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”起業家の発想”が教育を変える? 「BeYond Labo #62」イベントリポート

6月9日、サイボウズ東京オフィスにて「BeYond Labo #62」を開催!
サイボウズの楽校からは、理事長の中村龍太(以下、龍太さん)と代表の前田小百合(以下、前田さん)、カリキュラム制作と授業を担当する慶徳大介(以下、慶徳さん/株式会社3rdschool)が登壇しました。

「BeYond Labo」は学びを通してBeyondを味わうコミュニティ。これまでもさまざまなイベントを開催されています。BeYond Laboについては以下もご覧ください。

今回のテーマは「学校と先生とエフェクチュエーション」。教育や学校の関係者を中心に40名以上からお申し込みいただきました。
会場は日本橋にあるサイボウズ東京オフィス。軽食も用意されており、飲食をしながら和気藹々とした雰囲気で始まりました。

教育現場にも活きる? エフェクチュエーションとは

最初に龍太さんが、エフェクチュエーションについてお話。龍太さんは昨年8月30日に発売された日本初のエフェクチュエーション入門書『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』の著者の一人です。

サイボウズソーシャルデザインラボ所長・サイボウズの楽校理事長 中村龍太さん

エフェクチュエーションとは、インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が、著書『エフェクチュエーション:市場創造の実効理論』のなかで提唱した理論で、熟達した起業家たちが実施している意思決定の手法です。
大学院の講義も担当する龍太さんが、普段7〜8コマに分けて実施する内容をギュギュッと凝縮してお届けしました。

龍太さん「エフェクチュエーションは、不確実性の高い環境において起業家が行う意思決定の論理です。エフェクチュエーションには相対する『コーゼーション』という言葉があります。」

コーゼーションは目的を最初に設定し、その実現のために必要なリソースを揃えること。事業計画書を作り、それに基づいて製品づくりやプロジェクトを進めていくやり方です。ビジネスシーンではこちらの方が想像しやすいかもしれません。しかし、私たちサイボウズについて龍太さんは…。

龍太さん「実はサイボウズという会社、僕も入って10年が経つのですが、コーゼーションで製品が作られたことがないんです。サイボウズはエフェクチュエーションで成り立っている会社なんです。」

コーゼーションと対になるエフェクチュエーションには以下の5つの原則があり、紹介しました。

・手中の鳥の原則(Bird in Hand)
・許容可能な損失の原則(Affordable Loss)
・クレイジーキルトの原則(Crazy-Quilt)
・レモネードの原則(Lemonade)
・飛行機の中のパイロットの原則(Pilot-in-the-plane)

エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」

この5つの原則は、たとえ結果が予測できなくても、 自らがコントロール可能な活動に集中し、プロセスを回し続けることの大切さを示します。(各原則について詳しくはこちらの記事もご覧ください!)

これらの原則をもとに動き続けることで、私たちが思いもしなかったような新しい製品・事業・市場へと可能性を広げてくれるのです。

龍太さん自身も複業家として活動している中で、スペイン料理のパエリアに出会い、そこからパエリアづくりを生かしたエフェクチュエーションのワークショップや、パエリア専用のお米づくりなどさまざまな事業に繋がった具体的なエピソードを交えて紹介しました。

サイボウズソーシャルデザインラボ所長・サイボウズの楽校理事長 中村龍太さん

龍太さん「私が責任者をしているサイボウズのソーシャルデザインラボという部署ではさまざまなプロジェクトを行っていますが、これらもまさにエフェクチュエーションで活動を進めています。吉祥寺で開校しているフリースクール『サイボウズの楽校』もその1つですね。思いだけで突っ走っています(笑)。今自分の手元にある資源を生かし、活動の中での出会いを大切にワクワクする学び場作りを行っています。」

サイボウズの楽校のやり方は、なかなかそのままでは公立学校で取り入れにくい手法かもしれませんが、参加者の皆さんはメモをとったりスライドの写真を撮ったりしながら、熱心に話に聞き入ってくださっていました。

◾︎教育にもエフェクチュエーションを

次に慶徳さんと、BeYond Laboの主催者で練馬区の小学校教員・二川佳祐さん(以下、二川さん)が登壇しお話しました。

慶徳さんはもともと小学校教員で、東京都の新宿と小笠原諸島の父島で勤務した経験があります。

株式会社3rdschool/サイボウズの楽校スタッフ 慶徳大介さん

慶徳さん「教師の仕事が好きで、小笠原も最高で本当は辞めたくなかったのですが、現在は株式会社3rdschoolの運営をしています。この3rdschoolという名前は、サードプレイスにかかっていて、家庭が第1、学校が第2とした上で『第3の学びの場所を作りたい』という思いをこめています。今はサイボウズの楽校にも携わっています。」

慶徳さんと二川さんは、教員という立場から教育を熱く語れる仲間で、お互いに切磋琢磨している関係とのこと。

二川さんもエフェクチュエーションの本を読んでいるそうで、BeYond Laboのような居場所を作り、小さく始めた活動がこうして広がっていくのがとても嬉しいと話していました。

