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溺れながら泳ぎ方を体得する【編集スパルタ塾第10期】

相反する感想

2023年3月28日およそ1年間に及んだ編集スパルタ塾第10期が終わった。

心に浮かんた感想は相反したものだった。

「やっと終わった・・・」


「もっと受けたかった・・・」

 編集スパルタ塾は非常にタフな講座である。
ゲスト回と呼ばれる講義では、一流クリエイターの講師が直面している今の課題に生徒たちが自らの力でリサーチして各々の解をプレゼンする。

第10期のガイダンスはこちら。

 受講生のほとんどは社会人なので、それぞれの仕事の合間に、課題を仕上げることになる。土日の予定は大きく削らざるを得なくなった。それだけではない。課題が難しく、いくら考えてもいい答えが思い浮かばないのだ。

 海で溺れたようにながら自分なりに作り上げたプレゼンは、次の講義で鋭い指摘を受け、たどり着かなかった岸辺がいかに遠かったのか思い知らされる。
「やっと終わった・・・」という感想はその辛さから逃れようとしていた安堵の声だったのだと思う。

「もっと受けたかった」の理由

 では、「もっと受けたかった」というのはどういうことか。

 手取り足取り教わりながら、課題をこなすのではなく、半ば溺れながら必死に生き延びるために手をかき足をかく。
 そうしたトレーニングを繰り返すことで、年度の終盤には自分の提案がどこまでたどり着いているのか、どこに発想の飛躍があるのか、本質をつけていないのか、なんとなく分かるようになっていた。

 だからこそ、問題提起から一歩先の自分の「企画」の発想に物足りなさを感じていたのだ。優れた編集物や企画は、有無を言わさぬ力がある。
 問題提起や考え方そのものが本質を突いているからこそ大きなインパクトをもつのである。

 あと少し、もう少しやれれば、そこに到達できるのではないかと感じていたのだ。

 課題がどんなものだったのか、この塾でMVPを取るコツなどは「編集スパルタ塾」で検索してたいただくと多くの受講生のレビューが読めると思う。

大事にした姿勢

  • 言い訳をしないこと

  • 課題から逃げないこと

 まずは全ての課題を出すことを自らに課した。これがやってみると大変である。仕事をしながら、土日を中心に課題に取り組む時間を持ち、パワーポイントを作る。

 また、その問題提起は本質を突いているのか、もっと優れた企画を作ることができるのではないか、月曜日の締め切りの瞬間まで考え続けた。

 課題は毎回多岐にわたる。お題そのままでは突破することが難しいものもあってついつい逃げたくなるのだが、そこはあえて真正面からぶつかることに決めた。

「自分のひらめきに期待するな」
 菅付先生のこの言葉は、かなり響いた。

 答えがないからと悶々とするのではなく、まずはリサーチ、自分事化する、そして発想を極端なものに「飛ばしてみる」など「考えること」をやめないことが大事なのだと回を増すごとに学んでいった。
 何者でもない自分でもできることはあるのかもしれない。そんな風にも思えるようになった。

MVPを取れるとするなら

 結果的に私は10期のMVPを受賞できた。
もし、評価されたポイントがあるとしたなら継続力だろう。(ゲスト賞をいただけたのも1回だけ)

とにかく必死に向き合い課題を提出し続けた。
(実はシンプルに貧乏性なので発表できないと講評が受けられずお金がもったいないという発想だった)

 しっかりとリサーチして、安定したものを出すということも実際のビジネスにおいては大事であるし、そこを管付先生は見てくれているのかなと思う。

 「スパルタ」と題されてはいるが、管付先生はひとりひとりの発表や思考のいいところを見つけてくれて、改善点もしっかり指摘してくれる愛のある方だと思った。

受講のきっかけ

 受講のきっかけは私の職業、「記者」として抱いていた違和感だった。

1次情報を得るために食い込む取材、映像と文章で分かりやすく伝える。

しかし、報道はきちんと伝わっているのだろうか。答えはイエスでもありノーでもあるだろう。

 講義を受けるにつれ、「クリエイター」は、伝えることだけでは不十分、触発することが大事だと感じさせられた。

 元報道記者で現在はドラマをプロデュースしている友人がいるが、彼が常々「社会問題をエンタメで伝えたい」といっていた意味がやっと分かった気がした。

挑戦した成果は十分なほど

 クリエイティブディレクター菅野薫さんの課題では日本発でグローバルデビューするボーイズグループのコンセプトを考えるというものがあった。

講評で菅野さんは、

「何に対して共感するかの設計まで提案すべし」
「何にみんな感情移入して共感するのか」
「みんなが何を突破するのか何と戦っているのか。どのような普遍的な気持ちに寄り添うのか」

菅野薫さん

というようなことをおっしゃっていた。(すごくざっくりした手元のメモなので間違っていたらごめんなさい)

今の社会で何が起きているのか
人々が何を感じ、潜在的に何を欲しているのか、
私たちはこれからどこへ向かっていくのか

 こうしたある種の社会を読み解く感覚が「編集」には求められている。
 私にもこの感覚はあったし、こうした感覚を生かしていくといい企画ができるのではないかと感じた瞬間だった。

 そして私はこのたび転職を決断した。登山や自転車の雑誌を発行している会社だ。(転職活動中、編集スパルタ塾を受講しているというと、とても関心を示された!)

 趣味でもある登山や自転車を通じて、もっと多くの人の生活を心身ともに豊かにしたいと考えている。
 それだけではない。

 アウトドアのフィールドで起きる様々な社会課題や、安易な線引きによって起こる分断、対立こそ、さきほどの「感覚」を使って解決できることができるのではないか。(つまり編集力を使う!)

 新しい仕事ではそういったことにも挑戦していきたいと思っている。

編集スパルタ塾は「溺れながら泳ぎ方を体得する」場だった。
 受講後、なんとか少し犬かきができるようになった私はとにかく編集スパルタ塾に感謝でいっぱいである。


第11期の案内はこちらに。


もし何か質問などあればこちらへどうぞ。


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