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新しいパラメータを見つけよう|CX Clip 週間ハイライト(2021/8/9)

編集部より

CX Clip編集部の柏原です。先週はAPPDIVE #5のレポート記事を公開しました。

柏原の推しフレーズはオンワードデジタルラボ山下さんの以下の発言です。

ODL・山下氏「本当は、『アプリを介して、お客様がどんな価値をオンワードに感じてくれるのか』を深く考えなければいけなかった。目先の売り上げだけに向いてしまう目標になると、どうしても施策が先行してしまう。指標を追う姿勢は決して悪いことではありませんが、お客様が私たちの商品やコンテンツに感じた『価値』の部分をもう少し可視化して、指標としていく必要があると考えています

マーケティング、いや全ての企業活動あるいは私たちの働き方と無縁ではない「指標」についての言及です。思い出されるのは米国の歴史学者ジェリー・Z・ミュラーの『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』。

透明性と健全な競争性を担保し、その結果としての生産性向上を目的に設定される「科学的測定」が逆説的にもたらす悪影響を論じる著作です。教育や医療そしてビジネスの現場など、あらゆるところで見られる「指標の専制(原著は『THE TYRANNY OF METRICS』)」を扱っています。

測りすぎることの問題点は、以下のように端的に表現されます。

問題は測定ではなく、過剰な測定や不適切な測定だ。測定基準ではなく、測定基準への執着なのだ。

より大事なのは後半のほうで、測定や指標化そのものを否定するのではなく、予め決められた測定基準を所与のものとして受け入れ、執着してしまうことが問題の本質だということです。

(当然問題はもっと複雑で、客観的とされている測定基準には、実は主観的・利己的な判断を客観指標に置き換えるという欲望が常に反映されているとか、測定基準への執着は、個人や組織の測定実績をその人々への報酬や懲罰に紐付けることが最大の動機づけとして機能するという信念が共有されていることで生じるとか、日頃「自身の働き方」に自覚的な読者のみなさまには非常に示唆の多い著作だと思います。ぜひ読んでみてください)

山下さんの発言から見いだされるのは、既存の指標への懐疑という姿勢。ビジネスである以上、指標化からは逃れることができません。一方で、今の指標が全く正しいというわけでもない。測定から過度に距離をとることは、ときに独善的であったり、再現不可能な「神秘的なもの」となりかねません。測定を否定するのではなく、むしろ既存指標ではすくいとれていない、しかし大事な要素に影響を与えている新しいパラメータに意識を向けようというのが山下さんの提案です。

ここでひとつ、新しいパラメータの実践例をご紹介します。Bean to Barのチョコレートブランド「Minimal」創業者の山下さんの言葉です。

山下氏「Minimalの店舗では、試食の消費量とお客さまの滞在時間をKPIにしています。スタッフはストーリーや特徴を丁寧に説明します。お客さまはスタッフとの会話を通してMinimalの商品だけでなく、自分の好みについても理解を深めます。チョコレートを買うだけじゃなく、気づきを得てもらいたいのです」

より多く試食をしてもらう。お客様により長くお店での時間を楽しんでもらう。このような測定基準が、スタッフがお客様と行うコミュニケーションの質を左右する。Minimalの目指すCXは、他ではあまり見ないこの「新しいパラメータ」に依っているのではないでしょうか?

MinimalさんのこのKPIも試行錯誤の末に見いだされたものであるはず。CX Clipが、読者の皆様が新しいパラメータを見つける刺激になればうれしいです。それでは今週もお楽しみください。

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「APP DIVE」は、プレイドが主催する顧客視点の施策およびプロダクト改善に主眼を置いた企業横断的に学び合う場です。2021年6月17日に「アパレル業界の『しくじり』から学ぶユーザー視点のプロダクト改善とは」をテーマに、第5回目がオンラインで開催されました。良い顧客体験をつくるために、アプリなどデジタルをどのように活用していくか、必要な考え方は何かを紐解いていきます。

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