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本の感想 「ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち」 ニーナ・シック (著), 片山 美佳子 (翻訳)

インターネットなどで情報を収集するときに、「間違えた」情報をつかみたくない…という思いがあります。でも、どうしたらいいのかなぁということで、新聞で紹介されていた「ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち」を読んでみました。

世界中で起きている事件の背景が紹介されているので(知らないと自分も巻き込まれて危険だよ!と)、人に話したくなる内容の本でした。

ニセ動画が簡単につくれるようになっている

「ディープフェイク」は、AIによって、顔の差し替えなどを行った動画。技術の進歩により、「差し替え」ではなく、動きそのものもAIによって作り出されてしまえば、「動画は正しい」と判断しがちな、私たちの脳は簡単に騙されてしまう、という話。恐怖でした。このオバマ氏がニセもの?

参考: この問題に対抗するエンジニアのTED Talk

認識の修正は難しい

さらに怖かった話は、「1度だまされると、ずーーーっと、それが正しいと思い続けてしまう」ことが多いということ。ニセ情報だったと、証明された後、数十年経っても、一定数の人たちは、「ニセ情報」であったことを知ることなく、「真実である」と信じ続け、それをまた、人に伝えてしまいということが続き、「真実が曲がってしまう」ということ。それを仕組んでくる国家や政治家がいることが怖い!

政治目的や儲けたいという気持ちでバラまかれるニセ情報

折しも昨日(2022年1月6日)は、アメリカの議会襲撃事件から1年。この本の中で、政治目的で作られた、ニセ情報やミスリードしやすい情報提供によって、国民が分断されることが仕組まれ、その結果、暴動が起きるかもしれない、という話が現実のものとなっていて、予見できる人たちはいるのに、防げない争いがあるのも怖かったです。。
昨日(2022年1月6日)のニュースで、あの事件を「民主主義の汚点」を考える米国民が多いけれど、その理由が信じてる政党によって、その理由が異なり(議会で暴力がふるわれことに対してではなく、選挙に不正があったことが問題で襲撃の動機は間違っていないと考える人たちが今もいる)(=認識の訂正は難しい)、その溝が埋まらないことや、今後も、選挙に対する不信感が残り続けるということが伝えられていました。アメリカはどうなってしまうんでしょうか。

善意でニセ情報がSNSを通じて急激に広がる

インドの例などは、情報をミスリードしたり、勝手に解釈したりして、SNSで急激にニセ情報が拡散し、善意からくる怒りで、人を殺してしまうという痛ましい事件も起きたことなどが紹介されていました。

と、他国のことですが、日本もコロナとオリンピック開催の問題で分断が起きていましたし、ある程度、日本も分断を仕組まれている部分があるのでしょうか…。(議論することを逃げていると言われるかも…ですが…>_<)

第7章 まだ、希望はある

この本を読んだ動機、「どうしたらいいのか?」。
1現状を知る、2守備を固める、3反撃する。
2の守備では、3つの取り組みが紹介されていました。1つ目は「正確な情報」を得る方法として、「ファクトチェック」など。2つ目は「技術的」対処法で、ニセ動画を検出する技術の開発が進んでいることや、撮影された動画や写真が作成された日時・場所を証明するウォーターマーク(透かし)を人権団体が使用していることなどが紹介されていました。3つ目「社会全体での協力」では、安全と自由とプライバシーのバランスを取ることが非常に難しい中、消費者団体、大学や企業などがニセ情報についての観測を行っている例などが紹介されていました。
3の反撃では、「エストニア」の例が紹介されていました。電子政府が進んだ背景にはロシアからの攻撃という側面もあったなんて知りませんでした。

この本を読んで、違う意見があるのは当然という寛容さと、SNSでつたわる情報はそもそも正しさは担保されていないということを認識することの大切さ、あとはそういう取り組みをしている人々をサポートする大切さを知ることができました。

この本ではじめて知った言葉・サイト

インフォカリプス

2016年にアビブ・オバティアが作った言葉。情報(imformation)と世界の終焉(apocalypse)を組み合わせた言葉。

This Person Does Not Exist

GENによって生成された、実在しない人の写真

あー怖い。

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