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日記ふうエッセイ【ひび】

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2023年1月の記事一覧

【日々】水底にて|二〇二二年十二月

二〇二二年十二月十七日  変に人を敵視することをやめて、自分から胸襟を開きにいったら、みんなうまくいったし、一日の後味が見違えるほどさわやかだった。ちょっとずつでいいから、自分の正義にあわないものにいちいち憤るのはやめていきたい。みんなそれぞれに違うそのままに、気持ちよくいっしょに過ごしたい。 二〇二二年十二月二十日  今年は、冬をたのしめていない。身も心も重たくて、水の底を歩いているよう。何度か経験したことのある、あの嫌な感じ。  何度か水面に近づけたこともあった。そ

【日々】まわり見てねえでオマエ自身でノれよ|二〇二二年十二月

二〇二二年十二月十三日  静かに凍る街、たちのぼる吐息。もやをまとった明るい月と見つめ合いながらあるく。ヘッドホンからながれる羊文学『マヨイガ』が、じぶんのためだけに宇宙をつくっている。夢幻。 二〇二二年十二月十四日  いちにち休み。きのうのカレーの残りをたらふく。落ち着いて珈琲をいれる。ハンドドリップの出来はまずまず。久しぶりに絵を描いた。ささっと夕飯の準備をすませていく。たまごやきが綺麗に仕上がる。  駅へ向かう道すがら、ひかる夕焼けに目を奪われた。沈みぎわの眩い薄

【日々】昼の下北沢で落ち着かず、夜の中野で満たされる|二〇二二年十二月

二〇二二年十二月九日  今朝のハンドドリップは最近ではいちばんの出来だった。キリッと味が立っていて、雑味も少ない気がする。蒸らしで湯を注ぐときにコーヒースプーンで慎重に行ったこと、抽出をはやめに切り上げたことがよかったかもしれない。しかし飲みすすめながら、あたためるためにカップに入れていた湯は捨てたっけ?と思い至る。捨て忘れてそのまま注いだのだとしたら阿呆にもほどがある。せっかくうまくいったと思った味も、実は湯で薄まっているのかもしれない。そしてそれを旨いとおもった自分の舌

【日々】ハンドドリップがうまくいかない|二〇二二年十二月

二〇二二年十二月二日  つめたい鈍色の雲。そのむこうからすこし遠慮がちに差している低い陽光が、ところどころにしろい後光をつくりだしている。合間からは少しだけ、澄んだ蒼がのぞく。冬だ、これは冬の空だ。ようやく、どっしり腰を落ち着ける気になったようだ。 ◇  争う声、怒る言葉。関係ないと聞き流そうとしても、胃のあたりにきざす不快な熱さ。ただそばで浴びているだけで、削られてゆくような感覚がある。このところ、オフィスで毎日のように繰り返されている。それだけでもくたびれるのに、影