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【ライブレポ】群青の世界 新体制デビューライブ『僕等の青』

本編8曲の間は歌詞とその場面に合わせたイメージ映像を映していた背中側のスクリーンが、アンコールになると突如投影をやめ、今、ステージ上で歌い踊るメンバーを映し出しました。
あらかじめ作りこまれた映像と違い、寄りと引きが頻繁に入れ替わる、動きの多いライブ映像です。
それまで曲のポテンシャルとそれを引き出す映像に後押しされていたかに見えたメンバーでしたが、ここからは補助輪を外しました。
自分たちの力一つで世界を積み上げていくために、あえて少し粗めの生の映像を大写ししたのかもしれません。
その瞬間瞬間で心が動き、常に前に進んでいくライブは、映像を通して観ると後戻りできない感がより伝わってきます。
「走っていたら過去になってくんだよ」
昨年12月に幕を閉じた旧体制でオーラスの曲となった「僕等のスーパーノヴァ」でのこの一節を思い出しました。
福原ゆゆかさんだったと思うのですが、最後のMCで「デビューに向けて準備してきた期間は、このステージがゴールだったけど、今日からはここがスタートなので」と言いました。
映像に収められたライブは、その時点から過去のものとしてしまわれていきます。
「輝くことをやめない 違う、違う、やめられないんだ」
群青の世界、全く新たな新メンバー5人でのリスタート。
駆け抜ける速さは、もう止めることができないほどすさまじい時速を持っていました。

2024年9月12日(木)、恵比寿リキッドルームにて5人組アイドルグループ・群青の世界の新体制お披露目ライブ「僕等の青」が開催されました。

一度は表舞台から去っていった群青の世界です。
当時はかたくなに解散という表記にせず、現体制終了という書き方だったので、いずれまたメンバーを補充して戻ってくるのかなとはうっすら思っていたのですが、前体制終了から9カ月程度と、思ったよりも早くその時がやってきました。
自分としては、群青の世界はあまり新しい風を簡単には入れないところが特徴であり、そこに誇りをもってやってきたのかなと思っていたので、新体制で既存の曲がどう変化していくのかまるで想像がつかなかったのですが、それと同時にどこかほっとした思いもありました。
アイドルの数だけ増え、いい曲でも風化していくスピードが早まりました。
こすられ倒し、すりへらされていくのも考えものですが、そもそも記憶に残らない、残ったとしてもすぐに揮発していくほうがもっと問題です。
グループが活動休止や解散になり、とくに歌い継がれもしないままだとどんどん記憶の隅っこに追いやられてしまいます。
とりわけ群青の世界は、グループの知名度はそれなりに高くとも歌い継がれるような曲がさほど多いわけでもなく、染み入る曲が多いことからなかなか曲単体では広がっていかないところがあります。
記憶が薄れる前に、姉妹グループや後継グループ的なものでもなく、群青の世界として再開してくれた。
群青の世界の曲は、その持ち主が群青の世界であるからこそより価値を帯びる物だと思っています。
いい曲に恵まれながらも、オリジナルメンバーを含むその代限りで終わらざるを得なくなったグループをこれまでたくさん見てきました。
ファンの間の思い出にしか残らないことに寂しさを覚えつつも、一方では●期生とおき、卒業加入を前提とすることでオリジナルメンバーなどがいなくなっても看板だけは下ろさず守り続けることを実現させるというケースもあります。
それも風化させないという意味では素晴らしいシステムなのですが、今度は人の入れ替わりの多さによって当初期のイメージが希釈化されてしまう懸念もあります。
オリジナルメンバーを含む前体勢を終了し、少しブランクをあけて全く新しいメンバーでリスタートした群青の世界はそのどちらでもない、いわば両者のいいとこどりをしたように思います。

19時30分。
紫がかった青色の光が、まき散らしたようにフロアに注がれています。
目の前には群青色のスクリーンに、白字で「群青の世界」と手書き風で書かれていました。
ただの飾りとしても、群青の世界のライブでスクリーンを使うことはこれまであまりなかったような気がします。
わりとギリギリに着いたはずが、開演10分前を切ってもまだ明治通り沿いのリキッドルーム外に人が溜まっている状況で、なんのかんのといっても関心の高さが伺えます。
客席もぎっしり。
客席を流すのに予定より10分以上かかっていました。
そして暗転。
歓声がどっと上がると、聴き慣れたovertureとともにスクリーンの画面が切り替わりました。
どこかの屋上で撮った、PV風の映像です。
メンバーひとりひとりのソロショットと名前が現れ、紹介されたメンバーが上手から一人ずつ出てきました。
普段のライブであれば待ちかねたの一心で眺めているはずが、この日はどこか、触れてはいけないわけではないけれどどこか遠ざけていたものを近くに置くような、不思議な心持でした。

