンから直接フルタイムとしてトップチームに採用なんて例も珍しくはありません。トップチームで働くには最短ルートであるのは確かでしょう。テレビでよく流れている光景にスタッフとして参加できるのはアナリスト誰しもが夢みるものです。

しかし、この手段にはハイリスクハイリターンな面があると考えています。1つのリスクとして挙げられるのが高い競争率です。当然ながらマンチェスター・ユナイテッドのトップチームアナリスト(インターン)の応募などには学生であれど大勢の敏腕アナリストが殺到することでしょう。それは時に非現実的であり、広い視野をもちながら異なった進路を考えていることが重要です。

仮に英3、4部のチームにインターンとして加入できたとしましょう。それでも競争度的にはものすごく高いですが、まだ現実味があります。プロの環境で密接に働けるのはかけがえのない経験ですし、将来的にトップチームで働けるチャンスが高まります。

英4部のトップチームでのインターン応募

ですが、この場合不安要素となるのが後述するビザについてです。簡潔にまとめると、2年間はとあるビザでフルタイムを獲得したチームで働けるのですが、本格的な就労ビザを取ろうと思うと一定以上の給料をもらったり、雇用主(チーム)にスポンサーになってもらう必要があります。そう考えた際に3、4部のトップチームであれどビザ面でのサポートがしっかりしているかと言われると疑問点が残ります。

そこで浮上してくるのが後者のアカデミーアナリストとしてフルタイムを獲得する方法です。これでいくと、1つのクラブで内部から年代を追って上へ上へと上り詰めていくのがよくアナリストの辿る進路となっています。プロの環境とは密接に関われないものの、アカデミーもかなり競争力の高いリーグやスタメン争いの中で活動しています。さらに、アカデミーでは年代にアナリストが専属でつくことが多いので、より個別の選手に影響を与えやすいのもトップチームと関わる上では感じられないメリットの一つとして数えられます。

大学卒業後に直接トップチームに参加する方法よりは規模の大きいクラブに行きやすくもなるため、ビザ面でのサポートも充実しているのかもしれません。ここは希望的観測になってしまうのですが…

何にせよ、この2つの進路を考慮しながらその時と場合によって自分のキャリアプランと見合ったプレースメントを選んでいきます。例年ではあまり見ないプレースメントが応募可能になっていることもあれば、その反対も容易に有り得るのがプレースメントを探す上での常なので、ここでも周りの状況に敏感であることが必要です。

身の周りの同級生や先輩方の話を聞いたりLinkedinなどで公開されている情報を見る限り、良いコーチングのプレースメントとアナリストを1つずつ兼任している人が多いように感じます。プラスαでもう一つプレースメントを増やす人もいますが、プレースメントが多いことが必ずしも良いとは限りません。それぞれの現場で結果を出すのが最優先なので、その人に合った進路を考えることが必要不可欠です。

3、Graduate Visa でフルタイムの仕事を狙う

大学3年間の終わりに近づくにつれて、フルタイムの仕事を狙う準備に入っていきます。その段階で無視できないのが前述したビザの問題です。サッカー関係の仕事に就くことを目的とした就労ビザ(Working Visa)を取得するには主に3つの条件に注意しなければなりません。

1、年収£25600以上、または職業の種類ごとに定められた年収以上
2、雇用主にスポンサーになってもらうこと
3、スポーツパーソンではないこと

これらは、卒業後すぐのコーチやアナリストには難しい条件となっています。まず初年給が1の規定を満たすことは難しいのと、2に関しては競争率が高いフルタイムの仕事でクラブ側が新人を採用する際にスポンサーになるまでのコミットができないことが挙げられます。

3の項目はアナリストにとってグレーな範囲であり、コーチやスカウトはスポーツパーソンとして定義され、また別のビザ(International Sportsperson Visa)の入手が明記されています。ただし、アナリストの場合スポーツパーソンとして分類されないこと多いみたいです。

そこでつい昨年導入されたのがGraduation Visa といった新たなビザです。これで2年間働くことが可能となり、その間にクラブで信頼を築くもよし、日本での仕事を探すもよし。何にせよ今までになかった豊富な進路の可能性を与えてくれるのは確かです。

最新のビザということもあり、Graduate Visa からWorking Visa に移行できた前例はありませんが、今後の注目ポイントであるのは間違いありません。さらに深く知りたい方は英国政府のサイトを訪れることをお勧めします。


おわりに

いかがだったでしょうか。最初にも記述したようにマニアックなテーマでしたが、まだまだアナリスト育成に改善の余地がある日本サッカー界の中これを機にアナリストに少しでも興味をもっていただけると幸いです。

更にリサーチを進めたい方はこの記事でも再度登場したLinkedinを使ってみることをおすすめします。検索バーから適当にプレミアなどのクラブを検索し、”People”のボタンを押すとそのクラブで働いているスタッフの大勢が検索結果に上がってきます。そこからアナリストを探し出しキャリアを追ってみることができます。

自分自身今は3つのチームと同時にアナリストとして活動しているのでメールを整理するのにも苦労している段階ですが、周りの人に相談しながら最適なプレースメントを選んでいきたいと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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