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映画感想(1)【ゲゲゲの謎】


ゲゲゲの謎を観てきました。
民俗学や怖い話をnoteで読み漁るのが好きなのですが、ゲゲゲの鬼太郎自体は見たことがありませんでした。原作とアニメがどれくらい違うのかもわからないい、どこから手をつけていいかもわからなかったのもあります。
結果として、原作及びアニメ未履修でも、「映画」として非常に楽しめる作品でした。

⚠️以下ネタバレを含みます⚠️

キャラクターについて

まずメインビジュアルの背広の男が気になる。
あんまり良い興味の持ち方ではないかもしれないのだが、メインビジュアルの背広の男が多分私の好きなタイプのキャラクターだと本能が叫んだ。絶対好きだ。
諦めが悪そうで、適度に人たらしそうで、「手段を選ばない」とか言いながら人情に反することは出来なさそうで、すごく普通っぽい。顔から滲み出てる。そういう人相が私は大好きなんだ。
視聴後、私の直感は正しかったと思った。
若干怪異への適応力が高すぎるものの、水木シゲルその人がモデルなんだからそんなもんだろう。
特に水木というキャラクターの性格の中で良かったところは、終始、沙代のことを「少女」としてしか見ていなかったところ。保護の対象としか見ていない感じが大変良い。
水木は迫ってくる沙代のことを「世間知らずのお嬢さんが熱に浮かされている」程度にしか見てないけど、視聴者から見ると「オトコを知っているオンナのやり口」って感じが見えるのめっちゃ良かった。
ラストで親父の嫁さん抱えて逃げるシーン、親父が水木に着せた半纏をコイツというやつは嫁さんに着せてやがる………そういうところだよ水木!!!ああ、好き。

かつての親父について。
見た目が良すぎる。白髪に着流し長身痩躯はズルすぎるんだよな。
衝撃を受けたのが、時弥くんのことを「時ちゃん」と呼んだこと。ズルすぎるって。
でも目玉のおやじの性格考えると「時ちゃん」って呼ぶよなあ。そうだよなぁ。
親父の入浴シーンというサービスショットを見た後、目玉親父のお尻をどういう目で見ていいかわからなくなってしまった。
痩躯のくせに脳筋な戦い方するところも大変良いですね、沼る人には劇薬なんじゃないですかこの人。取扱注意です。
あと「自分はどうなっても良いから妻だけは…」と乙米に懇願するシーン、関さんの演技が本当に本当に素晴らしく良かった…あんなに憔悴しきった声…普段の飄々と喋る親父その人の声だと思えないくらい………関さんありがとう…どれだけ奥さんのこと好きだったかがわかるね………愛が……深ぇ………

石田一派について
もう見た目から石田さんの声がしそうだなって思ったよね。
ちゃんと裏鬼道って呼んだれ。石田一派って呼ばれてるの面白すぎて好き。
どこの情報か忘れたんだけれども、石田と乙米って愛し合ってたのに身体の関係はなかったそうですね。デキてるのはすぐわかったけど、あんなドロドロした村の中でそんな純愛あるとは思わなくてびっくり。どこ情報かわすれちゃったから本当かどうかわからないけれど。

映画全体について

閉鎖的な村の因習ってそれだけで大好きなんだけど、ストーリーが全体的に救いがなさすぎてとても良かった(フィクションだから言えることだけど)。
よく小説とかで見る田舎の気持ち悪い因習みたいなのをものすごく分かりやすくやってるから、ストーリーもスッと頭に入ってくる。欲しいものが欲しい時に来る。最高ですね。
作画もすごい良い。あの余所者を見る目の動きとか最高に気持ち悪くて良かった。
直系親族の座り位置も昭和すぎてキモかった。田舎に行くと意外とまだあったりするんだよな〜これが!私は直系長子なんだけど、父の妹の息子たちの方が上座に座るんだよね。カァ〜〜〜キメェ!!多分私が結婚したらお相手もその位置に座るんだろうなぁ。せんけど。
沙代ちゃん周りがもう色んな意味で最悪なんだけど、それ以外も救いがなくて良いですね。
映画冒頭出てきた煙たい電車の中で咳き込んでいる少女も村の贄になっていたことが後半に一瞬描かれている。関係ない人間まで巻き込んで業に業を重ねている龍賀一族…最悪の所業で大変良い。
あと“M“という液体について。
薄桜鬼というゲームを履修した人間は「変若水じゃねーか」と思ったんじゃないだろうか。
戦争時ってそういう麻薬みたいな薬が出回っていたのかな?そうでもしないと戦場に出続けられないのかも知れないね。Mについてモデルになったものとかがあれば知りたい。

