[SS]飼い猫の提案
眠れぬ夜に猫が鳴く。
にゃお~ん(ФωФ)
「俺は明日試験なんだ、お前の夜食を作るために起きてたわけじゃないんだからな」
独り言のような文句と猫缶。ナンダカンダで飼い猫はかわいい。タマは尻尾をビン立てて体を擦り寄せてきた。
「タマはいいなー、学校も試験もないし、食っちゃ寝だし、悩みもなさそうだな」
するとタマは、後ろ足で立ち上がり二足歩行で貴史に詰め寄った。
「随分と軽く見られたもんだな。悩みなら腐るほどあるぞ」
「へ?」
「猫だって猫らしくする仕事がある。人に合わせているんだ。ストレスが無いわけないだろ。ときに貴史よ、お前猫になりたいのか? 魂の入れ換えが出来るがやってみるか?」
突っ込みどころは数あれど、話の腰を折ってはチャンスを逃す。
「え、あ、お、おう。猫になれるのか?」
「だてに黒猫をやってはいない。魔女の隣に黒猫がいるのはなぜだと思う? あれは魂を入れ換えるパートナーだからだ」
「なんだそれ、面白そうだな! で、俺はどうすればいい?」
「まず目をつむってしゃがめ。簡単なことさ、キスをしたら入れ換わる。百聞は一見に如かず、やってみるぞ」
言われるがままに俺は座って目をつむった。ゴロゴロ音と荒い息づかい、そして猫缶の生臭みが強くなった。
ザラリ・・・
タマの小さな舌が唇に触れ、俺は目を開けた。周りが明るい。あれ? ここ台所じゃない。俺の部屋だ、しかも布団の中だし。
はー、折角面白いことになりそうだったのに夢かよ。
ドアの向こうから朝の生活音とご飯催促のタマの声が響いていた。
────そして貴史は夢をみる。
夢の中で人の生活をする。
貴史よ、安心しろ。
ちゃんと魂は入れ換わっているぞ。
お前は食っちゃ寝生活が理想なのだろ?
大丈夫、栄養は取れるようにしておいた。俺はこれからお前の長い人生を楽しむよ。
おやすみ、タマ────🐾
(ФωФ)にゃ~ん
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?