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|時代劇批評|必殺シリーズその表とそして、裏のリアリズムの考察。


一掛け、二掛け、三掛けて、

仕掛けて、殺して日が暮れて、

橋の欄干、腰掛けて、遥か遠くを眺むれば

この世はつらーい、事ばかり。

片手に線香、花を持ち、

おっさん! おっさん ! どこ行くの?

私は 必殺仕事人

中村主水と申します……………


で、今日はどこのどいつを殺って欲しいんで
?………………


今もなお、日本全国各地で、繰り返し繰り返し再放送され続けている、テレビ朝日制作の
、必殺仕掛人からスタートした、時代劇の必殺シリーズ…………………


自分の世代では、だいたい、新・必殺仕事人
くらいから見てた世代で、そのころは小学校低学年ごろだったです。

基本、必殺シリーズって、制作者サイド関係者の人達が語るように、「時代劇じゃあ無いんですよ。」

自分から見てみれば、必殺って、時代劇の皮をかぶった現代劇で、もう少し先を行けば、今、我々が生きている現実世界であり、その先にあるのは、現実を切り裂いた奥に見える、いわゆる闇の世界。裏の世界の誤魔化しようのないリアリズムだと思います。まぁ、ドロドロしたどうしようもない世界だけど。


最終的に必殺の核、となった中村藤田主水。


 必殺って見る人により評価が別れ、人間世界のドロドロした欲望のうずにゲンナリして嫌悪感を見て嫌がる人と、刺激を受けて見続ける人、だいたいこの2パターンに分かれますね。

僕は後者の方で、刺激を受けつつ、現実の裏にある闇の知恵!年季を積んだ深い年寄でさえ忘れがちな裏の知恵を見せてくれるので、そういう意味で、世の中にとって役に立つドラマだなぁと思います。


いくつか例を上げれば、必殺仕置人。沖雅也演じる棺桶の錠。仕事料を貰うもんじゃ無いと、ノーギャラで仕置の仕事を終えた後、仲間内から叱られ、怒鳴られるシーンがあります。

「金も貰わねぇで殺るバカがいるか!!俺達の仕事はなぁ、お上(奉行所)の取りこぼした仕事を殺るんだ。俺達みてぇな薄汚れた連中が殺るもんなんだよ!錠!!オメェはまだまだガキだってぇ事なんだよ!!」

と、まぁ現実の裏社会をハッ!と見せてくれますよね。ちなみにこのシリーズの最終回、仕置人グループ解散となって、鉄砲玉のおきんが、「このまま、あたいたち、離れ離れになっちまうのかい?」と聞き、骨外しの念仏の鉄(山崎努)が、「どのみち俺たちゃあ死んだら地獄行きだ。遅かれ早かれ会えるさ………地獄の奥底で、な………。」これもまた役に立つセリフ、知恵ですよね。

殺しに至るまでのリアリズム


必殺仕事人でも、一時的な薄っぺらな正義感で、闇の仕事人の掟を破ろうとする、飾り職の秀(三田村邦彦)を制裁のため橘左門が暴行リンチを加えます。それを見ながら中村主水が諭します。「秀!よく聞けよ。表の人間はなぁ七転び八起きでいくつかやり直しの機会はあるけどなぁ、俺達闇の人間はなぁ、失敗したらそれでもう終わりなんだよ。」と、これも役に立つセリフ。要はリスクの大きいか、大きすぎる立場は避けときゃいいんだよ。とまぁ生き残りの為の教訓になりますよね。


新・必殺仕事人でも男に裏切られた頼み人の女が殺しを依頼して、三味線屋の勇次が殺しの秘術、3の糸で、三味線の糸で首を締め上げ吊し上げトドメを刺そうとするときに、惚れた男をやっぱり死なせたくないの想いから、「勇さん!!助けてあげて!!」と止めるシーンがありますが、迷いながらも殺しの暗殺マシーンとして最後に糸を弾き、トドメを刺します。