そして履修組から聞いていた「戦闘シーンがすごいぞ」という情報。
本当にすごかった。
あのシーン、作画枚数的にはそんなに多くないと思うんだけどどうでしょう?
アニメ制作のことはよくわからないから私の勘違いかもしれないけど。
作画枚数はそんなに多くないのにものすごく動いて見える。カメラワークが素晴らしいのかな?
「めっちゃかっこいい画角」をビシッと押さえて描かれていた気がするので見ていて非常に気持ちがいい。

あと色彩設計?美術?が素晴らしい。
私はイラストをちょこっとだけ嗜んでいるが、カラーの絵・画の説得力って最終的に色で出てくるんじゃないかなって思ってる。ちなみに私は着色ができない。色で説得力が出せない。勉強不足もあると思うけど、決定的にセンスがダメな気がする、悔しい。
ちょっと前のアニメの中で、原作は好きなんだけどどうしても色彩設計に納得がいかずにあまりピンとこない作品があった。2期では多少マシになっていたけどやっぱりピンとこない。
今回の映画は個人的に色彩設計は好みのタイプだったので見ているだけで気持ちよかった。

エンディングについて

ひどい。と同時に、マジで良かった。
水木が全部忘れちゃってるのが本当に本当に酷くて良かった。
包帯まみれの親父から逃げちゃうところ、死ぬほど苦しかったんだけど最高だった。
親父、寂しかっただろうなぁ。でも、納得させたんだろうなぁ、自分を。
たくさんの仲間を失いながらも生きながらえなければならなかった親父。
納得して、乗り越えていかなきゃいけなかったんだろうなぁ。
水木、全部忘れてるくせに大切な何かを忘れられないところも最高だったな。
私はスタッフロールも楽しみたいタイプなんだけど、画面左半分がそれを許してくれなかった。きっとまた見ても左半分が許してくれないだろうから円盤化を待つしかない。

来場者特典について

存在しない記憶を来場者特典にしやがった━━━!!
あッ!たらいいな、龍賀製薬♪
じゃあねえんだよ。人の心がないんか?
あまりにも幸せそうな光景が心を抉るんじゃ…だって無いんだもんその未来。


左眼について

龍賀の一族、そういえばことごとく左目がぶっつぶれてたけど、スピリチュアル?的には左眼って未来を見る目とされているんですってね。
おまえたちの未来が見とうなったと言った目玉おやじも、親父の左眼だよなぁ。
戦時中の時代に取り残されていた一族だったから左眼が潰されたのかなぁ。
乙米の左眼のシーンはグロを通り越してもはや芸術かとおもった。ああはならんよ。
もし左眼について面白い考察があればぜひ見たいのでしばらくタグで感想を漁ろうと思う。


とにかくとても面白い映画でした。
ストーリー的に何も救いはないはずなんだけど、なんだか希望の光が見えてしまうような気がするのは、親父の「お前たちの未来が見とうなった」のセリフのせいかな?
昭和とか戦後だとかの時代背景を考えながら文学として解釈するのも面白そうだけど、とにかくエンターテイメントとして非常に楽しみました。
ゲゲゲの鬼太郎、プライベートが落ち着いたら履修しようと思いました。

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