習慣や伴走・継続が好きだという二川さん。エフェクチュエーションを生かし、実践・活動をされてきたそうです。現役の教員である二川さんのエピソードを聞いて、参加されている学校関係者の方々にとってもエフェクチュエーションが身近なものに思えたのではないのかなと感じました。

BeYond Labo主催者/練馬区 小学校教員 二川佳祐さん

◾︎目的の定め方、継続の仕方…。エフェクチュエーションを身近にする、参加者との”対話”セッション

最後は龍太さん、二川さん、慶徳さんに前田さんが加わり、4人でのトークセッションが行われました。
参加者からもkintoneで質問が寄せられており、それに答える形でセッションが始まりました。いくつか抜粋してご紹介します。

セッションの様子

質問『エフェクチュエーションでは目的はどのように定まっていくのか?』

参加者からの質問

この問いは、エフェクチュエーションを実践してこの場を作った二川さんに振られました。二川さん、いかがでしょう?

二川さん「目的は……ないです(笑)。この会を開いているのも、今が楽しいというのが一番大きな理由ですね。今を楽しむために、より良くする、幸せに生きることしかないですね。」

この場を楽しみながら語ってくださった二川さん

龍太さん「エフェクチュエーションを語り出すと、この辺は禅問答になるんですよね。僕の解釈だと、最終的な目的と、今二川さんから出たような『自分がしたいこと』を意味づけるだけだと思うんです。
思い以外に理由がないこともありますよね。『したいからする』ってやつです。また、何かをしたいとき、できることとできないことがありますよね。色々な事情や環境があるので。ここで考えるのが『許容可能な損失』だったりもします。やったら失うもの、やらないと失うものを考える。損失を小さくする方法を考えるのもありですね。この辺を習慣化できると、一歩を踏み出しやすくなります。これは仕事にも私生活にも活きてくるものだなと思います。」

龍太さん

3rdschoolを運営しつつもサイボウズの楽校に参加している慶徳さんはどうでしょうか?

慶徳さん「うーん、サイボウズの楽校にジョインしたということで失うものはないですね。でも挑戦しなかったら失うものが多いなと思ったんです。年齢を重ねたときに後悔するのは嫌だなと思ったので、僕にとっては挑戦しないことが失うことだなと思いましたね。」

これらの回答を踏まえ、「目的は自分で決めるもの」だと話しました。

続いて挙がったのは、エフェクチュエーションは探究学習に活きるのではという参加者の声。登壇者4人は納得の表情でそれぞれの経験を語りました。

二川さん「僕をはじめ、多くの大人は許容範囲が狭いんじゃないかと思うんです。エフェクチュエーションは、色々なことが起こることをある程度許容するものだと思うんですよね。だから子どもと向き合うとき、特に実践的な学習の中では、理論でぶつかるのではなく、エフェクチュエーション的な行動をもって向き合うというのがとてもいいのかもしれないと思いますね。」

前田さんからは最近のサイボウズの学校の活動内容に絡めたエピソードをご紹介。

前田さん「探究学習って、これまで私がしてきた経験はないのでうまく言えるか不安ですが、サイボウズの楽校でのエフェウクチュエーション的に進めたことを紹介すると、畑を借りたという件があります。『畑を借りたい』ということを話したら、知人伝いの面白いつながりで、畑を貸し出してくれる人に出会うことができた。自分たちのやりたいことを持って、それを相手に”おねだり”しながら、できそうなことを相談してみる。これはクレイジーキルトのイメージだと思います。」

サイボウズの楽校代表 前田小百合さん

質問「どうして継続ができるのでしょうか?」

参加者からの質問

続いては、継続が苦手だという参加者からの質問です。

龍太さん「なんでもいいんですが、継続していることはないですか?歯磨きでもなんでもいいんです。それをどんなふうに続けているのか、どういうプロセスで回っているのかを見てみてもいいかも。またなぜ続かないのかは、自分が心からやりたいことではないのかも。そうすると、できないことが多くなってしまうので、自分がやりたいことを見つけてみるのがいいかもしれません。」

慶徳さん「継続には好きなことをするということが大事だと思うし、自分がやれていることに気づくのも大事だと思います。いっぱいできていることがあると思うので、そういうことに目を向けてみるのがいいんじゃないかなと思います。」

慶徳さん

たくさんの質問や感想を送ってくださった参加者の皆さん。トークセッションは登壇者と参加者という関係を超えて、お互いの声を交わし合う対話の時間になりました。

龍太さん「今日参加してくださっているみなさんにも、ぜひエフェクチュエーションをやってみてほしいなと思います。自分が心からしたいと思うことに取り組んでみてほしい。自分が体験するとそれをうまく子どもたちにも展開していけると思うので、もし関心があれば、ぜひやってみてください。
そしてぜひ、皆さんの学校と、私たちの楽校でチームになれるといいですよね。子どもたちが選択できる学び場づくりを、子どもたちを真ん中にしてつくっていけたらいいなと思います。」

最後はみんなで笑顔の集合写真

今回のBeYond Laboでは、私たちも参加者の皆さんからたくさんの気づきや学びをもらいました。今後も子どもたちを真ん中にしたチームとなって、手を取り合いながら教育に向き合って行けたらと思っています。
ご参加いただいた皆さん、二川さん、本当にありがとうございました!

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