BLUE OVER」の歌いだしは走り気味でした。
この曲に限らず、全体的に前のめりなリズムの取り方になっていたように思います。
速くなろうとも、遅れるよりはマシだといい聞かせているようでもありました。
止まることのできない、現体制を象徴しているような進み方です。
音源を聴き慣れた自分がまず思ったのは、声が幼い。
そして勢いがある。
会社に車で向かうとき、ランダム再生で流れてきたらテンションが上がるという「BLUE OVER」評を以前インタビューした方からお聞きしました。
曲に生命力を感じて心が弾むからとのことだったのですが、現体制の歌声はアクセルをより踏み込み、勢いあまってハイウェイにでも突っ込んでいった感がありました。
振り付けも同じはずなのに、どこか違って見えます。
ピッチはともかく、若さからくる勢いには苛烈なものがあり、思わず声が出てしまうほどでした。
初っ端だけにとにかくひるまず、むしろ突進していくようにとメンバー間で決めていたのかもしれません。

ハイライト・トワイライト」で思いましたが。パート割も前体制から完全にシャッフルしたようで、たとえば一宮さんのパートをまるっと引き継ぐのはこの人、みたいな専任的な分担ではなくなっている気がしました。
それだけに、自分だけかもしれませんが、2曲目のこの時点で前体制とは別物なのだと頭の中ですっと切り替えができました。

以前はスペシャリストな個の集まりで、このパートの見せどころを担うのはこのメンバーと、自分の中でわりと型にはめて見てしまっているところがあり、過去のライブから導かれる延長線上を優に越えてくるパフォーマンスに驚いていたりしたのですが、現体制はあくまで全体という感じがします。
担当するそのパートでヒロインが出てくるのではなく、思いもかけないところから飛び出してきます。
集まってまだ2カ月ながらも仲の良さもあり、MCにもオリジナリティがあって結構面白いです。

もともと群青の世界のファンで、よく下手端で観ていたという藤吉優衣さんは、倍音っぽく良く広がる声でゆったりと、幼さのあるボーカル陣のバランスをとっていました。
新体制になり、ソロパートより複数人でのハモリや掛け合いがより目立つようにかんじました。
藤吉さんはその心臓部分となっています。
独特の落ち着きがあり、前に来ると涼し気な風が吹きます。

曲中、名前をコールされることがダントツで多かったのが、小坂愛莉さんでした。
コールが入りやすいパートを任されることがたまたま多かったのでしょうか。
「あいり」という名前はやはり、アイドルとしていちばんコールしやすい名前なのかもしれません。
髪が大きく乱れるほど動きが激しいのが印象的でした。
そこに、見た目とのギャップがあります。

尻上がりに盛り上がってきたライブは、7曲目「ステラ」で最高地点に達したかに見えました。
フロアとステージとの挨拶がようやく済み、呼吸が同じリズムになってきたような感覚です。
黄色の光が照りつけ、クラップやコールが支えとなって全体的に笑顔も増えてきました。
このメンバーが歌うととりわけどっと沸くなと感じたのが福原ゆゆかさんでした。
福原さんが歌いだすと場が途端に活性化しだします。

最後の挨拶の時、強めの口調で「ここからが始まりなので!」という風に言いきった本多朝葉さんは、他の4人の様子をよく見ていたりと一番落ち着いていた印象がありました。
ここからが始まりであり、ライブに来てくれたみんなも当事者として関わってほしい。
MCの言葉から自分は、焦りを含んだそういうニュアンスを読み取りました。
もともとハワイ住みだったこともあってか、他の4人から少し遅れてグループに合流しました。
それだけに、いちはやく群青の世界を自分にインストールしなければいけないという思いがあったようです。
冷静な見た目の奥には、熱いものが流れています。


MCを含めたステージでの振る舞い、姿勢、さらにはフロアの視線を集めてしまうオーラ。
辻夏鈴さんはそのどれもが際立っていました。
力強く押す歌声だけではなく、引くところは引くことものでメリハリがはっきりしているので非常に聴きやすいです。
メロドラマ」のラスト、「届けよう歌に乗せて」のところで、楽譜以上にロングトーンを伸ばしていました。
このアレンジ自体は前体制で工藤さんがよくやってはいたのですが、違ったのはその後のフロアの反応でした。
まるで曲が終わったインターバルかのように歓声が飛び、拍手が鳴り渡ったのでした。
その様子を見て安心したような、緊張がほどけたような辻さんの顔が忘れられません。
恐らくこれからも、フロアで背中を押すように、若い新生・群青の世界を見守っていくのだろうなと思いました。

僕等のスーパーノヴァ」も「ステラ」も、聴き終わったときの胸のすくような感じが一層強かったです。
とりわけ「僕等のスーパーノヴァ」のラストのワンフレーズ、5人のユニゾンは見事な重なりをみせていました。
お互い様々な道を経たメンバーが、越えるべきものを越えてここで一つになった。
迷いながら進んでいく歌詞が、そのまま5人に重なって見えたところもあったのかもしれません。

新曲も発表されました。
自分はこのレポで分かりやすさを優先した結果、前体制との比較でポイントを挙げてしまいましたが、両者比べるものでもないとおもいます。
周りの声を気にせず、5人なりの群青の世界を染めていってくれることを楽しみにしています。


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