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太陽系のすぐ近くの恒星系で原始惑星同士が衝突した痕跡を発見!


〇HD172555の恒星系で起こったジャイアントインパクトの想像図。マサチューセッツ工科大学報道発表資料より

アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)は、去年の10月、マサチューセッツ工科大学地球大気惑星科学科の大学院生タジャナ・シュナイダーマンさん率いる研究チームが、太陽系のすぐ近くにある恒星系で原始惑星同士が衝突した痕跡を発見したと発表しました。

惑星が形成される最終段階では、火星ほどの大きさの原始惑星同士が衝突・合体を繰り返して、最終的に惑星が形成されます。このような衝突をジャイアントインパクトといいます。

今回のお話は、このジャイアントインパクトの痕跡が、太陽系のすぐ近くにある恒星系で発見されたというお話です。

なお、このコラムは、マサチューセッツ工科大学のプレスリリースや研究チームの論文を基に翻訳、執筆しました。

では、いってみましょう!     

今回、ジャイアントインパクトの痕跡が見つかった恒星系は太陽系から95光年ほど離れたところにあります。主星のHD172555は誕生してからまだ2300万年ほどしかたっておらず、とても若い恒星系です。

このHD172555の周りには、残骸円盤(stellar debris disk)が存在していて、前々から、ジャイアントインパクトの痕跡ではないかと疑われていました。

その理由は2つあります。1つは、この残骸円盤に含まれているチリの鉱物の組成が、通常の残骸円盤に含まれているチリの鉱物の組成と、非常に異なっていること。そして、もう1つは、そのチリの粒子が、通常の残骸円盤のチリの粒子に比べて、非常に小さいこと、の2つです。

なお、残骸円盤とは、小惑星同士の衝突などによって、恒星などの周囲に形成される主に岩石や氷の破片やチリなどからなる円盤をいいます。

そこで、研究チームは、一般に公開されているアルマ望遠鏡のアーカイブデータを使って、HD172555の残骸円盤について詳しい分析を試みました。

すると、HD172555の残骸円盤では、チリと共に大量の一酸化炭素のガスが周回していることが解りました。

HD172555の残骸円盤は、HD172555から、10AUほど(1AUは太陽から地球までの平均距離。10AUは太陽から土星までの距離にほぼ相当)のところにあります。研究チームによれば、このように恒星の近くにこのように大量の一酸化炭素のガスが存在することは非常に難しいといいます。なぜなら、一酸化炭素は恒星の光に弱く、恒星の光によってすぐに分解されてしまうためです。

そこで、研究チームは、このような大量の一酸化炭素のガスの存在を説明するために、さまざまなシナリオを、恒星系の年齢、残骸円盤の形成期間、形態、組成などを基に徹底的に検証しました。その結果、1つだけありうるシナリオが残りました。この大量の一酸化炭素のガスは、ジャイアントインパクトによって剥ぎ取られた原始惑星の大気の名残であるというシナリオです。

すなわち、研究チームの見積りによれば、今から少なくとも20万年前に、地球サイズの原始惑星とより小さな原始惑星が10km/sで衝突。問題の大量の一酸化炭素のガスは、その際、剥ぎ取られた地球サイズの原始惑星の大気の名残であると考えられるというわけです。

研究チームでは、今回の研究成果は、他のジャイアントインパクトの探索など太陽系外で起こったジャイアントインパクトに関する今後の研究に貢献するものであるとしています。

それにしても、わずか20万年前に、太陽系のすぐ近くの恒星系で、このようなビッグイベントが起こっていたなんて本当に驚きですよね!これからの研究の進展がとても楽しみです。

マサチューセッツ工科大学のプレスリリース Astronomers detect signs of an atmosphere stripped from a planet during giant impact | MIT News | Massachusetts Institute of Technology



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