ヴォルフガング 闇を継ぐ者 4ガング 闇を継ぐ者 4話「光の住人」

周囲を山々に囲まれた、自然豊かな首都デレイラッド。

白いレンガ造りの石橋と、吊り橋で繋がったデレイラッド城までには城下町。
二つの橋を渡ると、広大な湖の上に白いレンガ造りの城壁。
その四方には、通路で繋がった見張り台があった。
そして中に入って行くと、石畳の中庭が広がり、その奥に地下一階、地上四階と屋上がある白いレンガを用いたネオ・ゴシック様式の城がそびえ立っていた。

その城の屋上。

細身で白い肌に、太陽をモチーフにした金の首飾り。
そして、緩やかな風になびく金色の長い髪と、太陽を模した金のラインが入った白いローブ。
大国フィーリーンの女王として神々しい姿。
そんなテフィソネルが、太陽の光を浴びるためにその場立っていた。

そこへ、ニッチトルトとメリロメル上がって来て跪(ひざまず)いた。
二人の存在に気づき、振り返るテフィソネル。

「フウ……。どうだ、討伐の方は上手くいっているか」
「はい。ハルクフトが率いたウェルファングよるゲビエスン・チェンラッセの討伐を皮切りに、現在はメトフェイル・ルフィットナの両隊による、東のアイエン討伐が進行中でございます」
「ゲビエスン・チェンラッセの時もそうでございましたが、今回のアイエン討伐の方も、今だ強い抵抗勢力が残っているため困難を極めるかと……」

テフィソネルと同じローブを身にまとった細身で長身、肩までの茶色い髪の男官ニッチトルト。
その横にいる細身で小柄、茶色い長い髪の女官メリロメルも同じ装束だった。
その二人が、交互にテフィソネルの問いに答えた。

「まあ、良い。どのくらい時間が掛かろうと。災いの元凶であるダンケルヘイト、その各地の勢力を殲滅(せんめつ)できれば、あとはこの一帯にはびこるダンケルヘイトの者たちだけだ。そうなれば、時間の問題だ」

テフィソネルたちの会話の途中、一人の兵が騒がしく甲冑(かっちゅう)の音を響かせ、血相をかえて駆け上がって来た。

「テフィソネル様、大変でございます!」
「何事か!テフィソネル様の御前だぞ、控えろ!」

ニッチトルトが声を荒立てた。

「(跪いて)も、申し訳ありません。大変急な知らせにて無礼を致しました」

その場の険悪な空気を察したかのように、テフィソネルが直々に問うた。

「構わん。急な知らせだ申してみよ」
「あっ、はい。じ、実は、あのナイウェルトが生きておりました……」
「何だと!」
「そ、そんなはずが……!ゲビエスン・チェンラッセ討伐の際、ハルクフトが倒したはずでは……」

驚愕の事実に、テフィソネルとメリロメルが顔を見合せている。

「は、はい。確かにハルクフト様が止めを刺しました。しかし、現在所持している剣によって蘇ったようです」

ニッチトルトがヴァローアのことを思い出した。

「剣……、ヴァローアか!それでナイウェルトの奴は今どこに?」
「はっ。それが……、ハルクフト様が奴にやられ、こちらに向かっております……」
「な、何だと!」

今度は、メリロメルが驚きの声を上げた。

その状況を把握したテフィソネルは、立ち上がってニッチトルトたちに命令を下した。

「ナイウェルトめ……!ダンケルヘイトの力に目覚めたというのか……。(ニッチトルト、メリロメルを指差し)東のアイエンにいるメトフェイル 、ルフィットナの両隊もすぐ呼び戻せ。良いな、奴をここへ一歩も近づけてはならん!絶対にな」

ニッチトルトとメリロメルは、畏まって命を受けた。

「はっ!」

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