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外国語としての日本語
何度か記事に書いているが、私の職場には多くの外国人がいる。
彼らの国籍はミャンマー、フィリピン、ブラジル、モンゴルなど様々だ。そんな外国の方達が技能実習生として、または契約社員として、あるいは派遣社員として働いている。
母国以外で働くなど、私だったらまず言葉の壁が克服出来ずに絶対無理だと思うけれど、彼らはたとえ日本に来て数ヶ月ほどであっても日本語での指示を理解して、きちんと作業を行っている。この適応力には本当に驚く。(ちなみに、ほとんどの人が来日した時点での日本語力はほぼゼロである)
書いていて気付いたのだが、そういえば今数人いるフィリピン出身の人達はなぜか全員元旦那さんが日本人で現在はシングルマザーである。外国で働くだけでなく一人で子育てをするのは相当な苦労があると思うが、皆一様に明るい。そしておしゃべり好き(笑)強くたくましい女性達である。
日本に来ていくらもたたないうちに日本語を理解し数ヶ月もすれば会話もほぼ問題ない彼らを見ていると、いとも簡単に言葉の壁をスルリとすり抜けているように思える。しかしながら、在日歴の長い短いに関わらず会話はともかく、読み書きは苦手という人が意外に多いようだ。
だからだと思うが職場では毎回始業前のミーティングで、その日の作業内容の書かれた『作業指示書』を全員の前で当番が読み上げるというのをやるのだが、外国の方はそれが免除となっている。
それと年に2回、全社員を対象に作業ルールを理解しているかどうかの確認テストなるものがあって(転職回数の多い私だが、このようなテストがある会社は初めてである)、外国人用の問題用紙は英語に翻訳されているという。
しかしながら作業現場では、ほんの少しだけれど彼らが日本語を書かなければならない場面がある。それは、その日作られる製品の製品名や梱包する際のテープの色、貼り付けるラベルの色を指定の紙に記入するというもの。
で、先日フィリピン人のマイカさんが、ちょっと困った顔でその用紙を持って来て、私に言った。
「ねこ山サン、ココに"ムラサキ"ってかいてもらってもイイ?」
そうか、今日のラベルの色は紫だもんね。この色のラベルを使うことってあまりないから書き慣れてないし、それにムラサキって画数が多いから難しいよね。OK、OK。お安いご用です。ムラサキは、えーっとまず「止」めるに、隣はなんだっけ……あ、そうそう「ヒ」だ。うわ、やっばい私、日本人のくせに書けなかったらめちゃくちゃ恥ずかしいとこだったよ。で、下に「糸」っと。はい、マイカさん書けたよ〜。
「アリガト〜」マイカさんは、素敵な笑顔で言った。
そのあと、帰りにロッカー室で会った時も「さっきはアリガト」と、マイカさんはもう一度お礼を言ってくれた。
本当にたいした事してないから、私はすっかり忘れていて「なんだっけ?」とキョトンとして聞いた。
「さっきの…、ムラサキ…」とマイカさん。
ああ、そうか思い出した。いや、お役に立ててよかったです。
それにしても漢字を一文字書いただけで、こんなに感謝されたのは初めてだった。
外国の方とのエピソードをもう一つ。
ある日私を含めた日本人四人と、まだ来日して間もないミャンマー人の技能実習生の女の子一人の計五人で検品作業をしていた時のこと。
その作業中に、ほんの1〜2㎜くらいのちいさなクモが発見された。そうなるとちょっと大変で、クモを(なるべく)生きたまま捕獲。その時検品していた製品や梱包されていた段ボールは全て廃棄。周辺をくまなくアルコール除菌。そして、いつどこで誰が発見したかなど報告書を作成しなければならない。
それらを全員でバタバタと行った。結構神経も使うし体力的にも疲れたが、衛生管理の徹底は必須である。
その日の帰り際、ミャンマーの女の子に「今日は大変だったね」と声をかけた。
そうすると彼女はニコニコと笑顔で言った。
「デモ、オカゲデ日本語ヒトツ、オボエマシタ」
「え?それって、ひょっとして……」
「クモ!(笑)」
そんな彼女が、なんだか可愛いなぁと思った。
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