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【ライブレポ】群青の世界×MARQUEE 定期公演 青の記録 vol.10

4人組アイドルグループ・群青の世界と、アイドル雑誌MARQUEEがコラボした月一回の定期公演「青の記録」は、2022年1月から始まってもう10回目となりました。
毎回グループにまつわるトークテーマでメンバーへのロングインタビューが行われるのもこの公演の特色で、この日のテーマは「群青の世界の楽曲」について。

持ち曲全曲について語られていて読みごたえがあり、自分もそれに乗っかってライナーノーツ的なものを書いてはみたくなったのですが、ここでは何も触れないこととします。
書こうとするととんでもないボリュームになりそうな気しかしないということもありますが、何よりもこの日についてはライブを取り上げたいという思いがありました。
自分は青の記録の半分くらいしか行けていませんが、その中でもこの日は一番のライブだったように思います。

「楽し..かった...!」
ライブ後の手短かな挨拶の時、工藤みかさんが充実しきった表情でこう言っていました。
しみじみと、浸るような言い回しは、その短い間にライブが始まってから終わるまでをもう一回反芻しているかのようでした。

楽しかった。至極ストレートな感想です。
それがライブをやり切った直後に出てくるというのはもう反射的なものでしょう。
群青の世界の魅せるステージは必ずしも楽しさと直結したものばかりではないのですが、工藤さんの口をついて出てきた感想は、少なくとも自分は全く同じでした。

どこに反射的に楽しかったと思わせる要素があったのか。
印象的な部分をピックアップし、もう一度あの一時間を組み立てながら振り返っていきたいと思います。

セットリストはこうでした。

◆セットリスト
M1. アンノウンプラネット
M2. 強がりな正義
M3. BLUE OVER
M4.最終章のないストーリー
M5. ロールプレイ
M6. 夢を語って生きていくの
M7. アイ・ワナ・ビー
M8. シンデレラエモーション
M9. COLOR
M10. カルミア

面白いのが、「楽しかった」ライブのわりに「僕等のスーパーノヴァ」や「RIBBON」といった鉄板で盛り上がる曲ばかりではないということです。
むしろ、言うなれば、寄ってきては突き放すようなセットリストとでも言いましょうか。
テンションの高い曲ともの思いに耽るような曲が変わりばんこにやってくる、起伏の大きな構成でした。

アンノウンプラネットは、導入としてライブの1曲目によく使われます。
ここからどういう流れに分岐していくのかが見どころだったりもするのですが、この日は最近ライブでかかる頻度の高い「強がりな正義」でした。
インタビューで工藤さんが眠くなる曲だと表現したのは、群青の世界の曲の中の中ではメロディーもメッセージも緩やかで、安心感があるからなのかもしれません。

ただ、いつまでも落ち着いたままでいさせてくれないのは群青の世界です。
起伏はいきなりやってきました。
BLUE OVER」、語りはじめると長くなるからと、他の曲との字割のバランスを考えて尻切れトンボのままで省略されたこの曲は、深く刻まれた渓谷のようです。

「青い、青い、青い 空を壊してしまえば 僕たちは自由になれるかな」

一宮ゆいさんがここまで必死な顔つきや動きで訴えかけてくるのかと、まじまじと見て初めて知りました。

目の前で起こっているのは激情の発露であり、それを目にした我々はもはやライブ鑑賞者なんていう気楽な立場ではなく、当事者にさせられます。
かといってどうすることも出来ず、ただ見つめているしかないのですが、その時間を体験してこそ群青の世界のライブに来た意味を実感します。

ライブに行き始めておよそ20回程度、日々ライブが行われるライブアイドルにとっては決して多くなく「追っている」とも言えない数字ですが、こうして体験を文字に残したり、通ったその多くがワンマンやツアーなど重要な位置づけのライブばかりであることから、回数の割には濃度高く見られているという自負はありました。
しかしまだまだ知らないことばかりなのだと、この日の一宮さんを見て実感しました。

深いところに落ちた感情は「最終章のないストーリー」でふたたび浮き上がり、一つの山と谷が完成しました。
髪をあげておでこを出した水野まゆさんが、しゃくりあげるように歌う回数がここにきて多くなってきました。

2番の頭では4人がセンターに固まり、村崎さんと工藤さんが腰を下ろして水野さんと一宮さんが重なるように立つというフォーメーションになります。

「分厚く重なった雲の隙間から差した光は」

かつて横田ふみかさんが歌っていたこのパートは、水野さんに受け継がれたようでした。
この時水野さんは、近くにいる誰かの肩に手をのせ、まるでそこから力を得ているかのように歌っていました。
珍しく全員が近くに寄っているこのパートの時は、遠くからだと一つの塊に見えます。
水野さんのこの仕草はいつものことだったのか、過去の様子は思い出せませんが結束を現わしていました。

MCを挟んだあとの3曲、「ロールプレイ」「夢を語って生きていくの」「アイ・ワナ・ビー」と、笑顔を失ったブロックは鳥肌が立つくらい圧倒的でした。
このグループを出来る限り見ていようと心に決めた、昨2021年の3周年記念ワンマンライブでの、目の前で起こる出来事をただ呆然と見つるしかなかった感覚を思い出します。

工藤さんや村崎さんはこうした曲での自らの演技を「カッコつけたくなるから」だと表現こそするものの、文句のつけようがない本物のカッコ良さです。
定期公演はいつも最後列からの眺めですが、このあたりから前のお客さんが微妙に位置をずらしたことでスペースが開き、見通しが良くなりました。
ステージ正面の柵まで見えます。
そこから観たとき、どこかのパートでしゃがんでいる村崎さんの口はかすかに動いて歌詞を口ずさんでいました。
大げさなものではなく、誰かに見せるためのものではなさそうです。
そして何といっても工藤さんです。
「夢を語って生きていくの」のラストのロングトーン「笑ったりはしない」のところは長さと音の正確さから音源かと思いました。

ブロックラストの「アイ・ワナ・ビー」。
つくづく、伴奏の気持ちよさに浸ってしまいます。
「大人になるってなんだろう」
いわゆる対旋律の手法が積極的に採られているのが特徴で、つっかえながら進もうとする歌詞を置いていくかのようにストリングスやパーカッション、キーボードなどの音が展開されていきます。
これが非常に美しいです。

「誰にもなれる僕へ 誰より明日を見てる君へ」

ラスサビには振り付けがなく、4人が思い思いの身振りをつけて歌います。
グループの特長であるダンスを一旦捨て、それぞれの表現でこちらに問いかけてくる姿は圧倒的でした。

最後の3曲ブロックは、その前の「アイ・ワナ・ビー」含め、昨年配信リリースされたアルバム「Puzzle」の収録順そのままでした。
COLOR」ではハモリの多さを思い知り、「カルミア」では少し声が抜けた気がしました。

そんな充実のライブが、もうすぐ終わろうとしています。
「皆さんにとって月曜のご褒美となるように」
村崎ゆうなさんが始めのMCでこう言ってくれました。
この日手にしたものはかなり大きなご褒美でした。

「ありがとうございました!」
メンバーが捌けていき、こちらが拍手でその背中を見送ろうかというき、一宮さんが突然ぼそっとこう言いだしました。
「なんか今日の拍手天ぷら揚げているみたい」
途中のMCでもなくどういうわけか最後の去り際にまで言わずにとっておいたのかが面白いのですが、村崎さんがそれを逃さずもう一回皆に聞こえるように言わせ、再び揚げ物のような拍手が鳴るという、最後の最後まで印象的なライブでした。


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