G7に先立って、市民社会版サミットに登壇してきました
こんにちは🐧プログラム・マネージャーの五十嵐豪です🐧
本日は、2023年5月に開催されるG7サミットの市民社会版とも言えるC7サミットに登壇し、「成果がわかりにくい支援」にどのように向き合っていくのか訴えてきたことについて報告いたします。
C7サミットとは?
G7サミットという名前はほとんどの方が聞いたことあるかと思います。日本を含む世界をリードする7カ国の首脳達が毎年集まり、世界のさまざまな課題について話し合う場となっています。主催はメンバーによる持ち回り制で、2023年は日本が主催国となり5月に広島で開催する予定です。
C7とは、G7(Group of Sevenの略)の公式エンゲージメントグループの一つで、Civil Society (市民社会)の『C』を使ってC7になっています。公式エンゲージメントグループには他にも、BusinessのB7やYouth(若者)のY7などがあります。このC7のサミットがG7サミットに先立って、4月に東京で開催されました。私はこの中の「人道支援と紛争」ワーキンググループの分科会に登壇してきました。
受動的支援から能動的支援へ
わたしが登壇した分科会は「Reactive to Proactive Response(受動的《じゅどうてき》支援から能動的支援)」をテーマに、わたしの他にもイギリスの中間支援団体やパキスタンの現地団体から登壇者がおり、世界的なNGOのネットワークICVAからモデレーターを招いて進められました。
いつか起こりうる災害に対し、できるだけ事前に備えることにより、その被害を未然に防ぐ、または最小限に抑えることができます。命やケガなどの人的被害は何事にも変えることはできませんが、経済的観点から見ても防災分野に投資することは、災害対応・復興に投入するよりも安価であると一般的に言われています。災害が発生してから、必要とされる支援を慌てて届けるような受動的な支援だけでは、中長期的な変化は少なく、将来再び同じような災害に見舞われる可能性を残したままになってしまいます。災害が自然現象に起因する場合、多くの場合はこの発生を止めることは難しいです。しかし、事前に災害リスクを把握し、地域の防災力や回復力(レジリエンス)を高めることにより、災害が生じても被害や危機的状況に陥らないように備えることは可能です。
わかりにくい支援効果
災害へ備える防災の大切さに異論を唱える人は少ないと思います。しかし実際には、緊急人道支援の予算と比較してみると、防災に対する資金は非常に限られます。このギャップの原因は色々と考えられますが、「支援成果のわかりやすさ」も大きな一因かもしれません。例えば、災害直後の被災地で食事を提供する、難民キャンプで野戦病院を建てて診察する、どちらも非常に「わかりやすい」支援です。一方で、ハザードマップと避難計画ができました、警戒を知らせる情報インフラが整備されました、どちらもその直接的成果は災害が発生しないと実感しにくい取り組みであり、最大の成果は「何も起こらない(=被害が発生しない)」ということになります。
目の前にある危機的状況と将来のリスク軽減を比較すると、どうしても前者への注目の比重が高くなるのは仕方ないかもしれません。こうしたことから、例えば海外の政府の緊急人道支援向けの助成金では、その総額の一定の割合を防災の取り組みにしなければならないと義務付けられているケースもあります。
CWS Japanの緊急支援においても、短期的なニーズに応えるだけでなく、そこにできるだけ防災の要素が組み込まれるように努めています。例えば、現在実施中のアフガニスタン東部地震被災者支援では、仮設住宅を建設するだけでなく、同時に耐震構造についての仕組みと技術の研修を、広く現地コミュニティ向けに開催し、余震や次の地震に備えられた住宅が復興の中でも建設されていくことを目指しています。
また同じ防災への取り組みでも、耐震構造のある建物の建設や、防波堤の強化など、支援の成果が目にみえるカタチとしてできる取り組みに比べると、避難時要介護者の特定や、ハザードマップや避難計画の地域住民への周知など、地域の能力強化や住民への啓発活動などは、カタチとしての成果が見えにくいため、その重要性は認識されつつも、活動のための資金調達に苦労することが多くあります。
説明責任とアドボカシー・啓発
わかりにくい支援(しかし大切な支援)の資金調達における最大の課題は、その活動を支えてくれる人たちに対する説明責任です。政府およびその助成金に支えられている取り組みの場合は納税者に対して、NGOの場合はその寄付者や支えてくれる社会に対して、自分たちの活動の成果を透明性を持って丁寧に説明しなければなりません。そのため、直感的にわかりやすい支援や数値やカタチで結果が見やすい支援に支持が偏りがちです。しかし、支援の実践者が本当にわかりやすい支援だけに集中してしまうと災害後の緊急支援ばかりに偏重し、防災への取り組みが手薄になり、地域と住民の能力と意識は高まらず、中長期的には同じような災害被害を繰り返してしまう可能性が高まってしまいます。
こうした課題意識をもっているからこそ、今回のC7の機会を捉えて、日本だけでなく各国の政府に対して、対処療法的な緊急支援だけでなく、中長期的な視野から防災に取り組む政策を重視し、ハコモノ事業だけでなく人材育成や能力強化に積極的に投資していくように促しました。一方で、こうしたアドボカシー(政策提言)の活動は、社会に支えられて行うものなので、防災に取り組むわたしたち自身も社会に対して、その重要性を伝える啓発活動も行う必要があります。そこで政府に対して、説明と啓発を一緒に行うパートナーとして積極的に協働しましょうと提案しました。わかりにくい支援であっても意義のある支援活動であるならば、丁寧に説明責任を果たすことで、萎縮することなく取り組んでいきたいと思います。
最後に
災害直後の支援活動も当然ながら重要ですし、目の前で困難な状況にいる人を無視することはできません。一方で災害が起きるごとに同じ被害とそれに対する支援を繰り返していては、安心できる社会は実現できません。同様のことは、自然災害だけでなく難民支援においても言えます。平時から多様性を受け入れ、すべての人たちに優しい社会とその仕組みをつくることが、突然不幸な状況に追い込まれてしまった人が発生しても、尊厳が尊重され、それ以上傷つくことなく、安心して立ち直れる素地になるのだと考えます。
わたしたちは、わかりにくい支援であっても臆することなく取り組み、その重要性をわたしたちを支えてくれる人たちに丁寧に説明する活動にも積極的に取り組んでいきたいと思います。
支援者の皆さまとの対話・交流の機会も増やしていきたいと思いますので、ご参加いただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。
(文:プログラム・マネージャー 五十嵐豪)
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