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【ライブレポ】東京アイドル劇場 綺星★フィオレナード・刹那的アナスタシア合同公演(20210918)

9月18日(土)。
台風の影響で朝から雨が降り続け、時に土砂降りとなりました。
この日、東京アイドル劇場では表題のライブが開催されました。

刹那的アナスタシアと綺星★フィレナードが持ち時間を30分ずつ分け合った、実質2本分の単独公演です。

◆刹那的アナスタシア

アイドルグループは、非常にもろいものです。
メンバーの卒業や脱退は避けて通れなく、母体がそっくり消滅してしまうことさえもあります。
コンセプトや路線が大幅に変わり、グループ立ち上げ当初にあった予想図をだいぶ書き換えないといけないこともあります。

アイドルをもう何年も応援していると、しごく当たり前のこととして受け止められるようにもなりますが、ここまで「大切なお知らせ」が日々飛び交う世界もそうそう無いのではないでしょうか。

ざっくり「喪失体験」と呼んでみますが、僕たちはそれをある日突如体験させられます。
驚くほど突然です。

ライブを重ねることで日々繋いでいるライブアイドルではとりわけですが、大げさに言えばその「いつか」が明日来てもおかしくない不確定さが、常にアイドルというものにはつきまとっていることになります。

儚いものだと、人は形容します。

この儚さは、一方では我々応援する者を不安に駆らせる面もあるのですが、他方ではアイドルを輝かせるという側面も備えています。

終わりを意識することで、ステージが輝いて見えるのです。

ご存じの通り、ステージ上でパフォーマンスする場のことを「ライブ」と言います。
その場に行かないと経験できないという意味では、「生の」という意味に捉えるのが本来なのでしょうが、燃え尽きる前の光を放つアイドルの姿を見ていると、違う意味にも捉えられるような気がします。
すなわち、「ライブ」のもう一方の意味である「生きる」ということにも通じるのではないかと思うのです。

アイドルが儚い一瞬の中にグループ人生、アイドル人生を燃やしている様を確認したいがために、我々はライブハウスに足を運ぶのかもしれません。
二度と来ないかもしれないこの時を見逃すまいと思う気持ちこそが、アイドルを応援させる強大な引力ではないか。そう感じています。

そんな、全てのアイドルが共通して抱えるであろうもろさと、いつか消えてしまうもの特有の輝きを、そのままグループコンセプトにしてしまったグループがあります。
それが、刹那的アナスタシアです。


Live for a Moment. - 儚いその一瞬を輝く -

元AKBの佐藤栞さんがメンバー兼プロデューサーとして、昨年オーディションで4人のメンバーを集め、今年4月1日に始動を果たしました。

デビューから数カ月が経過していますが、すでに5曲が公開され、これらは「departure」というミニアルバムに収められたうえでサブスク解禁となりました。
この日のライブでは与えられた30分をたっぷり使い、5曲全ての披露です。

◆セットリスト
1. 刹那的FANTASIA
2. 響け
3. 純情モラトリアム
4. AKATSUKI
5. 照明

アイドルグループにはたいてい、ポーズがつきものです。
MCなどでグループ名を告げる時、メンバーが加える手振りです。
親しみを持たせる意図なのでしょうか、グループ名に絡めたポーズが多いようです
刹那的アナスタシアのそれは親指、人差し指、中指の3本指を立てるというスタイルだと、ライブを見て分かりました。

一曲目の「刹那的FANTASIA」には、サビの振り付けでこの三本指が登場します。
タイトルにグループ名の一部「刹那的」が入っていることもあり、グループの特徴を伝える、名刺代わりの曲なのかもしれません。

3本指は、4曲目「AKATSUKI」で二本指に変わりました。
ピースサインです。

「AKATSUKI」は、これまでリリースされた5曲の中で、一番印象に残りました。
スネアの音が気持ちよく刻まれ、爽やかに吹き抜ける良い曲です。

だって僕らは暁のTraveler
ばらばらな歩幅さえも愛しく

リリースされたばかりのミニアルバムのタイトルは、先にも書きましたが「departure」。
そして「AKATSUKI」は一曲目、トップバッターに据えられています。
旅立ちを語るこの曲からは、アイドル界にここから飛び出していこうという意志があり、船出にピッタリだと強く思います。

サビのフレーズ「暁」「ばらばら」にあたるところのメロディーでは、歌詞が字余り気味になっているのですが、フレーズを詰め込んだことによって未来に向かってつんのめりながら進んでいくような先走り感を受けます。

サビでいっぱいに広がる、何かが破裂して飛び出す音も、これからグループに起こる出来事をワクワクしながら受け止める、そんな予感をメロディーに転写したかのようです。

グループの外観にも注目します。
まず履いているものに目を向けると、ロングブーツだったりくるぶしくらいの高さしかない靴だったりと、デザインはメンバーごとに違っているのですが、すべてに共通しているのは黒色で統一されているということです。

着ているものに目を転じると、暗みがかった赤と青色が基調となり、その上から白色のラインが区切りを入れてチェック模様を成しています。
一方、ベルトや襟、メンバーごとに長さの違う袖はブーツ同様黒色になっています。

会場であるYMCAホールの真っ黒な背景と同化しそうな黒は、明るめなロック調のメロディーとコントラストをなし、上手いこと互いを中和しあっていました。
アイドルにおなじみのメンバーカラーは無いようで、フロアで光っているサイリウムの色は水色。一色で統一してしまうところが潔いです。

