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アフガニスタンの落石リスクの現場から

こんにちは、事務局長の小美野です💁‍♂️
アフガニスタンでは、2022年6月に同国のホースト県とパクティカ県で地震が発生し、同地域および周辺地域の人たちに大きな被害をおよぼしました。地震が発生したのは山岳地帯で、たくさんの地域が孤立し、支援へのアクセスを難しくしました。

ナンガルハル県ダラエノール郡の辺境にあるスータン村は、今回の地震で大きな被害を受けた村の一つです。この山間の村には600戸以上の家屋があり、農業や家畜の生産を主な生業としています。この村の住民は、地震によって家を失っただけでなく、生計の手段も失ってしまいました。


地震後のリスク

スータン村で不安定化した丘の上の巨礫©CWSA

この地震によって、もう一つ大きなリスクが生まれました。上の写真にあるような巨礫きょれきにヒビが入り、位置がずれたことによって、滑落かつらくの危険性が増したのです。上の写真でご覧頂けるかと思いますが、ふもとは住民の居住区となっており、落石が起きた場合、犠牲者が発生し、村の建物・水道・農地などが被害を受けることになります。

「地震発生直後の早朝、余震が続く中、わたしたちは大急ぎで自宅から避難しました。そのため、わたしたちは最も基本的な必需品しか持っていくことができませんでした。しかし、冬を目前にして、わたしたちは避難生活が長く続かないことを祈り、家族や子どもたちが暖かく過ごせるように、家に戻ろうと思いました」と、スータン村に住むアミールさんは話してくれました。アミールさんと家族7人は、スータン村から6キロメートル離れたマジュグンデル村の親戚の家に1カ月間移り住みました。しかし、戻ってきた時には巨礫の落石リスクが待っていたのです。

現地コミュニティのちから

この状況をワヒドゥラさんという若者が見ていました。ワヒドゥラさんは、CWS Japanが2017年から続けている防災力向上支援事業(外務省NGO連携無償協力資金助成)で防災研修を受けた一人で、災害リスクの精査やGISを活用したハザードマップ作りなどの技術を学んだ技術者です。潜在的なリスクを評価し、スータン村の地形をよりよく理解するために、ワヒドゥラさんは有志を集め、村のハザードマップを作成しました。ハザードマップを通じて得られた新しい情報をもとに、スータン村で意識向上セッションを開始し、丘陵きゅうりょう地帯での生活に伴う危険とそのリスクを最小限に抑える方法について地元の人々に伝えました。

分解作業案作成に向け巨礫の大きさや体積を測る防災チームメンバー©CWSA

その後、ワヒドゥラさんはCWS Japanおよび現地パートナー団体のCommunity World Service Asia(CWSA)に連絡を取ってくれ、そこから国を超えて、スータン村の落石リスクの軽減方法を議論しました。上記事業で技術的なサポートを頂いている国土防災株式会社の皆さまにも専門的なお知恵を頂きました。CWSAの防災事業チームも現場でリスク評価を行い、巨礫がいつ滑落してもおかしくないので、まずは巨礫の落石想定エリアから離れた場所に住むよう地元の人々にアドバイスしました。また、防災事業チームはリスクそのものを取り除くための案をいくつか作り、最終的に、少しずつ細かく巨礫を崩していく案を採用しました。

防災事業チームと地元コミュニティのボランティアグループが協力し、地域住民と作業者の安全を最優先に考えながら巨礫は少しずつ分解されていきました。作業が完了し、安全が確認されると、スータン村から避難していた200世帯はすべて自宅に戻り、学校も再開されました。生徒たちは喜んで学校に戻ったそうです。

分解前と分解後の巨礫の写真©CWSA

「わたしたちは1カ月間、テントの中で過ごした後、家に戻ってきました。友人は5人家族のわたしたちを手厚くサポートしてくれました。岩が取り除かれた後、わたしたちは安心して家に戻り、子どもたちも学校に戻りました」とスータンの住民、グル・ザマンさんは話してくれました。

地域の復興とリーダーの存在

わたしはかれこれ20年近くアフガニスタンの仲間たちと関わっていますが、このように率先そっせんして自分たちでリスクを把握し、その軽減案を模索し、実行していく彼らが非常に頼もしく思えました。そして、そういったマインドや人材を一緒に育ててくれた仲間たち、国土防災技術株式会社の皆さま、事業の資金的な支援をして下さった外務省など、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。これこそCWS Japanが目指すローカライゼーションです。現地のリーダーシップによって、より安全で平和な社会になること。その促進のために日々邁進して参ります。

2011年に発生した東日本大震災から12年が経ちました。CWS Japanも東日本大震災、そしてそのリスク・脅威にさらされた地域の人々と活動をともにしてきました。そのプロセスでやはり感銘を受けたのは、地域の復興に自分の人生を捧げるローカルリーダーの存在です。その方々がいるからこそ、復興がある。それは日本もアフガニスタンも同じなのだなと感じます。

ちなみに、こういった落石リスクはアフガニスタンの至る所であるので、落石リスク軽減のためのガイドライン作りなども今後広めていきたいと思っています。

(文:事務局長 小美野 剛)

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