餃子の王将を推したい #桃まんを空に投げたら、雷雨は去るだろうか。
平日の激務で全て出し切った、週末の私たちは、ただの絞りカス。
女3人で、癒しを求めて北へ車を走らせる。
「いつもと違うところでランチしよう」
餃○の王○は、もちろん大好きだが、たまには違うものも食べたいね。
「いいよー」
友人の返事に、イソイソとハワイアンカフェとか検索し始める私。
「着いたよ」との声で、スマホから顔を上げると
そこは…餃子の王将だった。
なんでよ、なんでだよ。
「宝塚🤫🤫店、ここ美味しいって話よ」
友人の頭には常に「餃子の王将」が入ってる。
そんな脳みそ、OSから書き換えてもらえ。
この餃子の王将さんは、駐車場が他店と共用なので広くて駐めやすい。
好きなポイントが多くて心が湧き立つも、
餃子の王将に対し不平を漏らした手前、
「肝心なのは、味だから」と、斜に構える。
「天津焼飯お待たせしました!」
…美味いわ。
餡がすごい滑らかなんだ…
餡と卵が程よく絡んで、卵もフワフワ…
大盛りを頼めば良かった。
「中華飯、お待たせしました!」
イカがプリつき、青菜がシャキつく。
餡の滑らかさは言わずもがな。
「餃子でーす」
表面の油は程よいのに、皮がパリパリして餃子同士の皮離れ良い。美味しいのレベルが高い。
今日は連れてきてくれて、ほんとありがとう。
幸せな時間を過ごし、ふと窓の向こうに目をやると、なんか外が暗い。
とっさにスマホで雨雲レーダーを調べる。
豪雨到来まで15分、雷も近づいている。
雨が落ち着くのは1時間後だ。
今、出発すれば、車まで濡れずに戻れる。
「潮時だな…」
幸せの刻にも、必ず別れがくる。
会計して、イオンに寄って帰ろう。
カバンの中の財布を出そうとした、その時、
終幕の空気をぶった斬る声がした。
「桃まん2皿、追加で!」
「空気は読まずに吸え」がモットーの友人が、店員さんにVサインを突き出している。
友人の首根っこを掴んで、会計を済ませたいところだが、まぁいい。届いた桃まんを口に入れて速攻で会計すれば、まだ雨を回避できる。
私たちは、再び腰を下ろした。
実は幼い頃、結婚式披露宴に出された桃まんが衝撃的に不味く、以来、桃まんを食べたことがない。さしずめ、「音信不通の元彼と10年ぶりに会う」気分だ。
「お待たせしました。桃まんです」
窓の向こうでは、豪雨と共に雷鳴が轟く。
降ってきたものは仕方ない。
桃まんを手に取り、一口頬張る。
「旨い!」
濃厚だが、変に喉に残らない胡麻あん。
上あごに張り付かない、ふんわり美味しい皮。
雨は降ってしまったけど、食べて良かった。
さしずめ、音信不通の元彼に会ったら、いい男になってて、わだかまりも解けて、連絡先を交換できた感じかと。
そんな経験ないけど。知らんけど。
会計を済ませ、店を出る。
車まで戻るだけでずぶ濡れになりそうだ。
日本書紀に「桃を雷に放ると、雷が退散した」という話がある。桃は穢れを祓うもの。
桃まんを空に投げたら雷雨は去るだろうか…
旨い桃まんを食べれたので、雨に打たれるのもやぶさかでは無い。
私たちは雨の中、車を目指した。
追伸
「走るのと歩くのとどちらが濡れないか」と歩き始める友人を置いて走りました。
車へ着いて後ろを振り返ると、ずぶ濡れの貞子と、買い物袋の覆面レスラーがこちらへ向かってきました。
思わずドアをロックしたら怒られました。
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