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『世界地図を読み直す』を読んで

本書はこちらの本を取り上げてみる。最近は、大学時代に好んで読んでいたようなジャンル(政治や外交や歴史)をよく読むようになっている。仕事に疲れているのだろうか。

日本の「草の根外交」と呼ぶべきだろうか、発展途上国におけるJICAの活動は、日本のプレゼンス向上に一役も二役も買っている。
本書はそのJICAの理事長を務め、過去には国連大使も務めた北岡伸一氏が著している。専門は日本の近代外交史(の講座を持っていたから多分そう)の学者出身。

内容は、著者がJICAの理事長として(或いはその過去の体験に基づいて)訪問した国々を各地域ごとに取り上げる形で、日本との関係を見つめなおし、日本の世界におけるプレゼンスを捉えなおす本となっている。

総じて(JICA理事長としてのポジショントークもあるが)発展途上国における日本の印象は良く、そういう「ソフトパワー」をうまく活用して以下ならければ行けないという論調。ただ、中国の影はアジア・アフリカ地域を中心に非常に大きいものが有るというのも実体験として語っており非常に説得的。
あと、個人的には(お恥ずかしい話で)知らなかったが、日本は、アパルトヘイト政策時の南アフリカにおいて「名誉白人」となっていたため、南ア以外のアフリカ諸国の受けがあまりよろしくないということ。なるほど、そういう考えもあるのか、こういうのは中々知ることは難しい…。

日本国内の経済情勢も厳しい中、こういう海外援助というのは、ややもすると予算削減のやり玉にあがりがちかもしれないが、こういう海外援助の意義を確り伝える本というのは貴重である。日本のプレゼンス向上には少なからず役に立っているのだろう。

また、この本では(ロシアは取り上げられていたが)日本の安全保障の観点からも非常に大きな存在であるアメリカ、中国、韓国、北朝鮮は直接的に取り上げられていない。あくまでその周辺の発展途上国の情景を通して、それらの国のプレゼンスや日本の立ち位置を表す形に終始している。この表現も読者に考えさせる余地を与えている点で非常に興味深い構成。
気になるのはアメリカってモンロー主義の考えがまだ残っているのか、アフリカへはあまり興味ないのだろうか、という点(人道支援は国連を通して行っているとしても)。インフラ整備やらそういうのはやはり中国のプレゼンスが非常に高いことが読み取れる(或いは日本と同じで白人国家のイメージが強く、アフリカ諸国から嫌われているのだろうか)。

以上、色々考えさせる本であるので、国際政治に興味があったり、特に外交官に興味ある人にはお勧めしたい本である(国連大使時代の経験も相応に載っており、外交の機微の一端を感じることが出来る)。

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