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挨拶の効能。

「良い学校かどうかって、だいたい行ってすぐ分かるんだよなぁ」

以前私が専門学校に務めていた時、広報担当の先生が言っていた。学校広報は学生募集ために県内のさまざまな高校に足を運ぶ。その先生自身も元高校教師という経歴の持ち主だった。

「どうやって分かるんですか?」と私が聞くと、

「良い学校ってのはさぁ、来客、まあ俺みたいな奴にさ、学生が挨拶するんだよ。こんにちは!って元気よくな」

なるほど、と思った。学校の廊下ですれ違う見慣れない大人。それは誰かの保護者なのかも知れないし、どこかの業者なのかも知れない。とにかく学校に関係のある人には違いない。だから挨拶をする。それが自然に出来ているということは確かに良い学校なのだろう。

同じような話を、別の先生からも聞いた。

ちょっとした用件で、その先生と一緒に県内屈指の野球の強豪校に行った時の事だ。校門をくぐり校舎に向かって歩いている時、これから練習といった感じの野球部員が一人、向こうからやって来るのが見えた。そしてすれ違いざま、彼は野球帽を脱ぎ「こんにちは!」と大きな声で私達に挨拶をしたのだ。

そのあまりの気持ちの良い挨拶に、私はいたく感激した。彼の振る舞いに背筋をピンと正したくなった。

そして「あんな風に挨拶してもらえると、なんだか嬉しくなりますね」と感じたままを、同行の先生に伝えた。

すると先生は笑いながら「ここの野球部は昔からそうだよ」と言った。

「そうなんですね!さすが強豪校」

「うん。まあ結局、接戦になった時に勝つのはこういう学校なんだよな」

その先生曰く互いの実力が伯仲している場合、勝敗を左右するのは技術や、ましてや運などではなく挨拶だとか部室をキレイに使うなどといった、ちょっとした普段の心がけなのだと言う。

ご自身も学生時代ずっと野球をやっておられて、他の学校で野球部の監督も務めていた先生の言葉には実感がこもっていた。


不意にこんな事を思い出したのは、今私が働いている会社が、極端に挨拶や声がけが少ない職場だからだと思う。

割と規模の大きな会社で、正社員は2、30代が多く、私のような契約社員は4、50代が多く働いている印象だ。

で、主に正社員なのだが「お疲れ様です」と声をかけても「……っス」と呟くだけの人がほとんどで、目を合わせず無言で通り過ぎる人も少なくない。

作業の指示も必要最低限である。中には何も言わず指をさすだけという強者(笑)もいる。ライン製造工場の仕事は基本的に単純作業だから、それでもまあなんとかなるのだが、最初の頃は戸惑った。

私自身、濃いコミュニケーションを望んでいるわけではないが(むしろ逆だ)、この様な職場は初めてである。でもこれは良いとか悪いとかではなく、この会社にとっては普通の事なのだというのが最近ようやく分かってきた。

かなり離職率が高い職場なので、そういった事も関係しているのかも知れない。(私と同時期に入った契約社社員の2/3が既に辞めている)

忙しい合間を縫って丁寧に仕事を教えても、すぐに辞められてしまう。それが何度も何度も繰り返されたら、いい加減嫌になるだろうとは思う。

名前を覚えても、挨拶を交わすようになってもその人はすぐに居なくなってしまう。なら最初から必要最低限の関わりだけでいい。そんな、やるせない思いを抱えている社員が多いのかも知れない。

とは言え離職率に対して私が出来る事など何もない。なので、とにかく自分の仕事を頑張るだけだ。

あ、あと、めげずに挨拶はしていこう。(無視されるかも知れないが笑)

やっぱり挨拶の効能ってあると思うから。

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