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「痛み」故の「生」

…………痛い。

2月1日、午前5時は過ぎた辺りだった。

通っている就労支援施設で
馬鹿の一つ覚えのように学んだワード
「中途覚醒」

尿意なり、不意に何かのきっかけで
目標の起床時間よりも早く起きてしまう
現象を言うのだという。

その時は純粋な尿意で起きたが、
右側の歯茎上下に妙な違和感を覚える。

まぁいいかとトイレを済ませて
もう少し寝たいと軽食を摘まむ、
眠気を再び呼び覚ますためだ。

そんでまた……寝床に就いたのだった。

それから朝の8時。
結論からいうと本日施設に
通学する予定だったのを
ドタキャンするに至った

「痛い」

それしか脳裏に浮かんでこない

痛む場所はやはり右側の歯茎、上下共。

私は吸うのとコーヒーを嗜むのを
最低限の所で切り上げ、
まずは全ての歯間にフロスを通してみる。

(…………?思ったより痛くないぞ)

途中歯切れの悪いヶ所があったのか
糸がほつれそうになるも、
何とか全ての歯間の汚れを大体は落とした。

お次は1階の洗面台へ向かう

まだ同居している祖母は起きておらず、
洗面台を占領してはいなかった。

口をゆすぐ……憶えている限り2回か?

そして2階に戻る、
自室のアメニティグッズ置き場から
歯ブラシを取り程よく歯磨き粉をまぶす。

下の歯5分、上の歯5分、
仕上げの2分、約12分。
ブラシは全ての歯を斜め45度を意識、
しゃかしゃか、前歯はブラシを縦に持って
歯間も容赦なくブラシを潰さない程度の
力でしゃかしゃかしゃかしゃか……

1階にて口をゆすぐ、やはりまた2回。
全ての工程を終えてゆすいでも、
やはり「右側」は響くように痛かった。

通っている施設に連絡する、
この時午前9時40分頃。

今日は職員のFさんが応対してくれた、
持ってきたアイスノンを右頬に当てつつ
今朝のあるがままの惨状を辛うじて伝えた。

「今日はゆっくり休んで
来週の月曜日待ってるよ」
そんな感じで締められたと思う。

ホッと安堵したのも束の間、
隣室の冷蔵庫にアイスノンを戻して
戻ってきてから朝の処方箋どもを
片っ端から飲み込んでいき、それを終え、
床のホットカーペットに一旦寝そべる。

(…………さてこの軟膏を塗りますか……)

パッケージには
「歯ぐきの痛み・腫れ・出血に効く」
「患部に留まる滞留処方」
とか色々かかれていたが、
指先に1センチほどのせて患部に
塗りきればいい訳だ。それだけだった。

9時50分、人差し指の先っちょに
説明されている量くらいを載せて、
右の歯茎上下にムラなく塗りたっていく。

…………………………………………

(ぎゃああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああ)

中途覚醒して起きた5時頃、
目覚ましより遅れて起きた8時頃、
いや…………人生で久々というレベルの
痛みが私の右の上下歯茎を襲ったのだった。

冷やしても逆効果だと思い、
アイスノンは再び持ってくる事はせず、
のたうちまわる様に床のホットカーペットを
うつ伏せなのか仰向けなのか
良くわからない格好で孤軍奮闘していた

そして、いつからか意識を失っていた。

………………

………………

………………

………………

午後14時50分頃、右の歯茎たちは
少々ヒリヒリはするものの、
あの「爽快感」を越えた「ずきぃ~ん感」は
無くなり、穏やかになっていた。

「痛み」は「死」を予感させる。
そして引いていけば
「生きててよかった」と安堵する。


人はそういうもんだと
改めて思い知った1日だった。



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