【PICフォーラム】「ネガティブなことも、実はポジティブに変えられる」 エフェクチュエーション 【サイボウズ・中村龍太】
自分らしく毎日を活き活きと過ごし、自分が持つポジティブなインパクトを周りに与えられる人になることを目指す、サイボウズの『PICスクール』(過去のPIC記事はこちら)。「チームワークあふれる社会を創る」個人にフォーカスした、オンラインのラーニングコミュニティです。
その中で月に2回、さまざまな分野の講師を呼んで行われる『PICフォーラム』が、今月9日に開催されました。
今回は社長室の室長で複業家としても活動している中村龍太(以下、龍太さん)が講師。PICメンバーから人気の『エフェクチュエーション』についてお話しました。
エフェクチュエーションとは?
今回のテーマ「エフェクチュエーション」についてまずはご紹介。
エフェクチュエーション⇔コーゼーション
このエフェクチュエーションは、従来の「コーゼーション」と呼ばれる理論と対比して説明されます。龍太さんはこの二つの対比を歴史上の人物を例にして解説しました。
「コーゼーションにはチンギス・ハンと書きました。この人はご存知、モンゴル帝国の基盤を築き上げた人。ヨーロッパまで勢力を拡大して、帝国を作りました。帝国を作ることを目的に勢力を拡大した。領土を広げることを目標にしていました。一方、エフェクチュエーションは、コロンブス。コロンブスは領土を探しに行くという目的はあまりなくて、ただ冒険するという。手段を使って、自分の行動をデザインしていく。このように振る舞い方が若干違うかな、というイメージです。ちなみに、どちらが良い・悪いというものではないですよ」
つづいて、エフェクチュエーションとコーゼーションが手段からなのか目的からなのかについて、以下のように図を使って解説しました。
「まずコーゼーションは、目的や目標を明確にする。”売り上げをあげたい”とか、”お客さんを増やしたい”とか。それを達成するためにどういう手段があるんだろうか、ということを考えるわけです。目的ありきの行動パターンですね。」
目的や目標をまず定め、手段を考え、選択をして、アプローチしていく手法で、これは事業を行うときに必要な「事業計画書」を作るときにはこのコーゼーションを使っていると言います。
しかし研究によると、熟達した起業家が実践しているのは、これに対比して語られるエフェクチュエーションだと言います。
「資源があって手段があって目標が後にくる、というパターンです。まずは自分のやりたいことを置いて、自分が持っている手段でそれがどれくらいできるかを考えて、とりあえず行動する。この行動をするときに大切なのは、人と出会う、人と話をすること。そこで繋がりが生まれれば、資源の獲得になる。そしてまた人に話して、資源を獲得する…みたいなことを繰り返す。とにかく、事業計画書は作らない。」
つまりエフェクチュエーションとは、最初にゴールを設定するのではなく、今ある手段から新しい可能性を創造していくアプローチなのです。目的を定めて行動を決めていくコーゼーションとは、最初の一歩から違うことがわかりますね。イメージするだけでは、簡単そうに見えて難しそうな気がするエフェクチュエーションですが、これが熟達した起業家の考え方だそうです。
ちなみに龍太さんが確認したところ、サイボウズでも事業計画書を作ったことはないそうです。エフェクチュエーションを実践する会社が身近なところにあることがわかり、苗子も驚きました。
また、龍太さんによると、あの有名なコーヒーチェーンもエフェクチュエーションを実践しているそうです。コーヒーの飲まれる量が少なくなっていた80年代にオープンした1号店。さまざまなお客さんの要望に耳を傾け、改善し、現在につながる世界観ができていったようです。
とにかく、行動。これがエフェクチュエーションでは大事なんだとか。
「やってみよう」の棚卸し
ここで、龍太さんから参加者に提案。
「皆さんには何か、事業でもいいし、何かやりたいことがあったとしたときに、明日できることを少なくとも4〜5個くらい書いてみてください!」
ここからワークの時間。参加者の方に心からやりたいことと、すぐできる全ての手段を書いてもらうことに。
参加者の方からは自分の働く環境を改善したいという思いや、好きなことと仕事を掛け合わせたアイディア、それに対してそれぞれの環境に合わせてできる行動が寄せられました。具体的には書くことはできませんが、皆さんの発想力が素晴らしく、前向きなエネルギーに溢れていてすぐにでもやりたいことを成し遂げられそうな、そんな予感さえしました。
代表してお2人に発表していただいたあと、龍太さんからさらなるアイディアが。
「やってみようの棚卸しをする際には、これをやったら自分が自滅してしまいそうなことだとダメなので、行動の際には許容可能な損失かどうかを考えることが大事。」
「許容可能な損失」として、手段を考える際に大事なポイントを挙げました。
「”あなたが失敗したときに失うものはなんですか?”については考えることあると思うんですけど、”あなたが挑戦しなかった場合に失うものはなんですか?”についてはあまり考える習慣はないと思うので、こうしたことも考えるといいのかなと思います」
このあと、ミニケースを通じて、エフェクチュエーションの理論からさまざまな事象について話し合いました。参加者の皆さんのこれまでの体験や、過去の行動(その時どう感じて、何を感じ、どんな行動をとったのか)についてもお聞きすることができ、いろんな考えやアイディアに触れられた濃密な時間になりました。
その後、「許容可能な損失」と同じく「起業家的熟達の原則」の中からレモネードという項目について、龍太さんが話しました。
レモネードは「予期せぬ事態を避けるのではなく、むしろ偶然をテコとして活用する」というもの。
「レモネードというのは、酸っぱいレモンがきた時に肯定的に原料として使ってみよう、みたいな。自分にはネガティブなものがきていても、それをちょっとアイディアとして変えれば、プラスになるよねという、割とポジティブな考え方なんです。」
龍太さん自身も、思春期にネガティブに捉えていたことが、振り返ると今に繋がっている、「ネガティブなことも、実はポジティブに変えられる」と実体験を持って話していました。これはビジネスだけでなく、毎日を楽しく生きていく上で必要な考え方だと感じました。
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