女性問題における理想論と現実論
今回は、性別にかかわる問題を理想論と現実論という形で整理していきたい。
0 男女を分けて考えること
「男とか女とかなんて気にしない」という意見は、気にしなければならない差別がないという望ましい状態を踏まえた意見であるため、理想論だといえるだろう。埼玉県民と千葉県民の間に差別がなく、いちいち区別する必要がないのと同じだと考えられる。
これに対して「男か女かを気にする必要がある」という意見は、社会進出の遅れやハラスメントなどの女性差別があり、(性別を意識したうえで)対処を求められているという現状を踏まえた意見であるため、現実論だといえるだろう。
男女を分けて考えることの具体例を挙げる。
1 女性活躍
国会議員や管理職に女性を増やそうという流れができている。これに対して、「性別じゃなくて能力で選べ」という批判がある。これも理想論と現実論の関係である。
性別じゃなくて能力で選べという意見は、性別により不利になることがなく男女ともに活躍できるという望ましい状態(都立高校入試はこの段階にあるため男女別定員を廃止したといえる)を踏まえた意見であるため、理想論といえるだろう。男も女も関係なく活躍できる理想的な社会になれば、性別でなく能力で選ぶほうが良いだろう。
これに対して女性枠を設けるべきだといった主張は、家事育児に追われるなどして女性が活躍できていない現状を踏まえた意見であるため、現実論であるといえるだろう。
そのため性別を考慮する必要があるといえる。
2 痴漢と女性専用車両
女性専用車両に反対する理由はいろいろあるだろうが、女性が優遇されていることに反対するのであれば、男女が対等であるという望ましい状態を踏まえた意見であるため、理想論であるといえるだろう。
これに対して、「女性が痴漢に遭っているから女性専用車両が必要だ」という意見は、女性が痴漢に遭っているという現状を踏まえた意見であるため、現実論であるといえるだろう。
3 イクメン
こちらの記事でイクメンという言葉に対する賛成・反対の意見が述べられている。
「自分の子供を夫婦で育てるのは当たり前(だからイクメンという言葉はおかしい)」という意見は、性別関係なく育児に参加するという望ましい状態を踏まえた意見であるため、理想論といえるだろう。当たり前のことに言葉がつかないのは、女性が大学に通うのは当たり前だからガクジョという言葉がないのと同じだろう。
それに対して、「イクメンという言葉の出現によって「男は仕事」は古いという意識改革が起きた」という意見は、男性が育児に参加できていないという現状を踏まえた意見であるため、現実論といえるだろう。
4 防犯
女性が夜間に外出することや政情不安定な地域に渡航することを巡る是非は、理想論と現実論の形にまとめられる。
「女性に外出・渡航の自粛を求めるなんて差別だ」という意見があるとすれば、犯罪がない・扱いが対等という望ましい状態を踏まえているため理想論だといえるだろう。
それに対して女性に外出・渡航の自粛を求めることは、女性が狙われやすいという現状を踏まえているため現実論だといえるだろう。
5 アウティング
アウティングとは人の性的志向(同性愛など)を同意なく第三者に暴露することである。2本の記事共に中盤付近で理想論について触れられている。
「同性愛は悪いことじゃないからアウティングしてokだよね」「アウティングという言葉を与えるような問題のある行為じゃないよね」という意見は、周囲が皆LGBTを理解しているという望ましい状態を踏まえた意見であるため、理想論だといえるだろう。
それに対して、「アウティングをやめよう」という注意喚起は、周囲のLGBTに対する理解が十分ではなく、差別・偏見・いじめが起こるという現状を踏まえているため、現実論だといえるだろう。
LGBTに対する差別が完全になくなれば、「あの人ゲイなんだって」と言ったとしても「あの人左利き(←LGBTと割合がほぼ同じだが偏見がない)なんだって」といった具合で、「へ~そうなんだ」で終わる。このような社会を目指したい。
まとめ
このように、性別に関する問題のいくつかは理想論と現実論という形で整理することができる。このうち女性枠の必要性などを主張する現実論は、不平等から平等への過渡期専用の「是正措置」という言い方もできるだろう。問題が解決し、是正措置が不要になることが望ましい。都立高校入試の男女別定員廃止がまさにその状態である。理想論と現実論は両方必要だが、差別解消のためには現実論のほうが良さそうである。