「散歩の記録」
オヤジが言っていた。
私が映画にのめり始めた中学生のころ、
テレビで外国映画を放送する番組が、
毎日のようにゴールデンタイムで流れていた。
当然、いろんな映画を噛り付いて見ていた。
淀川長治の日曜洋画劇場、
荻昌弘の月曜ロードショー、
増田貴光、筈見有弘の土曜映画劇場、
高島忠夫のゴールデン洋画劇場、
水野晴郎の金曜ロードショーなどなど。
当時はテレビ各局が競う一つの目玉番組で、
どんな映画が放送されるかが、いつも楽しみだった。
アメリカ映画はもちろん、フランス映画、
イタリア映画も結構、満遍なく取り上げていた。
アクション、サスペンス、西部劇、スパイ物、
戦争物、歴史物、サイコ物から、
フィルムノワール、ネオリアリズム、ニューシネマ、
社会派、コメディ、SF、ミュージカルなどなど、
もちろん、ヒューマンなドラマまで、
見れなかった過去の外国映画の宝箱だった。
で、
のめり込み、夢中で見ているとき、
横でオヤジが、
「俺も好きだったんだ!これこれ、よう見たわ!」
「アレ、誰やったかなぁ?アレ、思い出せんわ!ほんと、もう、物覚え悪なっとるわなぁ」
「えーと、そや、アラン・ラッドや。ランドルフ・スコットっていう奴も、良かったなぁ。ゲーリー・クーパー、おったなぁ」
「ジョン・ウェインかぁ、駅馬車やな、良かった。良かった。でも、ほんとはシャルル・ボワイエ。ジャン・ギャバン、そや、フランス映画、ええなぁ、最高や。影があるんや。アメリカみたいにパァーパァー喋らん。黙って静かや。それがええんや!知ってるか。『望郷』ああ、ああ、『ヘッドライト』良かったなぁ。また、映画館で見たいわ。おい、どっかで、やってへんか!」
私は、いつものように、黙って聞き流す。
「そや、オードリー・ヘプバーン良かった!で、結婚したんや!若いころ、似てたんやでー、お母んなぁー。ソフィア・ローレンもええ!そうそう、『にがい米』そん時のソフィア・ローレン、ええわー、その頃が一番や。「帰らざる河」マリリン・モンロー、「風と共に去りぬ」ヴィヴィアン・リーもなぁ〜、そや、あいつ誰やった、あ〜、クラーク・ゲーブルや、あいつな髭の……』
私は心の中で、
「うるさい!今、見てんねん。喋りかけんで!」
と、思った瞬間!
オヤジは、
「もうええ、見たいけど、眠たなったから、もう、寝よか。
見たいけど……寝るわ……」
と部屋に引っ込んだ。
私は、落ち着いて続きを見る。
今頃、思う、
ツッ剣道な接し方しかできなかった中高校生時代……
あの頃、
キチンと映画のことイロイロ喋ってたらと後悔する。
いろんな、新発見があったかもしれない!
後の祭り。
映画好きなオヤジと私。
うすら覚えていたことです。
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