ライブを見ていると、それを観てどう感じたかを表現することは難しいものの、なぜか頭に残っているシーンがあります。
ライブから日にちがたってもなぜか忘れない、長期記憶のフォルダに分類されるシーンです。
感動や興奮など、分かりやすい感情とはまたちがう受け止め方をした情景がここに入っているのだと思うのですが、この日のライブでそんなシーンがありました。

たしかラストの「証明」の落ちサビ。
注目したいのが、ツインテールを肩の高さで巻いた神谷雫架さん。
髪型からの手がかりなので、違っていたらすみません。

神谷さんは、自らが歌い終わったところで、横を向きながら外巻きをしたツインテールの先っぽの髪を払う姿がありました。
本人としてどこまで意図した仕草なのか、特に意味もなく癖によるものなのかはわかりませんが、ステージ上の忘れられない光景になってしばらく忘れられそうにありません。

プロデューサー兼任の佐藤栞さんは、その特殊な立場や経験を思うと落ち着いているのも納得なのですが、驚いたのが他のメンバーもデビューから半年と経っていないにも関わらず、だいぶ落ち着き払っていたということでした。

ビジュアルは各メンバー立っていますが、いい意味でフレッシュさがありません。
ここがなかなかすごいことと思います。
衣装や曲のつくり込み具合にも助けられ、ありがちなアイドル像に流されない、「ツナスタ」としての世界観が立ち上げ数カ月にしてそこにある。
そういう印象を刹那的アナスタシアのステージからは受けました。

◆綺星★フィオレナード

スタフィオメンバー紹介

◆セットリスト
1.La mia adolescenza.
2. fiore d’amore*
3. Brilla di più♯
4. Nuova★Storia
5. Shu★parklinG!!×Ⅱ
6. :Dum spiro spero

先ほどまでの刹那的アナスタシアとは対照的に、7色のメンバーカラーをそれぞれに配したカラフルなスタフィオの衣装は、腰の当たりに施された金色の飾りと一緒に照明の光を増幅し、跳ね返していました。

やはりカラフルな色は、そこにあるだけで気分を高めてくれるのか、明るくなったのは視界だけではないような気がします。

こういったガーリーな衣装なのですが、スタフィオのステージには衣装デザインからは創造的ないほどの幅があります。
優雅にスキップするような動きもあるかと思えば、打って変わって機械仕掛けのようにガシガシ動くパートもあり、フロントメンバーが頻繁に入れ替わるステージ上での動きには目が追いつけません。

象徴的な曲について書いてみます。

fiore d’amore*

激しい動きがある曲です。
サビでは腕を二回ぐるぐる大きく回し、右手を顔の前にかざして何かを覗き込むような振り付けがあります。

覗き込む動作には2パターンあるようで、腰を深く落としてかがむメンバーと、中腰程度にとどまるメンバーで分かれています。
7人もいると3対4に分かれるこのシーンは壮観でした。

メンバー何人かについて、ここからは書いていきます。

歌声だけでなく、歌い方にもこだわりを感じるのが末永香乃さんです。
末永さんの歌い方には、見入ってしまうところがあります。
胸に手を置き、マイク先端をやや上に傾け、前かがみになって歌うスタイルで、時に膝を少し曲げてフロアとの距離を詰めてきます。
気持ちの乗った歌い方を求めた先の解の一つは、末永さんのスタイルなのかもしれません。

これまでスタフィオを観てきたのは数回ですが、毎度のごとく目を引くメンバーがいます。
辻彩花さんです。
身長は高くなく、メンバーの中で最も高いであろう矢羽根かこさんと並ぶと強調されます。
しかし、辻さんのダンスはこの身長差を補って余りあります。
末永さんを観ていて気持ちよく感じるのが歌い方でしたが、辻さんを観てスッとするのはダンスそのものです。

他のメンバーも見つつですが、辻さんの動きを観察してみました。
よくよく見ていると、辻さんは他のメンバー以上に反り返るような、ひねるような動きを基本動作に加えているように見えました。
動きにやけに躍動感がついていたのはこうした工夫によるものだったのかもしれません。

10月26日をもってグループを卒業する世良明梨さんは、辻さんとは対照的に動きが抑えめなのですが、それでも遅れているようには見えないのがすごいところです。
世良さんはまた、意外と見落としがちなフロアの最前の方にもしっかりと目線を送っているところに、ステージ慣れを感じます。

スタフィオのダンスは、辻さんのひねりしかり、ある程度の振り付け上の動きはもちろん決まっているものの、最終的に本番のライブ上でどう魅せるかについてはある程度個人に任されているように見受けられます。

分かりやすいところだと、「La mia adolescenza.」。
サビでは、何かを拭くように、手首を二回ひねる動きがあります。
素人でも真似しやすい振り付けです。
メンバーの一人、橘すずさんを見てみると、このパートで他のメンバー同様手首をひねるのですが、指もかすかに曲げていました。
橘さんのシルバーのような髪色もあり、他を寄せ付けない静かな存在感や情緒を感じさせる空気を作り出しています。

以上がライブレポです。
スタフィオは、9月末から西日本エリアを中心に巡るツアーを開催中で、先に書いたようにツアーファイナルの東京公演をもって世良明梨さんがグループを卒業します。
7人のライブをみられる回数も少なく、個人的には今回が早くも最後かもしれないのですが、できればもう一度くらいは観ておきたいと思っています。

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