裏社会の掟は絶対、と言うことで。

中条きよしさん演じる、三味線屋の勇次は、日本人にしか出せない日本の色気を漂わせます。他のアジア人、欧米の白人にも出せないような。

日本人的なカルトな雰囲気、日本の色気代表と言いますか…………………。

光と影の江戸のエロティシズム


必殺商売人、江戸の殺しはプロフェッショナルでは、最終回、商売人グループを操り管轄下に置こうとした、中村主水の奉行所の同僚同心相手に、主水はこう語ります。「OOさん。あんたは裏の世界を知りすぎたようだ。殺し屋の世界を教えてあげましょう。それはですね。知りすぎたものは、消される。って事ですよ………。」主水はその同心を居合の一突きでズブリと突き殺し、ついで十文字斬りで斬り殺し、なぶり殺しにして苦しませ、分からせるようにトドメを差し息の根を止めます。

それと同時に、仲間の商売人、新吉こと梅宮辰夫が首に弓矢を受けて川に落とされ、何度も何度も水の中でもがき苦しむ映像が繰り返し流れます。主水は言います。「死にたがり屋の殺し屋が死んだんじゃねぇか。それだけだ。助けりゃあ、恨まれるってぇもんだ。」と。

これも的を得た言葉とシーンですね。


神がかった腕を持つ三味線屋のおりくさん


必殺仕事人Ⅲでも、第一話 殺しを見たのは受験生、で、主水たち仕事人の殺しの現場を見てしまった医学の受験生、西順之助(ひかる一平)を殺さずに仲間に引き入れる時でも、主水は「俺達やぁこのまま行ったら殺しのカラクリ人形だ。俺達の仲間に、正義だ、正義だ、って言うやつが一人くらいいてもいいんじゃねぇかってな……………。」

このシーンも得るものが有りますよね?


必殺必中仕事屋稼業でも、緒方拳演ずる、知らぬ顔の半兵衛は、人が殺されても知らぬ顔
、犯罪を見ても知らぬ顔、が信条のチャランポランな遊び人ですが、仕事屋の元締から、かなりのギャラを見せられて、仕事屋に参加します。

じょじょに殺しの仕事を続けていくうちに、チャランポランな性格は薄れ、ごまかしようの無い殺しや、過酷な現実という名のリアリズムに半兵衛の性格は追い詰められていきます。


やがて、こういう場面があります。ろくでもない遊び人の男に、売春婦、女郎になって身体を売り、金を貢ぎ続ける江戸の女に、半兵衛は怒り怒鳴り、諭します!「あんたぁ、自分のやってる事が分かってんのか!!!!」 「いいんです。あの人はアタシがいないとだめになってしまうんです…………。」

そして怒り心頭の半兵衛は頼み料無しで、遊び人の野郎をカミソリで首の動脈を切り裂きトドメをさします。血しぶきを上げながら……
………。

やっぱり、限界って、どんな世界にもあるもんで…………………。


そして最終回。仕事屋を脅して自身の殺しの手下として利用しようとする悪徳商人相手に
仕事屋達は止めを差しますが、返り討ちに会い仲間の仕事屋を殺され、死んだ仲間の仇討ちを果たした後、半兵衛は、こう語ります。

「あっしらは、半端に生き残ったんだ。これからも無様に生きていきやしょうや……………」

現実世界の無様さを、引き受けていかざるを得ない、何とも言えない最終回の、印象的な場面ですよね。

自分的にこの必殺必中仕事屋稼業。かなりのリアリズムを追求した完成度の高い名作だと感じます。


半兵衛は真の仕事屋になった。


必殺シリーズって、僕的に見れば、理想で誤魔化そうと、いつも現実を隠そうとする社会の、偽善を切り裂いて見せてくれる、中村主水のズバリと切り裂く、居合の太刀筋にも似て、ヤッパリ、好きですね……………………。

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