見出し画像

もっともっと自由に 貪欲に夢を叶えて生きよ

河瀬直美監督のファンに

この作品に出会ったのは、DVD化されてからのこと。当時のわたしはよくTSUTAYAへ行っては新作チェックをしていた。樹木希林が好きで、永瀬正敏も好き。樹木希林と内田伽羅(実孫)が共演しているというのもわたしにとっては魅力的でした。
俳優さんたちの演技と映像の美しさにうっとり。どんな人がつくってるんだろう?と興味を持ったのが初めて河瀬監督を知ったきっかけ。そこから河瀬監督の作品を追っかけ、ファンに。
どの作品も人間らしさが溢れているところ、目に見えるもの見えないものどちらも描かれているところ、余白があるところに惹かれました。


心に残る台詞が満載

特に樹木希林演じる徳江の書く手紙の中には、千太郎(永瀬正敏)を支えるメッセージがふんだんに込められています。

人の一生は決して一色ではないです。
がらっと色合いが変わる時があるのですよ。

小説「あん」

これは、最近原作を読み返したときに心に残った台詞。
17年前、結婚後パートタイムで看護師として働いていた頃のわたしは、その延長線上にある未来しか思い描けず、「このままなんとなく働きながら年をとっていくのか」と想像しては、なんのために生きてくんだろう、と呆然としていた記憶があります。
子どもを産んで初めて真剣に未来のことを考えたとき、「このままじゃだめじゃん。子どもたちに何も残せないどころか負の財産だらけじゃん。」そう思い、方法はわからずとも何かしなきゃ!と心が焦り始めたのでした。

わたしの人生の色ががらっと変わったのはこの後のこと。
清水亜希子という人との出会いを通して、人生が色づき始めたのです。彼女が伝える『4つのQ』という原理原則の教えに心が震えた日のことは今もなお鮮明に覚えています。

人との出会いが人生を豊かにしていく

徳江と千太郎との出会いが、互いの人生に彩りを加えていく様に胸があたたかくなります。諦めかけていた希望がきらりと光ったり、人と関わり合う喜びに触れたりする中で、大切にしたい人やもの、ことが増えていく。そんな人生に豊かさを感じます。

幾つになってもチャレンジし続ける生き方

徳江は千太郎に出会い、どらやきやで働くことを通して、それまで自分が生きてきた世界とは違う世界を体験する機会を得ます。
徳江にとっては、安心できる環境に居続けることよりも、冒険することのほうがとても魅力的なことだったんだろうな。短い間だったにしても、そこには自分を受け入れられない人がいるという現実があったにしても、彼女にとっては心躍る体験だったんだろうな。そんなことを想像しながら徳江を観ていると、それがどんな現実であれ、受け入れた者の方がしあわせを実感する機会が多くあるのだということを教えられているような気がします。
徳江のように現実を受け入れる強さを持ち、自分にチャレンジする機会を与え続ける生き方を。とわたし自身に贈ろう。

何度でもやり直す勇気が希望への扉を開く

千太郎は徳江に出会い、自分にもまだ何かできるかもしれないと未来に希望を感じるようになる。前科のある過去は変えることもなくすこともできないけれど、徳江の生き様や手紙での関わりを通して、かちかちだった心が次第に溶けていくのです。

店長さん。あなたももちろん生きる意味があるんです。塀の中で苦しんだ時期も、どら焼きとの出会いもみんな意味があったのだと思いますよ。すべての機会を通してあなたはあなたらしい人生を送るはずです。

小説「あん」

徳江が千太郎に送った手紙の中から。
徳江だから伝えられること。徳江だから届けることができる言葉。こんなふうに誰かの背中をそっと押せる人になれたら、と憧れます。
きっと届ける側も伝えることで相手に支えられる。そこにはエネルギーの循環があって、どちらもじゅわっと満たされる瞬間があるのだと思います。

孤独だった彼の人生、生きるだけで精一杯だった彼の人生が蘇っていく様子を観ていると、だんだんと心が満ちてきます。徳江の力を借りながら、千太郎が千太郎の希望を叶えていく。千太郎が千太郎の声を発するラストシーンは胸がいっぱいになります。

メッセージ

囲いを越えるためには囲いを越えた心で生きるしかないんだって。

小説「あん」

塀の中にいるわけでもなく、閉じ込められた環境に身を置いているわけでもない。それでもいつかの誰かの言葉や世間体、いつしか当たり前のように頭の中でツイートしている思い込みに捕らわれて生きている。なんて窮屈で不自由なんだろう。

私たちはこの世を観るために聞くために生まれてきた。
この世はただそれだけを望んでいた。

小説「あん」

何にも捕らわれることなく、ただただそこにあるものを観るとき、聞くとき。わたしにはどんな世界が観えるのだろう。どんな声が聞こえてくるのだろう。

「あん」という作品を通して、今のわたしが受け取ったのは
❝もっともっと自由に!貪欲に夢を叶えて生きよ!❞
というメッセージだった。






この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?