アフガニスタンの厳しい冬を乗り越える
こんにちは🌞ニシザワです👩
昨年の11月にアフガニスタンでの活動について投稿して以降、ご無沙汰しておりましたが、今回もアフガニスタンについて、お伝えしたいと思います✍
日本は先日、10年に1度と言われる冷え込みが各地で報道され、積雪⛄で交通網が止まるなどの事態が発生していますが、みなさんは、アフガニスタンの冬はどのようなものかイメージできますか?
背景
アフガニスタンでは本格化した冬の時期、以下の写真のような光景が、特に山岳地帯で見ることができます。場所によっては零下20度まで気温が下がる極寒の季節です。対策が不十分であれば、餓死や凍死で多くの方が亡くなってしまう危機的状況をこの時期に迎えることになります。
2021年8月政変の影響で、すでに新型コロナウィルス感染症(COVID-19)や気候変動による干ばつなどの被害により生計に深刻な影響を受けている脆弱な人々に追い打ちをかけることになったアフガニスタン。冬を越して生き抜くためには国際社会の支援が必須です。
昨年、同国のラグマン県は、Integrated Food Security Phase Classification (IPC)という国際的な指標によると、命と生活を守るために緊急な行動が必要とされる極めて深刻な状況を示すフェーズ4(緊急事態)に分類されていました[1]。
つまり、現地の人々の生活環境はより過酷になり食糧危機の深刻化など、生命を脅かす危険性が高まっていました。国連の調査によると、冬の間に2,280万人が深刻な飢餓に直面し、870万人が緊急事態に陥る可能性があることが分かっており、世界食糧計画は、3人に1人が飢餓状態にあり、約200万人の子どもたちが栄養失調に陥っていると報告していました[2]。アフガニスタンは政変後の金融危機により「壊滅的な悪化」に直面しており、経済を支えていた国際援助の多くが凍結されています[3]。食糧価格の高騰、経済活動や必要なサービスの停止により、食糧不安は急激に高まっており、COVID-19によってすでに悪化している人々の多くの健康状態も、差し迫った状態になっていたのです。
事業概要
CWS Japanは現地のパートナー団体と連携し、ジャパン・プラットフォーム(JPF)の助成と皆さまの温かいご支援を受け、2022年2月から2022年6月の間に緊急支援を行いました。本事業では、現金を配布することで、人道危機の影響を受ける人々の栄養価の高い食糧へのアクセスを向上し、厳しい天候から身を守るための物資を得て、命を守ることを目指しました。
活動結果
政変以降、不安定な情勢が続いたなか、現地パートナー団体がすべての関係者と綿密なコミュニケーションをとり、透明性の高い活動を実施することができ、無事に目標としていた630世帯(約4,410人)に3カ月分の食糧と厳しい冬を乗り越えるための防寒用品を入手できるように現金配布を行うことができました。
栄養状況・食糧消費量の変化
事業前後の各世帯における栄養状況および食糧消費の変化を調査しました。本事業では、1カ月ごとに約1万円/回、3カ月間に合計3回の現金配布を行いました。当時の急激かつ大幅な円安傾向の影響で、第3回目は約6,000円の現金配布になってしまったのにもかかわらず、配布の回を重ねるごとに、各世帯の食糧消費量が増加し、第3回目の現金配布後では、630世帯中570世帯(90.4%)において、必要最低限の食糧ニーズを満たすことができるようになったことを示す数値が確認できました。1ヶ月あたり約1万円の現金で1世帯平均7名分の小麦粉、米、油、豆類、砂糖、塩を購入することができます。これらの金額は国際的な指標に基づいて定められ、必要に応じて更新されています[4] 。
支援への満足度
裨益者に「現金配布もしくは現物支給のどちらがよかったか」という質問をしたところ、全630 世帯(100%)が 現物支給ではなく、キャッシュ配布がよいと回答しました。その主な理由としては、当該現金で家族のニーズに応じた種類と量の食糧が購入できるため、というものでした。そのほか、事業期間中に受け取った現金がコミュニティとの関係に及ぼした効果や影響について質問をしました。その結果、630世帯の内602 世帯(95.6%)が、現金は家族間の緊張を和らげ、対象コミュニティ内の関係を改善したと回答し、28 世帯(4.4%)が、特に影響を与えなかったと回答しました。また、630世帯すべての回答者(100%)が、最も必要なときに現金支援を受けたと回答し、本支援に満足していることがわかりました。
インパクト
この事業は短期的な現金配布事業であったため、長期的なインパクトよりも、短中期的な裨益者の世帯レベルの食糧危機のリスクを緩和し、630世帯が命を落とすことなく越冬することを目指しており、それが今回の事業の主要な成果です。
しかし、裨益者であるアヤンさん(44歳、5人の子どもの父親)へのインタビューでは、副次的なインパクトとして、裨益世帯の子どもの教育費を貯蓄する一助になるなどの効果も確認されました。今回のCWS Japanからの支援を受けてから、アヤンさんはわずかなお金を貯めることができ、さらに子どもたちを地元の学校に入学させ、基本的な文房具を購入することができました。「制服と教科書を見た子どもたちは、学校に行けると大喜びでした。その喜びは計り知れません。」とアヤンさんは話してくれました。
さいごに
残念ながら、現在でもアフガニスタンの情勢は安定せず、深刻な人道危機が続いています。基本的な物資や食糧へのニーズは慢性化していて、現場では支援がいくらあっても足りない状況です。この冬も多くの人々が、命と生活を守るための支援を必要としています。
CWS Japanは現在、同国の脆弱な人々が、気候変動により激甚化する災害へのレジリエンスを高めるとともに、差し迫った食糧不安のリスクを軽減できるような支援を継続中です。
どうぞ、引き続き、皆さまからの温かいご理解とご支援をよろしくお願いいたします。
(文:プログラム・マネージャー/広報 西澤紫乃)
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<参考文献>
[1] IPC, IPC ACUTE FOOD INSECURITY ANALYSIS September 2021 – March 2022 Issued in October 2021, Oct 2021 ,p.14
[2] WFP, Afghanistan set to be world’s worst humanitarian crisis, report warns, 25 Oct 2021
[3] UNDP, The Latest: UN: Afghanistan on brink of “universal poverty”, 10 Sep 2021.
[4]FSAC in Afghanistan, “Guideline on 2020 response plan packages”, January 2020, p.2