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アフガニスタンで食料危機に直面する人々を支える

こんにちは🌞ニシザワです👩
CWS Japanはアフガニスタンでいくつかの事業を実施していますが、昨年の10月から今年の3月まで、深刻な食料危機を迎えているアフガニスタンの人々の支援を実施していました。

今日は、その活動について報告させてください✍


背景

世界で最も複雑な人道的緊急事態に見舞われているアフガニスタン。40年にわたる紛争、経済の低迷と現地通貨アフガニーの下落、干ばつや地震といった自然災害、貧困の拡大、加えて新型コロナウイルス感染症の拡大やロシアのウクライナ侵攻による燃料、飼料、食料価格高騰の影響により、全人口の95%が十分な食料を得られていません[1]。国連の報告によれば、総人口の半分にあたる2,150万人、つまり2人に1人が、食料不安を抱えているとされています[2]。

食料不安を測る世界標準の総合的食料安全保障レベル分類(Integrated Food Security Phase Classification: IPC)でも、2022年3~5月の間、アフガニスタンの総人口の約21%が「人道危機レベル」以上に(内5%は1番状態が悪い「飢餓レベル」のフェーズ5)、約31%が「急性食料危機レベル」のフェーズ3相当の状態にあります[3]。5歳未満の子どもにいたっては、重度の急性栄養失調で医療施設に収容される数が、2020年3月の1万6千人から今年3月には2万8千人と増えており[4]、拡大する食料危機に国際社会からの支援が必要でした。

事業概要

CWS Japanはこうした状況に対して、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の「中東・アフリカ食料危機支援プログラム」のもとで、現地パートナー団体とともに状況の深刻な地域の一つであるナンガルハル県で支援を実施しました。食料品をメインとした、生命をつなぐために必要な生活必需品入手のための現金キャッシュを配布します。


▼💡現金キャッシュ配布とは?▼

具体的には、アフガニスタン・ナンガルハル県の3地区における最も脆弱な家庭625世帯に対して1世帯あたり毎月約1万円の現地通貨を3か月間にわたり配布しました。1ヶ月あたり約1万円の現金キャッシュで1世帯平均7名分の小麦粉、米、油、豆類、砂糖、塩を購入することができます。これらの金額は国際的な指標に基づいて定められ、必要に応じて更新されています。

最も脆弱な家庭とはどのような人々のことなのか?それは、とりわけ深刻な危機に瀕している障がいや慢性疾患を抱えている方、高齢者、国内避難民、女性や子ども、貧困に苦しむ方、孤児といった脆弱な人々です。そのような方々のいる家庭に対して優先的に、食料品入手のための現金を配布する支援を実施しました。本事業では、食料不安を抱えている人々が、受け取った現金で栄養価の高い食料や生命維持に必要なものを手に入れられることを目的としていました。

活動結果

活動の結果、目標としていた625世帯には届きませんでしたが、604世帯に支援を届けることができました。この裨益者数が減ってしまった主な要因は、(最近またその傾向が再開していますが)当時急激に進んだ円安によって、海外送金時の大幅な為替差損が発生したためです。

裨益者の数は減ってしまいましたが、対象の604世帯すべてが2023年1月、2月、3月の3ヶ月連続で現金をタイムリーにそして安全に受け取れてことが確認できました。

現金給付の様子 ©CWSA

栄養状況・食料消費量の変化

配布の回を重ねるごとに、各世帯の食料消費量が増加し、第3回目の現金配布後では、全世帯において、必要最低限の食料ニーズを満たすことができるようになったことを示す数値が確認できました。特に、支援前後と比較して、肉・魚・卵などの食品へのアクセスが劇的に改善しました。

支援への満足度

活動後の調査では、すべての世帯が、食料の現物支給よりも現状の方法のような現金配布がいいという意見など、支援の方法や現金の受給額について高い満足度を示しました。インタビューでは、この現金支援は食料不足の問題を解決しただけでなく、食料不足による家族間の緊張を和らげたり、他のコミュニティ・メンバーとの関係も改善したりといった効果ももたらしたことがわかりました。

インパクト

この事業は食料危機に瀕した人々の生命を繋ぐことの短期的なインパクトに焦点を当てていました。

本事業の裨益者の一人、ベネシュさんは、8人の子どもの母親でもあり、高齢のために働くことが難しくなってしまった夫を支える妻でもり、家計を支える大黒柱でもあります。支援実施前は、前述のアフガニスタンの状況のために、女性であるベネシュさんが経済的な機会を新たにつかむことは男性よりも難しく生活に困窮していました。土地などの資産を売るなどしてその場をしのいでいましたが、それも長く続かず、子どもたちは、近所の人から時折恵んでもらう野菜や果物か、その他はほとんど少しの乳製品と白いパンがあるくらいの食事でした。13歳の娘のヤシュファさんは、喘息ですが、薬代や紹介された病院へ行くための資金がない状態でした。

今回の現金支援によって、ベネシュさん一家は、多様な種類の食料品を購入することができ、また、ヤシュファさんを病院に連れて行き、薬も買うことができました。現地チームによるインタビューを実施したとき、ベネシュさんは、このような思いがけない支援を受けられると知ったとき、嬉しくて涙が出たと語っていたそうです。
脆弱な家族に支援を届けることに留意した結果、社会的にも疎外されやすい女性に手を差しのべることができ、また、家族に希望を与えることができました。

ベネシュさんの家。ここで家族9人で暮らしている。©CWSA

さいごに

CWS Japanはこのような食料危機に直面している脆弱な人々に1人でも多く支援を届けられるように、特に社会経済的に権利を著しく制限されている女性を対象として支援を継続する予定です。詳細については、またnoteでご報告させて頂きます。

どうぞ、引き続き、皆さまからの温かいご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

※CWS Japanに対する寄付は税控除の対象になります。



(文:プログラム・マネージャー/広報 西澤紫乃)


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<参考文献>
[1] Afghanaid, “People in Afghanistan are today facing a food insecurity and malnutrition crisis of unparalleled proportions”,アクセス日2022年9月23日

[2] UNOCHA, Afghanistan: Humanitarian Response Plan (2022),11 Jan 2022

[3] IPC, Afghanistan IPC Acute Food Insecurity Analysis: March – November 2022 (Issued in May 2022),9 May 2022

[4] PBS, 1.1 million Afghan children under 5 could face severe malnutrition this year, U.N. says, May 25, 2022


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