見出し画像

2010年8月 札幌 5 腹が減るー商店街のジンギスカン

2010年の夏、北海道をツーリング中の夫が、転倒事故を起こした。幸い自損事故で、命にも別条なかったが、粉砕骨折を負い、札幌の病院にそのまま入院という事態になった。手術は、プレートを入れ補強するまでの手術と、プレートを取り出す手術とで、2回に渡った。ワタシは、2010年と2011年に、札幌滞在を余儀なくされた事態に便乗して、観光を楽しんだ。

*2010年と2011年に別のブログに投稿していた記録を転載したものである。


マトンが大人の羊で、ラムが子供の羊。子供のころ、母さんが真っ黒の鉄フライパンで焼いてくれたのもマトン。

その昔、広島で、マトンは、牛肉や豚肉と同じ、肉の選択肢の一つだった。
よく言われるように、独特の味がした。

でも、日常的に食べていたあたしに言わせれば、牛肉と豚肉は明らかに味が違うように、その延長線上で、マトンも、羊の味がする、というに過ぎない。

でも札幌で、生肉と称するジンギスカンを体験してから、またその固定概念を覆された。

出かけた2軒の店のマトンは、羊だよ、という主張をしない。あっさりしていて、それでいて、肉そのものの味、なかなか、食べやすかった。

商店街にある、ジンギスカン店の女性が、面白いことを言っていた。あたしは、ぐるりと厨房を囲んだカウンターの隅で、観光客丸出しで、熱心に 肉を七輪で焼いては、御飯と一緒にもぐもぐ食べていた。

「お口に合いますか?」
と女主人らしい、ツルのようにすらりとした色白の女性が尋ねた。

食べるのに忙しかったので、言葉にならない言葉で、とても美味しいとか、全く癖がない、 とか言ったのだと思う。

「生肉を焼くというのは、タレ漬けと違って、そのものの味がでますね」
とマダムツルは、続けた。

「そう、そう、ラムを使うところもあるんですが、ラムというのは、子供の羊なので、乳臭いんですよね、うちは、そういう判断でマトンを使っているんです。」
と教えてくれた。なるほど、と頷く。その逆で、ラムの方が癖がないからと そちらを使う店もあるらしい。

また、
「北海道産の羊肉はとても高いんですよ、そういうのは、高級フランスレストランやら、 そういうとこに行くんです。うちのはニュージーランド産です」
と親切に教えてくれた。

食べている場所と流しが隣接していたので、マダムツルは、せっせとお皿を洗いながら、 あたしと、あれこれ話をした。

さて、御飯が残ったので、タレを舐めながら、完食しようかな、と考えていたら、 彼女は、金色のアルミやかんから、タレの入った小鉢に、焙じ茶を注いだ。そして、それを御飯にかけて食べるように、すすめた。

肉汁が溶け込んでいるタレと焙じ茶のお茶漬けなので、感想は言うまでもないですね、ご馳走さま。

生肉1人前(もやし、たまねぎ付き)、ごはん、900円 2010年8月現在。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?