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飾り付け

 冬が過ぎ去りし春が近づく月日。ひな祭りに備えてひな人形の準備をする。押し入れからひな人形が入った大きな段ボール箱を外に出す。ひな人形を外に取り出すと防虫剤の匂いがべっとりと染みつく。ひな人形は幼き頃のまま何一つ変わらず。どこか人形だけが一人ぼっちで取り残されたよう。ずっと時間が止まったままの世界で。ずっと創られたままの世界で。何とも言えない表情でひな人形の髪をなでつけながら「今年もよろしくお願いします」そっと呟く。
 ひな人形の飾り付けを手伝うがひな人形の立ち位置がうろ覚え。「これはどこに置けばよいのだろう?」幼き頃の思い出の一枚を遠い記憶から引っ張り思い出す。「この飾りはこの位置で・・・」一個一個確認するように言葉にする。何とか記憶通りにひな人形を飾れた。飾り付けが終わり全体をもう一度眺める。雅で煌びやかで華やか。しかし年を重ねる毎にひな人形が色褪せて見えるのは気のせいだろうか?
 

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