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夜景

 ビルの最上階から光に彩られた夜景をそっと眺める。夜景は電飾で煌々と輝き大人の色気を醸し出していた。夜景が泣きたくなる程綺麗で美しかった。そして、夜景に映る自分の姿は半透明で醜かった。少しずつ少しずつ透明な部分が消え去り多彩な色に染まった。ある時は一面に広がる澄み切った故郷の青空色。またある時は都会のアスファルトの様な他の色を一切通さない黒色。多彩な色に染まる度に新しく出逢うのに何かしらのものを道の何処かに落としてる。道に落としたものを探すが簡単には見つからない。何を落としたのかも分からない。
 故郷のテレビの画面越しから夜景を見ていた頃はまだ透明な部分が残っていた。まだ道に落とし物はなかった。今更透明な部分が沢山残っていた頃を思い出しチクリと心が痛くなる。刺さる。心の痛み=大人?夜景を眺め心の痛みと大人を舌で味わう。生暖かい血液の味がじわっと口内に広がる。

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