見出し画像

思い出せない事……古い木造校舎の懐かしい記憶、その物語り……

プロローグ・

僕の子供の頃に通っていた小学校の校庭に、戦前に造られて今は使われていない放置されていた古い木造校舎があった。

古い割には校舎の造りに意外にモダンな面も持ち合わせていて、木材で出来た温もりや、不思議な懐かしさを感じさせていた………。

僕やまわりの同級生たち、下級生たちは、おそるおそる入っていた。上級生たちはあまり立ち入らなかったけど……
まれに数人の子供達は、木造校舎の階段やチョット不気味な、とある教室等で、冒険ごっこや、追いかけっこなんかの他愛もない遊びをやっていたものです。

とある1・
                          幻想・ 
その木造校舎の裏手には、昼なお暗い雑木林が生い茂っており、そこには不気味な江戸時代からある古井戸があり、子供達の間の噂では昼でも井戸から這い出てくる幽霊が目撃されていた………
僕はいつも、いつも、その井戸の上からぶら下がる赤く長い布地を掴んで、白骨死体の女が井戸から這い出てくる空想に、幼なごころに恐怖で心を震わせていたものであった………


とある2・

何かがいる・
その古い木造校舎には幾つかの不思議な教室があった……。
別にオカルト現象が起こるといった事ではないけど、不思議な雰囲気を持つ教室が何階かに一つか、二つはあった……。
何かが宿っている様な雰囲気を持つ、それは怖いとかそういうのではないけど、何かがいる……何かが宿っている……雰囲気というか……。
そういう教室は、決まって木造のレトロな懐かしさを醸し出していた。ホコリや結構な規模のホコリが床一面に、綿ゴミが床に散らばっていたけれど………


とある3・

手すりの怪奇・
校舎の木造で出来た階段を僕たち小学校下級生たちは、階段横の手すりを滑り台の様にして滑りっこしながら、次、ボク、次、オレなどとすべって遊んだものだった………。

そんな時、僕だけでなく、後で聞いたら、遊んだ子すべてがその階段を滑る前、滑ったあと、それぞれに、あくまで感想だけど…………
白髪のやまんばみたいな白装束の凄い顔の怖いおばあさんの妖怪が後ろから追いかけて来る、そんな感じ、受けていたって………………。まあ、子どもの純心な感性豊かな、こころが見たイメージ的なものなのかも、でしょうけれど………。


とある4・

夢想・
曖昧かつ、おぼろげながら、かつ、わりとはっきりした思い出が、とある教室にあり………

それは、昼の教室の天井から、デカいテレビが着いていて、何故か名前は出せませんけども、とある今もご存命な御高齢の玉ねぎ髪型の御婦人タレント兼アナウンサー様が、昼のトーク番組なのに、ゴージャスな真っ白のお姫様のようなドレスを着て三十分艶々と幻想的な言葉をお話しになられて………、

幼い僕達はその一種、独特な夢想的な雰囲気に、ある種呆気にとられて……また、その雰囲気に呆然と呑まれてしまっていたのです……。

その記憶だけは………漠然と…漠然と……幼い記憶に残ってはいます………。


エピローグ・

最後・
その古い木造校舎も、とうとう解体される運命というか、結末を迎えるときがきたのでした………………………。

解体業者さんがやって来て、クレーンやら、なにやらにのってきて、ある種、残酷に、ある種、残虐に解体工事を始めました。

クレーンの機械が木造校舎に食い込み、叩き潰し、押し潰し、残酷にも情け容赦なく崩していくさまの凄まじい音は、子供心にも見るに耐えられないものでした……。

木造校舎は叫び声を上げ苦しみの極みの断末魔のうめき声を上げておりました……それは鹿のいななきのような叫び声にも聞け、罠にかかったウサギの苦しみの悲しみの叫びに感じられ、野生の猿が鉄砲で撃ち殺された叫び声にも聴こえ、野良猫が土足で体を踏み潰されるギャーア!!と、いう鳴き声にも聴こえました。子供達の感受性豊かな感性に、それは強烈に訴えかけて来ました………。
自分たちのほんのばかりの夢や思い出が、かすかに残った古い建物が破壊されていく様子は、悲しさと、何か残念なモノを僕たちに残していくようでした…………。
僕達小学生低学年は、何もできず……だた、呆然と見ているだけ、立ち尽くしていただけでした。

また、それと同時に、解体された校舎の残骸を見て、悲しさだけでなく、小さな子供が木でできた玩具で遊びたい、という不思議な子供心を、そういう欲求も同時に感じました………。

幼い頃の記憶って、どうです??世代を超えても誰しもが共通に共有、シェア出来るものだと、僕は感じていているし、思考もしています。

古い記憶を思い出し、何物かに重ねる思考の作業は、懐かしさにメランコリックな優しさを重ねる感覚にも似てきます……。


            ・終章・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?